334 Reply 続・ワレモノ『逃げるリュウ、追うカキョウ』 !マーク 2003/11/14 18:47
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カキョウはしばらく呆然としていた。
やがて何かを思いだしたように言った。
「・・・誰が?まさか・・・」
流水のように振り返り、突然太助を睨んだ。

「御主人!いくら御主人でも割ったことは絶対に許すことなど!!」
カキョウは激怒し、般若の面を拾い上げ再びそれを着けた。

じわじわと場に緊張が走る。

般若の目が青白く光り、太助を威嚇していた。
「ちょ、ちょっと待て!俺は割ってないって!!」
太助が悲鳴に似た叫びをあげる。

「・・・仙天縛!!」
般若の目が今度は赤く光った。

ず・・ずずず・・・

キリュウは足場が急に動き出したので、さっと身をかわし短天扇を広げた。
優天急須は大きいまま動きだし、一瞬で屋根の高さまで飛び上がったと思うと、太助めがけて急降下してきた。
しかし太助は安心していた。
割れているところから逃げ出せるのはキリュウが証明済みだから。
だが、
「来々、軒轅!」

「シャオ!?」

シャオは支天輪から軒轅を呼び出して、太助をさらって逃げた。

ところが急須は速度を変えずに方向転換してさらに追いかけた。

「無駄です。」
カキョウの言うとおり、急須は軒轅の後をぴったりと付いてきていた。むしろ差は縮まっていた。
「軒轅!もっと急いで!!」
軒轅はさらにスピードを上げた。しかしそれに併せて急須も速くなった。

「あきらめてください。」

しかしシャオはあきらめなかった。
「来々、折威!」
シャオは折威を三人とも追ってくる急須に飛び移らせた。
ところが急須は遅くなるどころかさらに速くなってしまった。
それでも軒轅は頑張って逃げる。
しかし軒轅も星神といえど疲れはある。次第に差は縮まっていった。

「シャオ。俺を降ろしてくれ。」
その状況を見かねてか、太助が言った。
「太助様は悪くないのに・・・。」
「いいから。それに捕まっても出られるだろ?キリュウみたいにさ。」
「でも・・・」
「シャオ。軒轅だって疲れてきてる。追われているのは俺なのに。・・・巻き込みたくないんだ。・・・家族だから。」
その時、太助の言葉を聞いていたのか、軒轅に活力が戻った。
再び距離が開く。

「軒轅!?」
「太助様。軒轅はきっと“だからこそ”って言いたいんです。・・そして・・・」
そこまで言ってシャオは空を仰ぎ見ながら黙ってしまった。
「シャオ?」

シャオは再び太助の目を見つめて、言った。
「・・・私も、同じ気持ちです。」
シャオは微笑んでいた。

青い空に浮かぶ月が、ささやかに輝いていた。



「このままでは・・・。」
カキョウは仮面の下で顔をしかめた。差がどんどん開いていたのである。
「逃がすわけには行きません!・・仙天縛・虚!!」
空中に突然急須の蓋が現れた。しかしシャオはじっと太助を見つめていて気が付かなかった。
「シャオ!前!!」
気づいた太助が叫んだ。
シャオは言われて前を見た。
「!軒轅!!」
軒轅はシャオに応えて避けようとした。しかし軒轅が向きを変えた方向には急須が迫っていた。

「!!」

本体と蓋に行く手を阻まれ捕まってしまったと思われた。
しかしその時、当然太助の目の前を何かが横切った。
急須はその何かにつられてしまった。

ばしっ
本体と蓋が元に戻った。
しかし捕らえたのは一個の大きな空き缶だった。


「まだまだ試練が足りないか。」
キリュウは短天扇に乗りながら呟いていた。
「追い方を見ればすぐに解ると思うのだが・・・。」
それでも助けてしまったのは、カキョウに対して怒りを感じていたからなのだろうか。

「・・キリュウさん?」
シャオが自分よりも上空にいるキリュウに声をかけた。

「シャオ殿。随分遠くまで来てしまったようだ。そろそろ・・」
「なあキリュウ。なんで急須が缶を捕まえたんだ?」
太助がキリュウの言葉が終わらぬうちに聞いた。

「・・・解っておられないのか?」
「ああ。さっぱり。」

「・・あれ、つまり優天急須はおそらく自動で追いかける物らしい。だからカキョウ殿から遠く離れても追い続けてきたのだろう。」
「・・じゃあ、なんで缶が?」
「目標が動けばそれに併せるように追う。そこに落とし穴があるのだ。
つまり私が缶を投げたことで、急須は主殿が動いたと誤認したのだろう。」

「じゃあ俺が靴か何かを投げれば良かったんだ・・・。」

「それよりも主殿。おそらくカキョウ殿は間もなくここに来るだろう。見つからないように近寄って、説き伏せられよ。
それからシャオ殿は家に帰って軒轅殿を休ませてやるといい。心配しなくとも大丈夫だ。」

「大丈夫ですか?」
シャオは心配そうに聞いた。

「ああ。大丈夫だよ、シャオ。」

シャオはようやく納得したらしく、太助を地面に降ろし、折威を支天輪に戻してから軒轅を励ましながら帰っていった。


「さて、主殿。説得とは簡単そうで難しい。一時も気を抜かれられぬな。」
キリュウが鋭い顔で言った。
「キリュウは?」
「私は万が一に備えて伏せる。」
キリュウはそう言って短天扇を戻し、姿を消した。



つづく

あとがき
ああ、やっちゃったよ・・。
キリュウの台詞が多い。それだけ真剣なのかな?
タイトルはわざとです。でも嘘は付いていないはず。だから許して!

!マーク
336 Reply ますます大変に・・・ 空理空論 MAIL URL 2003/11/15 00:45
cc6600
自動追尾の急須とは初めて見ました(そりゃそうだろう)
それにしても、やはりというかなんというか、
だいたいの精霊は、周りが見えなくなる(ほどにキレる?)
状態になることが決まってありますね。
能力というものが使える分恐ろしい存在ですが…。

太助がどのように話をするのか、楽しみです。
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