286 Reply 藪の中 路崎 高久 2003/06/16 03:34
cc9999
カツン、カツン、カツン・・・・・

靴音が静かな廊下に響き渡る。ここは鶴が丘中央警察署。鶴が丘でもっとも大きな警察署だ。

カツン、カツン、カツン、ガチャ 
 「うーす、もどったぞ」
 「あ、警部補」
40代後半の警部補はどかりと椅子に腰掛けると、部下の若い刑事に尋ねた。
 「で・・・なんかあったか?変わったことは」
そういいつつ煙草に火をつけ、彼はいつもの「何もありませんでした」という答えを期待していた。しかし、今日はどうやら違ったようだ。
 「ありましたよ・・・それも相当変わったやつが」
 「なんだ?殺しか?」
 「いいえ、というか、怪我人もでていません」
 「じゃあ、なんだよ」
 「1件目はコンビニ強盗、2件目はラーメン屋で大騒動、3件目は建設現場で鉄骨が落下、4件目は選挙演説中の立候補者が贈収賄容疑で逮捕されました」
 「・・・・・はぁ?なんだそりゃ、コンビニ強盗以外は管轄外だぞ」
 「俺もそう思ったんですがね、なんかどいつもこいつもオカルトじみてまして、面白そうかな、と」
 「あのなあ・・・お前、警官なんだからオカルト趣味はやめろっていつも言ってるじゃねえか」
 「まあまあ警部補、それよりこれからこいつらの話をきくんすよ。強盗と立候補者は取調室ですが、残りの2人は市民課にいます。警部補もどうすか?どうせヒマでしょ?」
 「ったく、わかったわかった。お前の言うオカルトってやつがどんなに馬鹿らしいか教えてやる」
そういうと、2人は連れ立って部屋を出た。これから彼らがどんな話を聞かされるのか、誰も知らない。

 まもって守護月天!2次小説 「藪の中」

 刑事に問われたるコンビニ強盗(38)の話
 「刑事さんよ、今から話すことを聞いてもあんたらはうそっぱちだと思うだろうな。だがよ、俺はたしかに強盗をはたらいたが、このことに関してはうそはいわねえ。それを最初に言っておくぜ。 さてと、なにがあったかだったな。あれは昨日の夜の11時ごろだったな、俺は前々から目をつけていたコンビニ・・・そうよ、あの宮内神社の近くのコンビニだよ。そこに一仕事しようと入ったんだよ。店は当たり前だが深夜だから客はほとんどいねえ。そんときも店員ひとりと、中学生ぐらいのガキが2人、それだけだった。え?そのガキは男か女か、だって?たしか、一人は男、ちっと優男だったがいい目をしてたぜ。それともう一人は変わった髪の色の嬢ちゃんだったな。この子が俺をこんな目にあわせたんだが・・・まあ、それは後で話すよ。ともかく、俺は店に入っていって、レジの前でおもちゃの銃を出したんだ、『金を出せ!』ってね(と、いいつつ人差し指を銃のように刑事に向ける)。俺も会社をリストラされなきゃこんなことはしなかっただろうし、第一怒鳴りたてたり暴力をふるったりするのは好きじゃねえんだ。だからもらうものをもらったらとっとととんずらするつもりだった。今までもそうしてきたからな。けどよ、その日はそうじゃなかった。金を袋に入れて、おさらばしようと後ろを向いたら、例の嬢ちゃんが変なわっかを持って立ってたんだ。俺は脅しのつもりで、『どけ!』って叫んで銃を向けたんだ。そしたら・・・そしたらだぜ、嬢ちゃんがなにやら呪文みてえなことをぶつぶつつぶやきだして、終わったと思ったら、持ってたわっかが光りだしたんだ。そして、光がおさまったと思ったら目の前に熊にまたがった三国志の張飛翼徳みてえなやつが立ってたんだよ。しかもそいつはばかでかい剣をもってやがった。俺は腰が抜けるほど驚いて、金を放り出して店の外へ逃げ出したんだ。そしたら、後ろから何かが追いかけてくるんだよ。なんだ?って思って振り向いたら、こんどは鹿のような角が生えた龍と羊のあいのこみてえな化け物が俺を追ってきたんだ。本当だぜ(ひどく興奮した口調で)!!しかもこいつ、猟犬のようにしつこくて、俺は何度も尻を角で突っつかれたんだ。あちこち逃げ回ってようやくまいて、もう大丈夫だと思ってふいに空を見上げたら、北斗七星が見えたんだ。だが、なんか様子がおかしい。よーく見てたら、なんかだんだん北斗七星が俺に近づいてきたんだよ。あれ?って思ってよく見たら、七つのぬいぐるみみてえなものが降ってくるじゃねえか!その後のことはよく覚えてねえ。はっと気がついたら、警官が俺の前に立っていて、それでそのまましょっぴかれたってわけだ。どうだい、とても信じられねえだろ?俺だって夢でも見てたんじゃねえかって思うんだ。けどこの服をみてくれよ、ズダボロだぜ。これで夢じゃないってことがわかったんだ。え?そういうお前はどこも怪我してないな、だって?(自分の体をあちこち撫で回しながら)そういやそうだな、でもよ、たしかに俺はあのぬいぐるみみてえなやつらにこてんぱんにのされたんだ。傷も半端じゃなかった。でもたしか、気を失う直前に、あの小僧と嬢ちゃんが俺の前に来たんだ。そういや小僧のほうが嬢ちゃんにむかって何か話しているようだったな。『やりすぎだ・・・』とかなんとか言ってたような気がする。そしたら嬢ちゃんがさっきのわっかから、頭に頭巾みてえなものをかぶった動いてしゃべる人形を出したんだ。そいつが俺になにか薬みてえなものをつけてくれたような気がするんだが・・・すまん、よく覚えてねえや。」(話し終え、運ばれてきたカツ丼を食べ始める)

 刑事に問われたるラーメン屋の店主(52)の話
 「俺ぁ長年ラーメン一筋でやってきたがね、あんなのは初めてだ。とりあえずそいつを話そうかね。あの客が来たのは今日の昼ごろだったな。うちも鶴が丘じゃちったあ名の知れたラーメン屋だからよ、昼時ともなると超満員になるのよ。今日は土曜だからなおさらだったな。そこにあの客が来たんだよ。え?どんなやつかだって?そうだねえ・・・たしか、年は20代ぐらいの女性で、けっこー美人だったな。そうそう、髪の色が緑色で、側面だけ赤くて、三角形の飾りをつけてたな。最近の若いもんはこんなのが流行っているのかねぇ・・・(静かにため息をつく)。おっと、話がそれたな、んで、その客が席に着くなり、『ジャンボラーメンを3つ!!』なんて言ったんだよ。うちは毎週土曜日は客への感謝の意をこめて、通常の3倍の量をほこる辛味噌仕立てのジャンボラーメン、通称『シャア専用ラーメン』ってのを出して、30分以内に食べ切れたらタダ&3千円、てのをやってるんだが、いままで1杯でも食べきれたやつはかぞえるほどしかいねえんだ。それを3杯だぜ!しかも女性が!誰だって無理だと思うよな。俺もいくらなんでも無理だよとその客にいったんだが、聞いちゃくれねえんだ。しょうがねえから注文どおり作ってやったさ。実物を見ればあきらめるだろうと思ってな。ところがだ、その客、割り箸をつかむなりものすげえ勢いでラーメンを食べ始めたんだ。しかもそのスピードが尋常じゃない。もう麺が吸い込まれていってるようなんだ。あっという間に1杯目をたいらげ、2杯目もほとんどペースを落とすことなくクリアしちまった。2杯目を食い終わったところで時計を見たら、まだ10分もたってなかった。そして3杯目・・・これもぺろっといっちまった。いや〜今考えてもとても信じられねえよ。でもよ、本当に信じられねえのはここからだぜ。その客は食い終わった後もべつだん苦しそうな顔もせず額の汗を拭いてたな。俺はしばらく呆然としてたんだが、どーあっても納得いかねえ。この客にはなにか仕掛けがあるんじゃねえか、ってな。言い忘れたがうちのラーメンは1人前でもそこらの店の1,5倍はあるんだ。その3倍だから、4,5倍だぜ!?それを3杯だから単純計算で13,5倍だ!!食いきれるはずがねえ!ぜってーなんか仕掛けがある!って思ってその客に俺は言ったんだ、『あんた不正をしただろ?』ってね。いきなりぶしつけにそんなことを言った俺も俺だけど、ほんとうにうちのジャンボラーメンを3杯も食いきれるやつはいるはずがねえんだ。アメリカ人とかならまだしも、見た限り日本人・・・いや、日本人でもなさそうだったな、でもアジア系のそれも女だぜ!しかもデブならまだわかるが、けっこースラッとした人だったんだ。あんたらも一目見たら、『まさか、この人が?』って思うはずだぜ。これだけ言えば、いかににうちのラーメンの盛りが多いかわかってくれるよな?おっといけね、また話がそれちまった。それで、その客に抗議したんだよ。そしたらむこうもカチンときたみたいで、『そんなことするはずないでしょ!』って言ったんだ。その後しばらく言い争ってたんだが、しばらくしたらむこうが『もーあったまきたわ!!』って言って、なんか竹の筒みてえなもんを懐から取り出したんだよ。なにするつもりだと思ってたら、いきなりその筒を構えてなにやらぶつぶつ言い始めたんだ。よくは聞き取れなかったけど、『ようてんしん・・・』とかいってたみたいだったぜ。そしたらだ!(身をのりだして)店中がガタガタいいはじめたと思ったら、いきなりテーブルが動いたんだ!ガバッてな!それだけじゃねえ、椅子、ドンブリ、鍋、暖簾、箸、しまいにゃナルトやチャーシューまで動き始めたんだ!もうみんなびっくり仰天さ。地獄の釜を開けたような大騒ぎだったな。俺も気絶しそうなほど驚いて、ほかの客たちといっしょに店の外へ飛び出したんだ。その後しばらくして急に静かになったんで、俺はおそるおそる店の中をのぞいてみたんだ。そしたら・・・・・もうメチャクチャだったよ。台風が去った後でも、あれほどまでにはならないだろうな。え?その客はどうしたかって?それがだよ、いねえんだよ。その後店中をくまなく探したんだが、みあたらなかった。裏口が開いてたから、そこから逃げたのかも知れねえな。どうだい、とても信じられねえだろ?けど、ほんとなんだ。俺だけじゃない、他の客や店の従業員たち、それに俺のカカアもみてた。みんな俺と同じ証言をするはずだぜ。あの客は一体どういう原理であんな芸当ができたのか、それは俺もわからないがね。(しばらく無言の後)はぁ・・・・・これからどーしろってんだよ・・・店のローン残ってんのによぉ・・・・・(頭を抱える)。」

 刑事に問われたる母親(28)の話
 「あれは・・・今思い出しても不思議な出来事でした。・・・今日のお昼過ぎでした、私はあの子(といって、部屋の隅でジュースを飲みながら婦警と話をしている小さな女の子のほうを見る)を連れて駅前のデパートに行く途中だったんです。あの子と買い物をして、お昼ご飯を食べようと思ってたんです。それで、デパートの近くの駐車場に車を止めて、そこから歩いていったんですが、その途中で建設途中のビルのそばを通ったんです。ええ、あの○×ビルの建設をしている所です。その時は土曜日だからか、工事はしていませんでしたが、大きな鉄骨がクレーンにぶら下がったままになっていました。『あぶないわねぇ・・・』って思いながら、ふとビルの上のほうを見上げたら、てっぺんに女の子が座っていたんです。え?どんな子だったか、ですって?高いところにいたからはっきりとは見えませんでしたが、14,5歳ぐらいで、真っ赤な髪の毛をしていました。そう、真っ赤。緋色・・・って言うんでしょうか?そんな色をしていました。『なにかしら・・・工事の人には見えないけど・・・』って思ったんですが、あの子がせかすので、さっさと通り過ぎてしまおうと思ったんです。そのときでした。ブチブチッていう音が上から聞こえて、ぶら下がっていた鉄骨がいきなり傾いたんです。鉄骨は大きいうえに、3本も4本もまとめてぶら下がっていたので、すぐに『落ちてくる!』って直感しました。しかも悪いことに、あの子は私の1〜2メートル前、鉄骨の真下にいたんです。私は『あぶない!!』ってさけんで、あの子の上に覆いかぶさったんです。死ぬのは怖かったけど、あの子が助かるなら・・・って思ってね。その直後、上の鉄骨が落ちてきたのが音と気配でわかりましたが、その時でした。頭上で誰かの声が聞こえたんです。何を言っていたのかはよくわかりませんでしたけど・・・なんか、『ばんしょう・・・』なんとかっていっていたような気がします。その後、硬いものが私の背中に当たったんです。『あ、死んだな』って自分でも思ったんです。ですがしばらくしたら、あの子の声が聞こえてきたんです。『お母さん・・・?』って(少し涙目になって娘のほうを見ながら)。最初は何が起こったのかわかりませんでした。すぐにあの子の体に触れてみましたが、べつだん異常は見られません。その後自分の体もあちこち触ってみたのですが、怪我ひとつしていませんでした。強いて言えば、背中が少し痛むぐらいでしょうか。何がおきたのだろうと思っていたら、私の背中から何か小さなものが滑り落ちました。地面に落ちたそれを拾い上げてみたら、文鎮ぐらいの大きさの鉄骨だったんです。さっき背中に落ちてきたのはそれだったんです。『でも・・・一体なぜ?』、そう思って、そこに居合わせた人たちに何がおきたのか聞いてみたんです。そしたら、皆口々に、『鉄骨が落ちると同時に女の声がして、鉄骨がみるみるうちに小さくなっていった』って言うんです。『そんなことがあるの・・・?』そんなことを考えていた時です。不意にあの子が『あ、おねーちゃんが飛んでるよぉ』って言ったんです。それを聞いて上を見上げたら、大きな扇に乗ったさっきの赤毛の女の子が飛んでいったんです。私に気付くと、ふっと微笑んだような気がしますが・・・どうでしょうか?おそらくこう言っても刑事さんたちには信じてもらえないでしょうけど、本当なんです!あ、それにあの子は『お母さんを助けたのは、あのおねーちゃんだよ』って言うんです。私も今はそんな気がしてならないんです。もしそうだったら・・・お礼を言いたいな・・・。(穏やかに微笑む)」

 刑事に問われたる選挙立候補者(59)の話
 「(ぶつぶつと文句を言いながら)まったく、ついとらん・・・あんな小娘に・・・ぶつぶつ、あ?なんじゃと?何があったか話せ?なんでわしが・・・選挙違反を犯したから?ふん!証拠はあるのか、証拠は!証拠がないなら取調べなぞ・・・(ここで刑事がある書類を彼に見せる)!!!!!こ、これは・・・(やがて額から玉の汗が噴き出す)な、なんと・・・(数分後、観念したように)わかった・・・わかったわい!!ここまで知れては仕方ない、あらいざらいはなしてやる。だが1つ言っておくぞ、今から言うことはうそや冗談は一切無しじゃ。もっとも、信じちゃくれんだろうがな。まあいい、話してやろう。あれは今日の昼の1時ごろ、わしはいつものように次期鶴が丘市長の座を手に入れるべく街頭演説をしておった。もうすぐ投票日じゃからな。その日は土曜日ということもあってか、かなりの人出じゃった。わしは駅ビルのロータリーで特別製の選挙カーで演説をしとったんじゃ。あ?なにが特別製かじゃと?(良くぞ聞いてくれたと言わんばかりの顔で)ふっふっふ・・・それはな、わしの選挙カーには大型かつ高性能のスピーカーがついておってな、これで話すとどんな小声でも500メートル離れた相手にもはっきりと聞こえる優れものなんじゃ。は?近所迷惑?そんなもん考えとったら当選なぞできんわ!とにかくじゃ、わしはそれで気持ちよく演説しておった。土曜日のせいか、聞いてくれるやつも多かったよ。その中にじゃ、不思議な子供がいたんじゃ。そいつの存在はわしも少し気になっとった。歳は小学校の高学年ぐらいじゃったが、おかしな髪型に、やけにだぶだぶのマントのような服を着ておって、しかも裸足じゃった。おまけになんと言うか・・・そう、すべてを見透かしたかのような目でわしを見ておったんじゃ。子供のホームレスかとも思ったが、とりあえず気にせずに演説を進めとったんじゃ。そして演説も佳境にはいったとき、わしはいつもの作戦に出た。わしは一通り演説を終えたら、最後に支持者たちにマイクを向けて、今の市政に対する意見を言ってもらうんじゃ。んで、言い終わったらすかさずわしが『私が当選した暁にはそれを実現して見せます!』って言うんじゃ。これで支持率はグーンとアップよ。その時も何人かにマイクを向けて、最後に子供にも良い印象を持ってもらおうと、子供にマイクを向けようとしたんじゃ。じゃが、あいにく子供連れの支持者が見当たらなかったから、わしは一人で聞いてるさっきの小娘にマイクを向けたんじゃ。『なんでもいいからおじさんに話してごらん』てな。そしたらじゃ!その小娘、だしぬけに『・・・金は2千万もあれば、足りるか・・・』と言いおった!わしはてっきり悪いいたずらだと思って、『何を言うんだ・・・』と言おうとした。そしたら今度はその小娘、『・・・○×社は、500票引き受けてくれるから、後はこいつらを丸め込めば・・・』とか、『・・・市議会にもあとで賄賂を贈っておかねば・・・』とか言い出しおった!しかもそれは、わしがその時考えていたことと全く同じじゃったんじゃ!わしは気味が悪くなったが、これ以上イメージダウンさせられては困ると思って、小娘からマイクをひったくったが、時すでに遅し、選挙カーの高性能マイクが災いして、小娘の声は500メートル先までばっちり聞こえとった。後は、その声を聞きつけた巡回中の警官がやって来て、しょっぴかれたと言う次第じゃ。くそう!あの小娘さえおらなんだら・・・わしの完璧な計画は・・・くそ、くそお!!(バンバンと机を叩く)」


カツン、カツン、カツン・・・・・

 「やれやれ、どいつもこいつもにわかには信じられんなぁ・・・」
 「でも警部補、他の目撃者も同じような証言をしてますし、第一、この短時間で4件もこんな事件が起こるなんて普通じゃありえないっすよ。やっぱこれは不思議事件っすよー」
浪O倶楽部かお前は(笑)
 「で、やつらはどうすんだ?」
 「あ、はい。強盗は罪を認めてますし、反省もしてるようです。ラーメン屋は、一応労災がおりるかどうか調べてます。あの親子は、怪我らしい怪我もないので帰りました。後日ビルの建設会社に事情を聞くつもりです。あのジジイは・・・なんか余罪がごろごろ出てきてるみたいです。それと、彼らの話に出てきた女の子たちですが・・・どうします?指名手配でもしますか?」
 「おいおい・・・ラーメン屋はともかく、他の連中にはどんな罪状をかけるってんだ?第一、こんな話を、上層部のお偉方が信じると思うか?」
 「それはそうですが・・・でも、それでは黙認と言うことに・・・」
 「俺の管轄外だ。それにこんな事件、そうそう多発はしねえさ」
 「刑事のカンですか?」
 「まあな、それにこの事件は藪の中だ。へたにつつくともっと面倒なことになりそうだからな。じゃあ、俺は一足先に課に戻るぜ」
 
カツン、カツン、カツン・・・・・
 
警部補の靴音が遠ざかってゆく。あとに一人残された若い刑事はぼそっとつぶやいた。
 「藪の中、か・・・たしかに・・・」

 (終わり)


 

 (おまけ・・・)
 「そういやあ、お前、あのじじいの証拠の書類、ありゃどっから押さえたんだ?」
 「あ、それですか、それはあいつ(と言って、奥にいる別の課の同僚の刑事を指差す)がじじいの選挙事務所から持ってきたんですよ。なんでもタレコミがあったそうで」
 「ほう。おい、お前(と言って、書類を持ってきた刑事に尋ねる)、あの書類、よく見つけたなぁ。内容から言って、隠していてもおかしくなさそうなブツだが・・・タレコミがあったそうだな」
 「あ、それですか。実はですね・・・あの書類、子供が見つけたんですよ」
 「「えっ?」」
 「いやー、不思議なことがあるもんで。自分がほかの連中と一緒に奴の事務所を家宅捜索してたら、いつの間にか小学生ぐらいの女の子が戸口に立ってたんです。自分は迷子か何かだと思って、『何か用かい?』って話しかけたんです。そしたらその子、小さい声で、『天井の羽目板の裏・・・』とか、『額縁の中・・・』とか言うんです。なにを言ってるんだと思ってたら、ふいにいなくなってしまったので、捜索を再開したんですが、みょうにあの子の言ったことが気になるので、そこを探してみたら・・・あったんですよ!え?その子の特徴?そうですねぇ・・・なんとも変わった髪形に、中国風のマントのような服を着ていまして、あ!そうそう、なぜか裸足でしたよ。今思うと、すごく不思議な目をしてましたね・・・(懐かしむように、煙草に火をつける)」
これを聞いて、警部補と若い刑事がお互いの顔を見合わせたのは言うまでも無い。

 (おしまい)
 




(あとがき)
 ども、お久しぶりです、路崎です。今回の話は2〜3日前にふっとアイデアが浮かんで、そのまま速攻で文章化したものです。相も変わらずの稚拙な文章ですが、読んでいただけたらこの上なく幸いです。
 こうして空理空論さんのサイトにお話を投稿するのは2回目ですが、上達しねえなあ・・・俺。ちなみに、まだまだパソコン1年生ですので、自分はこのサイト以外ではお話の投稿はしていません。あちこちに書けるほど体力も能力もないので・・・。
 この作品のタイトルですが、お分かりの通り、芥川龍之介の「藪の中」が元ネタです。「刑事に問われたる・・・」ってのもそうです。でも、内容はぜんぜん違いますけどね(実際の警察署に市民課があるのかどうかについてはふれないでください(笑)。間違ってたらごめんなさい)
 この作品のコンセプト(のようなもの)として、「太助たち以外の普通の鶴が丘市民たちがシャオたち精霊と関わったら?」みたいなことを書きたいなーと考えたら、こうなりました。なんつうか、自分の書く月天ワールドはエキストラに主眼を置く癖があるみたいですね。偏ったジャンルの漫画ばかり読んできたからでしょうか?そのおかげで前作以上にシャオたちのセリフが無い!!これはイカン・・・。ファンの人、本当にごめんなさい(猛省)。それと、シャオの話には、すこしマイナーな?星神を2体ほどいれました。原作を知っている人はわかるよね?
 今回も、「無意味なところに凝る」悪い癖が出てしまい、本当に申し訳ない。もっと修練を積みたいと思います。最後に、何年か前、よりにもよって自分(路崎)の誕生日に、あまりにも若くして旅立って逝った池田小学校の8人の児童の冥福を心から祈りつつ、あとがきを終えたいと思います。では、また。

287 Reply Re:藪の中 Foolis MAIL 2003/06/19 06:53
cc9999
え…と楽しめました。浪漫クラブのくだりとか。
確かに不思議事件と考えた方がまだまともか。(50歩100歩だという気もするけど)

>上達しねえなあ・・・俺
私もです(泣)


>無意味なところに凝る
あ、私もです(笑)
これ楽しいんですよね、案外…。

では
292 Reply 楽しみました 空理空論 2003/07/06 23:58
7b68ee
一つ目。シャオと太助ですね。

ちょいと気になったのが、中学生が深夜にいていいの?ってことです。
警官にばったり会えば間違いなく呼び止められて…
ともすればその警官が強盗と同じ目にあったりして(笑)
ま、細かい話なんですが。

カツ丼…じゃなかった、コンビニ強盗の話。
張飛…(適切表現だ<笑)
そうですよねえ、張飛ですよねえ(なんか妙に納得)
特に場面が容易に想像できる辺り…ああ、災難だったねえ、ほんとに、
と思わずうなずいてしまいます。
っていうか北斗七星まで登場してたのは、たしかにやりすぎってものです(笑)


二つ目。ルーアンさんですね。
っていうかもう、食べ物がらみはこの人しか居ないでしょう(なんとなく失礼)
>最近の若いもんはこんなのが流行っているのかねぇ・・・(静かにため息をつく)。
いやもう、ここ面白すぎです(笑)
そりゃまあたしかに変わってる髪型なんですけど、
こういう使われ方、私としては非常にツボですね。

>『シャア専用ラーメン』
すいません、もう駄目です。やられまくりです(笑)
いやほんとにもう…ルーアンとラーメンとシャアと結びがくるなんて夢にも思いませんでした。
最高です、この組み合わせ。

とりあえず店主さん…この事件はあなたが悪いでしょう。
っていうか、クリアできないと自分で確信とかしてるものに賞金出しちゃだめですってば。


三つ目。キリュウさんですね。
鉄骨なんですが、重さも小さくした、のかな?
文鎮程度とはいえ、さすがに鉄の塊がビルから落ちてきたら大怪我でしょう。
(もっとも、高さによりますけど)
細かいことはさておき、無事でよかった、の一言につきます。
っていうか、事件タイトルからして、試練騒動というのが最初に浮かんだのですが、
実はそうではなくて人助けであった、という事が。なんともよいなあ、と思いました。


四つ目。フェイでございましたか。
っていうかもう…適材適所(違)
事件と人物と内容が非常にマッチしてますね。
(もっとも、私自身のフェイの能力解釈は、人の心を読むじゃなくて、
太助の心とシンクロした心を持つ(?)、という解釈ですが。
別に人の心を読む、解釈でも特に気にしてないので)
特製マイクがあだとなったのもまた笑える要素。うまいです。
おまけは…多分マイク向けられて色々言ってるうちに、おまけで聞こえてきたんでしょうね。
しかしほんとに…こういう展開は犯人側にとっちゃあ非常にやるせないでしょうね。
警察側は大助かりでしょうけど(笑)


総じて…。
藪の中、ではたしかにありますね(刑事にとっちゃあ踏み入れちゃならん領域だわ)
とはいえ、かってに巻き込まれる可能性も大なんですが…(爆)
この話の特徴として、被害(?)に遭った人たちの話から更に想像する、と。
(元ネタの藪の中って話もそんななのでしょうか?)
そういう要素が、精霊と鶴ヶ丘の人達との交流ということにおいて、
非常に効果的であったな、とも思います。

2回目、とおっしゃいますが、非常に上手いと思います。
っていうか、面白いです本当に。すっごく楽しく読ませていただきました。
鶴ヶ丘の市民との交流ってのは、たしかに通常あまりかかれない部分でもありますから。
逆にそこが珍しくて私は好きです。

あと、あとがきに“池田小学校の8人の児童”とありましたが…
出された関連理由が気になりましたが、これについて深くは申しません。
同じく、心より冥福を祈らせていただきますということで…。
295 Reply 「藪の中」のあとがきについて 路崎 高久 2003/07/07 03:57
003300
 以前投稿した「藪の中」という作品のあとがきに、今考えると不適切と思われる文を掲載してしまいました(池田小学校の文)。
 空理空論さんをはじめ、みなさまに多大なご迷惑をおかけしましたことを、この場を借りてお詫びします。ごめんなさい。
 ですが、自分はネタや悪ふざけでなく、本当に彼らの冥福を祈っていることと、あの悲劇を忘れたり、繰り返したりすることのないように、
 との想いからあの文を掲載したのだということを言い訳がましいですがお伝えしておきます。
 繰り返しになりますが、大変失礼いたしました。それと、Foolisさん、空理空論さん、感想をいただき本当にありがとうございました。これからも精進いたします。
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