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山本少年探偵団 ファイル０ はじまりの日（後編）
目的の教室の隣、１−２の教室に３人はいた。
「それで、きみも例の噂の正体を確調べに来たんだ」
と確認するように言う山本に、
「ええ、そうよ」
と先ほど２人の前に姿を現した人物、大塚森が答える。
「なにせこの１週間でチョコレート１０個、ポテトチップ８袋、ええとそれから…」
いつの間にかメモ帳を取り出しながら被害を言おうとする森に、
「メモってんなよ」
とつっこむ納。
「いいでしょ、別に。後で食べられたものの請求をするんだから」
「どこに請求するんだよ」
「そんなのアンタに関係ないでしょ」
言い合いを始める二人に、
「２人とも、久しぶりの再会なんだからけんかは…」
山本がけんかを止めようとするが、
「うるせえ」
「私たちのけんかは日常茶飯事だからいいのよ」
と２人が言い返す。それを聞いた山本はあきれるようにため息を１回つくと、静かな口調で２人に言う。
「２人とも、今日ここに来たのは例の噂の正体を調べるため…」
が、そこまで言って彼は黙り込む。
「どうした、山本」
と聞く納に唇に指を当てて黙るように指示する山本。そして、
「隣の教室から物音がする」
と小声２人にで告げる。
「じゃあ、行きましょう」
３人は立ち上がると隣の教室へ向かう。
３人が１−３にはいると確かに物音が聞こえてきた。物音のした方に懐中電灯の明かりを向ける３人。そこに映し出されたのは…
「イ、
イモ虫」
納が驚きの声をあげる。そこにいたのは確かにイモ虫だった。ただし、かなり大きいが。
「あーっ」
今度は森が大声を出す。
「私の『ポテトチップスさつまいも味』が全部食べられてる」
（『ポテトチップスさつまいも味』って一体どっち味なんだ）
ふとそんなことを考えてしまう納。
「私が明日食べようととっておいたのに。覚悟しなさい。」
そう言ってイモ虫に飛びかかる森。が、イモ虫はその巨体には似合わない大ジャンプをしてよける。そしてそのまま窓から飛び出していった。
「僕はイモ虫を追うから納君は森君を頼む」
そう言い終わるか終わらないかのうちに山本は窓から飛び降りる。
（ここ、３階だよな。スタントマンか、あいつは）
一瞬そう考えたが、すぐに考えるのをやめると森を止めることにする納だった。
「で、あのイモ虫と山本君はどこにいるのよ」
いらいらしつつも小声で森が言う。ちなみに２人がいるところは校庭である。
納は周囲を見回していたが、不自然な明かりを見つけると、
「あっちだな」
とだけ言った。
山本は時折、時々相づちをうったり、輝きながら何かを言っているように見える。その様子を見て、
（会話しているの）
（会話しているのか）
全く同じことを考える２人。
山本は最後に何か言ってイモ虫の頭をポンと叩くと、２人の方に向き直る。
「あ、２人とも来ていたんだ。」
「それはそうと何やっていたんだ、お前は」
「何ってこの子と話をしていたんだよ。」
端から見れば変な一言ではあるが、納は、山本だから、そう結論づけると、
「それで」
と先を促す。
「この子、迷子になってさまよっていたら学校に迷いこんだみたい」
「それで腹が減ったから森のやつが隠していた菓子を食ったってところか」
「そういうこと」
「じゃあ、これで解決だな」
「ちょっと待ってよ」
とそれまで黙っていた森が口を挟む。
「アンタたちはこれでいいかもしれないけど、私の『ポテトチップスさつまいも味』はどうなるのよ。せっかくのレアお菓子だったのに。ああ。なんて私は不幸なの」
と謎の一人芝居を始める森。その後、納が放送室から『ポテトチップスさつまいも味』を持ってくるまで（納は放送委員）その一人芝居は続いたらしい。
何はともあれ、こうして彼らの最初の事件は幕を閉じた。
そして１週間後、
「…最後に、１つお知らせが。お知らせ主は１年５組山本茂雄さんから。
『僕たちはこのたび探偵団を結成いたしました。ご依頼の方は１−５山本、もしくは１−３大塚森、そして俺、１−５納剛まで』
以上で今日のお昼の放送を終わらせていただきます。」
この放送が納によって流されることとなる。
山本少年探偵団、結成そして活動開始…
山本少年探偵団 ファイル０ はじまりの日（後編） 完
＜後書き＞
何はともあれ、完結です。
半年間お待たせしました。（え、待っていないって）
では、またいつか。 |
