341 Reply 山本少年探偵団 ファイル1 魔術大騒動(後編) 須坂稔 2003/12/08 01:49
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     山本少年探偵団 ファイル1 魔術大騒動(後編)

 森たち2人の前にボスの魔獣が現れた頃、山本たちは解読を終えようとしていた。
「最後の部分の解読が終わったよ」
 そう言って山本が最後のメモを机の上に置いた。
「ふう、こっちの方も終わったわ。これで普通の魔獣は全部帰ったわ」
 そう言いながら少しよろける林。
「大丈夫ですか、先生」
 心配すそうに聞く泉音に、
「ええ、少し力を使いすぎた…」
 だけだから、と言おうとした林だったが、急に入り口の扉の方に目を向ける。
「外に強い魔獣の気配がするわ。どうやら今回の元凶みたいね」
 そう言って彼女は扉の方へ向かった。

 教室の外では森たちが魔獣と死闘(?)を繰り広げていた。
「それにしても堅いわね、こいつ」
「ああ、ほとんど効いていないみたいだしな」
 魔獣の攻撃を回避したり、跳ね返したりしつつ反撃をするも、一向に倒れる気配はない。
 再び魔物が攻撃をしようとするが、突然動きが止まる。そしてそのまま崩れ落ちていった。2人が後ろを振り返ると、林たち4人がいる。それだけで全てを察するも、
「全部終わったのか」
 と一応聞いてみる。
「うん」
 そして予想通りの答えが返ってきた。
「あれ、誰かいるよ」
 匠の一言に森たちが振り返ると確かに魔獣の崩れ落ちた場所に1人の少女が立っていた。
 その少女はしばらくの間きょろきょろと辺りを見回していたが、こっちのほうを向くと、
「ねえ、1つ聞いてもいい。ここって美沢高校」
 とたずねる。
「うん、そうだけど」
 そう山本が答えると少女は、
「ということは、戻ってきたんだ」
 と1人納得したように言う。そんな彼女の言動に、1人をのぞいて皆不思議そうな顔をする。
「あなた、安藤佳奈恵さん」
 6人の中で唯一不思議そうな顔をしなかった林が少女に尋ねる。
「ん、そうだけど…って林先生じゃないですか、久しぶりです」
 安藤と呼ばれた少女は林がいたことに気づくと丁寧にお辞儀する。
「先生、知っているんですか」
 そう聞く森に、
「ええ、安藤佳奈恵さんといってこの学校の生徒で魔術研究部の部員だったんだけど、5年前に突然行方不明になってしまったの」
 その林の一言に当の安藤はというと、
「ということは5年ぶりにこっちに戻ってきたんだ」
 などとのんきなことを言っていたりする。その一言に今度は全員が不思議そうな顔をする。
「ねえ、それってどういう…」
 誰かがたずねようとするも、納の大声がそれをかき消した。
「おい、あそこ何か変だぞ」
 彼の一言に全員が彼の指した方を見る。そこにはどす黒い空気が集まっていた。その空気はやがて1つの形を作っていく、さっき倒したはずの魔獣の姿に。
「どういうこと、元の世界に戻したんじゃなかったの」
「魔法が効かなかったって事」
「ちがうよ」
 驚く匠と泉音に安藤が静かに言う。
「あの魔獣は死んだときや元の世界に戻るときに自分の影を残していくの」
「よく知っていますね」
と感心する泉音に安藤は、
「まあ、5年間も閉じこめられてればわかってくるものよ」
 とさらっと答える。
「え、閉じこめられてたって…」
 6人の中で再び先ほどの疑問が浮かび上がる。それに対し安藤は、
「5年前に部室で調べものをしていたらいきなり魔獣が出てきて、そのまま飲み込まれちゃって、5年間閉じこめられてたって訳」
 と説明する。その説明にしばらくの間沈黙が流れるが、
「来るよ」
 その山本の言葉が沈黙を破る。
 彼の言葉が合図であるかのように魔獣の影が攻撃を開始するも、探偵団の3人によって完全に防がれる。
「さてと、あたしもやるとしますか、アミーゴ」
 彼女の呼び声に答えるかのようにどこからともなく1匹の蛇が現れて、魔獣に電撃を浴びせる。そして林の魔法がとどめを刺した。
「よし、よくやった。偉いぞ、アミーゴ」
 魔獣に電撃を浴びせて安藤の元に戻ってきたアミーゴの頭を彼女は優しくなでた。

 そして騒動解決から1週間ほど経過した。
 放課後、探偵団の3人はいつものように食堂に集まって昼食を食べている。
「どうしたんだ、森。何か変だぞ、お前」
 さっきから妙に様子が変な森に納が聞く。
「あー、うん、ちょっとね」
 と適当にごまかす森だったが突然立ち上がると、
「あ、こっちだよ」
 と言って大きく手を振る。
 その森の呼びかけに答えてやってきた人物に2人は見覚えがあった。その人物は3人の所まで行くと、
「今日から森ちゃんたちのクラスに転校してきた安藤佳奈恵です。よろしくね」
 と2人に挨拶すると、空いている椅子に座る。
「それでどうだった、カナちゃん、5年ぶりの学校は」
「んー、やっぱりいろいろ変わっているよね」
「そう言えば去年校舎が新しくなったんだって」
「そっかー」
 と話し出す森と安藤。やがて男2人もその会話に加わっていった。

     山本少年探偵団 ファイル1 魔術大騒動(後編) 完


<後書き>
 予定より少し遅れましたが、今回の事件はここで完結です。
女性3人に一応見せ場があったということでこの話の諭旨は達成できたと思います。
では、次の事件(いつになるかは不明)で。
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