236 Reply 雪かき ふぉうりん MAIL URL 2002/12/10 23:06
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 今日は朝から雪が降っていた。その日のニュースでは『関東地方15年ぶりの大雪』(実話)と言っていた。

「うぅ〜。さむっ」

「おはようござます。太助様。」

「おはよう。シャオ。」

「今日は寒いですね。」

「ほんと、外に出るなら厚着しないと駄目だな。」

「キリュウさんは大丈夫でしょうか?」

「無理して体壊す訳にもいかないからな。今日は家に居てもらおう。」

「そうですね。」

 キリュウの心配をしていたシャオは、俺の提案ににっこり笑ってうなずいた。



 それから、朝食後。

「キリュウ。今日は、雪が降ってるから、無理して外出なくてもいいよ。」

「そうだな。私は、寒いのが苦手だし、主殿が良いというなら、私は留守番をさせてもらう。」

「こんな日に試練やっても、お互い体に悪そうだからな。」

「そうれもそうだな。・・・だが、雪の日ならではの試練も捨てがたいな。」

「おいおい。本気かよ?」

「半分本気だ。しかし、もう半分は冗談だ。」

「じゃあ、試練は学校が終わってからにしような。」

「ああ、午後に雪がやめばいいのだがな。」

「ねぇ、たー様。ルーアンにも優しい言葉を掛けてよぉ。」

「くっつくなっての! ルーアンは先生だろ! 先生が学校いかなくてどうするんだよ!」

「んもぅ。たー様のケチィ。」

「太助様。ルーアンさん。そろそろ学校へ行かないと・・・。」

「あらホント、これは急がないと朝の職員会議に遅れちゃう! たー様、シャオリン。あたし先に行くわよ!『陽天心召来!』」

 ルーアンは玄関にあったほうきに陽天心をかけ、雪の降るなかを飛んで行った。

「シャオ。俺達も行こう。」

「はい。」

「「いってきま〜す!」」

「いってらっしゃい。」

「いってらっしゃい。太助。シャオ。」

 太助とシャオは那奈とフェイに見送られながら出て行った。

 外の風がとても寒く、自然に彼らの足を速めるものとなったが、久々のシャオとふたりきりの登校に、太助は『たまには大雪もいいな』と思った。


「なぁ、フェイ。」

「なに?」

「寒くないか?」

「すこし・・・。」

「そうか、無理してないか? あんたのいつもの格好はどう考えても、冬向きじゃないからな。キリュウみたく「ダルマ」になるまで着込めとは言わないけど、あんたもなにか着た方がいいよ。」

「心配してくるんだ。ありがとう。」

 フェイは少し照れた微笑を浮かべた。

「いいってことよ。あんたはもう、今じゃ立派なあたしの家族の一員ってやつだからね。」

 那奈は、ウィンクをしながらフェイに笑顔を返した。

「那奈殿。いくらなんでも「ダルマ」はないだろう?」

「そう? あたしはぴったりだと思うけど。な? フェイ。」

 そう言われてフェイは、キリュウをまじまじと見つめた。やはりフェイの目から見ても今のキリュウの着膨れ(きぶくれ)のしかたダルマのようしか見えなかったので、フェイは可笑しくなってきた。

「そうね。くすくす。」

「あっ、フェイ殿まで・・・。」

「ほらね。フェイだって今のあんたはダルマに見えるってさ。」

「もういい。私はコタツにでも入って新たな試練でも練るとしよう。」

「コタツ?」

「ああ、確かシャオ殿の部屋にあったはずだが。」

「そういえば、和室はシャオの部屋だけだしなぁ。」

「こたつ?」

「フェイはコタツを知らないのか?」

 こくこく

「キリュウ。シャオの部屋のコタツっていつもどうなってるっけ?」

「多分今年はまだ使ってないはずだから、組み立てからだろうな。」

「そっかちょうど良いね。」

「なにがだ?」

「コタツにみかん。日本の冬ってやつを満喫するにはね。」

 那奈は得意顔で笑っていた。


※太助とシャオの登校風景とか学校でのお話とか書きたかったのですが、又今度ということで(爆)
だから今回は『雪1』なんですよぉ。機会があれば『雪2』が書きたいですねぇ。では続きをどうぞ



 がちゃ。

 七梨家のドアが開かれた。

「うー、寒かった。」

「お帰り。太助。」

「ああ、ただいま。フェイ。」

「シャオとルーアンは?」

「シャオは夕飯の買い物してから帰るってさ。ルーアンは職員会議だって言ってたよ。」

「そっか。」

「そうそう、シャオは『今日は寒いから暖かい鍋ものにしましょう♪』って言ってたぞ。」

「鍋もの? この前の?」

「ああ、あれね。あんな「やみなべ」みたいないい加減ものじゃなくて、ちゃんとした鍋ものだよ。」

「ところでどうしたんだ? その格好。」

「那奈が寒いだろうからって。」

 フェイはいつもの服装ではなく、セーターにズボンそれに厚手の靴下を履いていた。

「とっても似合ってる。可愛いよ。」

 太助はまるで自分に『小さな妹』が出来たような錯覚を憶えた。太助にとっての兄弟は姉の那奈ひとりだったので『小さな妹』みたいに思える今のフェイの格好はとても新鮮に思えた。

「ありがとう。でもこれ、太助と那奈のお古だよ。」

 フェイは少し照れて、はにかむように笑って言った。

「そっか。」

 太助は苦笑しながら、どうりで見たことあるような服かと思った。

「よくこんなもの残ってたもんだな。」

 フェイは太助の心を見透かしたかのように言った。

「え?」

 また心を読まれた!? と太助はぎょっとした。

「きっと思い出と一緒に大切に仕舞ってるんだよ。」

「だといいんだけどね。」

 単に捨てるのが面倒なだけのものぐさでなかろうかと太助は思った。

「ところで、那奈姉とキリュウは?」

「シャオの部屋だよ。」

「シャオの?」

「日本の冬の醍醐味を満喫してるよ。」

「へ?」

 太助の頭に疑問符が浮かんだ。『百聞一見にしかず』太助はシャオの部屋へと向かった。

 がらがらと音を立ててシャオの部屋のふすまが開く、

「おっ、太助おかえり。」

「おかえり主殿。」

「なるほどね。フェイの言ってたことは、こういうことか。」

 見ると那奈とキリュウは、シャオの部屋で石油ストーブで部屋を暖めながら、コタツに入って、みかんを仲良く食べていた。

「主殿。温泉もいいが『こたつにみかん』もなかなかいいものだな。」

 ヒュー!

 ストーブの上に乗ったやかんが音を立てて、お湯が沸いたことを主張した。

「おっ、お湯が沸いたね。太助、悪いけどそのお湯で、お茶を煎れてくれないかい?」

「人使いが荒いなぁ。」

「つべこべ言わずにさっさとやる!」

「へいへい。」

「悪いな。主殿。私は寒いのが苦手で、主殿にこんなことをやらせてしまって。」

「いいって、いいって。」

「なんで、あたしとキリュウでこんなに態度が違うなか?」

 太助は那奈の追求の手を逃れようと、いそいそとやかんを運び始めた。太助が出ていこうとすると、みかんを持ったフェイとすれ違った。どうやら那奈は太助だけではなくフェイもこき使っているようだ。(太助の邪推です)そして太助がシャオの部屋から、那奈とキリュウの笑い声に続いてフェイの笑い声が聞こえてきた。



「おまたせ。お茶がはいったよ。」

「悪いな太助。」

「すまない。主殿。」

「ありがとう。」

 太助はお盆ごとお茶をコタツに置き、替えの水が入ったやかんをストーブの上に置くと、自分もコタツに入り始めた。

「那奈姉、あんまりキリュウとフェイにへんなこと吹き込むなよ。」

「へんなことは心外だな。あたしはコタツに入りながらみかん食べて、そとの雪景色を眺めるのが『日本の冬の醍醐味』だって教えただけよ。」

「それがへんなことなんだよ。」

「そうかな?」

「いいじゃん、そんなこと、あたしが『日本の冬の醍醐味』だって思ったんだから。それでさ。あっはっはっはっは!」

 いつものことながら、この姉は弟のいうことをまともに聞きやしないので、太助としてはこれ以上反論する気がしなくなった。

「こうしているといると良い試練のひらめきが浮かびそうだ。」

「ホントかよ。」



「さてと、大分雪の降りもゆるくなったし、これ以上寒くなる前に一仕事しようかな?」

「主殿。試練か?」

「いや、今日はまだいいや。それに俺の言った『仕事』は別のことだから。」

「そうか。それは残念だ。」

「何する気だ? 太助。」

 太助はコタツから立ち上がり、ふすまを開けながら答えた。

「雪かき。」

「頑張れ太助。」

「手伝う気、まったくないのね。」

 太助が肩を落とし、げんなりしながら言った。

 太助は外に出ても寒くない格好へ着替え、シャベルを担いで外に出た。

「さて、がんばりますかな。」



「あっ、シャオ。おかえり。」

「ただいまです。太助様。雪かきですか?」

「ああ、そうだよ。自分の家の前くらいはやっておかないとね。」

 太助の言葉はもっともだった。このまま放っておくと、道が残った雪で凍り付いてしまう。そんな道を通ったらすべってしまうかも知れなくい。

「そんなことでしたら、私が…。」

「いいって、いいって、シャオは召使とかじゃないんだし…。」

「でも、太助様がすべって危険な目に遭われてしまったら、私は『守護月天』失格です。」

 シャオが真顔で口にした『守護月天』という単語が耳に痛かった。

「シャオ・・・。」

 太助としては『そんな理由』で、シャオに雪かきを手伝って欲しくはなかった。

「じゃ、じゃあさ、家のことが終わって手が空いてからでよかったら、手伝って欲しいな。ちゃんと夕飯の準備しとかなと、期待してるヤツにわるいだろ?」

 そうは言ったものの、太助はシャオに手伝わせたくは無かったので、シャオが家に入るのを確認すると、意地になって作業を急ピッチで進めた。それは半ばやけくそ気味の速度だった。

「おや? 太助のヤツ、シャオが帰ってきてから、急に雪かきが早くなったねぇ。」

「この分だと、今日の試練は必要なさそうだな。」

「……。」

 フェイは真面目な顔で何かを考えていたようだった。

「ただいま。」

 シャオが部屋へ入ってくると、那奈達は口々に言葉を掛けた。

「今日はお鍋にしますからね。」

「太助から聞いたよ。」

「腕によりを掛けて頑張っちゃいます。」

 シャオは腕まくりをし、意気込みを見せた。

「ああ、期待している。」

「はい!」

 シャオが元気良く返事をして部屋を出て行った。

「さてと、私は太助を手伝ってくるよ。」

「フェイ?」

「フェイ殿?」

「キリュウ。上着を一枚借りるよ。」

「ああ、部屋にある。好きなものを使うといい。」

「ありがと。」

 そういってフェイも部屋を出て行った。

「一体どういう風の吹き回しだろうか」

「さあな、フェイもフェイで何か考えがあるんだろう。」



 太助は黙々と作業を進めていた。

「太助。」

「フェイ。」

「私も手伝うよ。」

「え?」

「私もこの家の家族だからね。」

「・・・フェイ。」

 太助はフェイの言葉に少し胸が熱くなった。

「それに『守護月天』としてのシャオには手伝わせたくないでしょ?」

(また、また俺の思っていることを・・・)

「ああ。そうだな。サンキュー、フェイ。」

 それほど広くない範囲の雪かきとはいえ、さすがに一人でやるよりも、二人でやるほうがはかどった。



「ふぅ、ひとまずこれでいいだろう。」

 太助は息を切らしながら、額の汗を拭った。

「そうだね。キリュウを呼んで来る。」

「え?」

「せっかく集めた雪もこんなに大きかったら、少し邪魔だよね。だから。」

「そっか、いい考えかも知れないな。」



「で、私にこの雪を小さくしろと。」

 太助とフェイは頷いた。

「いいだろう。今日は主殿は、雪かきを頑張っておられたからな。」

 もっとも、キリュウは最初から雪かきで『万象大乱』をあてにされていたのなら、もちろん手伝うつもりは無かった。

『万象大乱!』

 路肩に積んであった雪がみるみる小さくなっていく。

「これでよし、ご苦労だったな。主殿。フェイ殿。」

 キリュウがねぎらいの言葉を掛ける。

「自分の家の前くらいやっておかないとね。」

 太助がてれながら少しばつが悪そうに答えた。

「ところで、フェイ殿はどうして主殿を手伝ったのだ?」

「ちょっとした『気まぐれ』かな?」

 フェイは少し、悪戯っぽく微笑みながら言った。それは勿論嘘である。なぜなら、フェイには太助のあせりと心の声が聞こえたのだから。真実を知っているはずのフェイが、あえて嘘をついて、太助に気を遣ってくれたことに太助は嬉しく思った。

(本当に、サンキューな、フェイ。)

 フェイは何も言わずに太助に向き直り、にっこりと笑顔を返した。



続くかな?



あとがき
久々に突貫作業で小説を書きました。嗚呼、楽しかった。でも沢山書きこぼしもあるんですよねぇ(苦笑)ですので、続きその日の晩の設定とか、都合でカットした学校での太助君たちの様子とか、書いてしまうかもしれません。

そうそう、今回プロットでは存在したのですが、設定の都合カットしてしまった場面をば、

シャオがお買い物から帰ってくるシーンです。

「あっ、シャオ。おかえり。」

「ただいまです。太助様。雪かきですか?」

「ああ、そうだよ。自分の家の前くらいはやっておかないとね。」

 太助の言葉はもっともだった。このまま放っておくと、道が残った雪で凍り付いてしまう。そんな道を通ったらすべってしまうかも知れなくい。

「そんなことでしたら、私が…。」

「いいって、いいって、シャオは召使とかじゃないんだし…。」

「・・・でも、」

「じゃあさ、家のことが終わって手が空いてからでよかったら、手伝って欲しいな。」

「はい! よろこんで!」

 そうして、シャオはいそいそと家の仕事をある程度片付けると、太助の雪かきを手伝いに外へ出た。

「太助様。お手伝いにあがりました。」

 シャオは嬉しそうに微笑む。

「ありがとう。シャオ。」

 答える太助も自然を笑顔になる。

「私、太助様のお手伝いが出来て嬉しいです。」

「俺もシャオが手伝ってくれて、嬉しいよ。」

 その場の空気が一瞬で柔らかく暖かいものに変わった

「うふふふ。ふたりが嬉しいって、とっても良いことですよね? 太助様。」

「ああ、そうだな。」

 そんな感じでふたりで仲良く良い感じで雪かきをしている姿をコタツから眺めていた彼女達は。

「…ルーアン殿はいいのか?」

「いいのよ。あたしも寒いの嫌いだしぃ」

「そうか…。」

 平和な雪の日の午後だった。

(ふたりで仲良く雪かきって、なかなか良いものでしね。離珠も今度出雲しゃんとふたり雪かきしてみたいものでしねぇ)

おしまい

 てなラブラブ(?)な感じで当初は終わる予定だったのですが、最後の離珠のナレーションが入って『伝心のドラマCD風』のなのは、最近聞いた影響での単なるお遊びなのですが(笑)
ところが、私の頭の中のシャオさんが、
「でも、太助様がすべって危険な目に遭われてしまったら、私は『守護月天』失格です。」
 なんて台詞をぬかし始めるので、当初予定していた締めくくりが使えなくなり、フェイちゃんが頑張る話になってしまいました。困りますよ。シャオリンさん(爆)
 最初の設定だと『太助×シャオ』のお話の予定だったのに、いつのまにか『太助×フェイ』のお話になってしまって・・・(自分が悪いんだろ!)
シャオ派の皆さんごめんなさい。私『フェイ派』なものでして(爆)

ではでは、言い訳もこの辺りにしまして今回はこの辺で、
何方か冬服のフェイちゃん書いてください(笑)

2002年12月10日 ふぉうりん
(12月9日の内に仕上げたかった・・・)
誤字確認してねぇよぉ(最悪)
237 Reply 雪かぁ… 空理空論 MAIL URL 2002/12/11 01:51
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なにげにタイトルと2文字違い(謎)
雪とか聞くと、とある試練を思い出すのですが(笑)それはそれとして、
そういやフェイが居るんですね。すっかり馴染んじゃって〜。
ダルマとコタツはいいキーワードだと思います。
いやはや、私もコタツ欲しいな…今は電気カーペットだけ。
相変わらず『守護月天』という言葉に敏感ではございますが、
その分フェイが立ってきてる(目立ってる?)ってのは、
近隣の話的になんか読んでて面白く思います。
一度くらい私も再逢の話を書いてみないとな…。
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