296 | Reply | 「少年時代」 | 路崎 高久 | 2003/07/07 20:11 | ||
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注)この作品は、「旅と列車とシャオリンと」の続きとして書いたものです。 ですので、先に「旅と列車とシャオリンと」をご覧になっておいたほうが楽しめるかと思います。 ・・・チュン、チュン・・・ 「ん・・・」 鳥のさえずりと共に、日の光がさしこんでくる。もう朝だ。 「んん〜よく寝たぁ・・・ハ・・ハクション!」 8月とは思えないほどの朝の冷え込みに、少年は思わずくしゃみ。 「寒・・・そっか、ここは鶴が丘じゃなかったんだっけ」 少年・・・七梨太助はもぞもぞと布団から這い出ながら、昨日のことを思い起こした。 まもって守護月天!2次小説 「少年時代」 「着いたぜ、ここだ」 車から降りながら、義浩が言った。ここは鶴が丘から遠く離れた東北地方の小さな地方都市、そのなかのとある家の前に、太助とシャオは立っていた。 「でかい家だなあ・・・」 太助が感心したようにつぶやく。太助の家も決して狭くはないのだが、目の前に建つ家にはかなわない。お屋敷・・・とまではいかないが、堂々としたつくりの家である。 「さ、あがったあがった。俺たちは勝手口から入るから、太助君たちは玄関から入ってくれ」 そう言うと義浩とひろしはさっさと勝手口のほうへ行ってしまった。残された二人は少し離れた玄関のほうへまわり、チャイムを鳴らした。 「(ピンポーン)・・・はーい!・・・(どたどたどた)はいはーい!!」 がらがらと扉が開き、三人の子供たちがいっせいに顔を出した。 「こ、こんにちは・・・」と太助。 「「「こんにちはー!!!!」」」 子供たちが声をそろえてあいさつをする。 「今日鶴が丘からお客さんが来るって母さんが言ってたけど、お兄さんたちのこと?」 髪の短いフェイぐらいの背丈の女の子が言う。 「そ、そうだけど・・・」 と太助。 「おっしゃー!またにぎやかになるぜー!」 と、たかしのような口調でしゃべるのは、同じくフェイぐらいの年恰好の男の子である。 「わー、おねーちゃん髪が銀色だー、ね、ね、外人さん?外人さん?」 こんどは子供らの中で一番背の低い女の子がシャオに話しかける。 「沙希、外人っていうな、失礼だぞ」 いつの間に来たのか、おそらく四人の中で一番の年長であろう、小学校高学年ぐらいの男の子が言った。 ご大層な?お出迎えに太助たちが困惑していると、家の奥からエプロンをした若い女性があらわれた。年は那奈と同じくらいだろうか。短い髪に、きりっとした目が印象的である。 「ほらほら、四人とも、何してるの。お兄さんたち入れないでしょ。ほれ、いったいった。ご飯の準備てつだいなさい」 「「「「は〜い」」」」 子供たちは「じゃあ、また後でね」というと、またどたどたと走っていった。女性はそれを見届けると、太助たちのほうに向き直って言った。 「七梨・・・太助君とシャオリンさん・・・だったね。那奈から話はきいてるわ。とりあえずようこそ。さ、あがってあがって」 「あ、はい。おじゃまします」 「お世話になります」 「礼儀正しい子たちだね。あ、私は絵美子、みんなは絵美姉って呼ぶわ。よろしくね」 あいさつをし、靴を脱ごうとした太助は、靴箱にサイズの違う靴がたくさん入っているのに気がついた。 「これ・・・あの子達の靴ですか?」 「そうよ。・・・まったく、あいつらこんなに靴を汚して・・・ほんとにもう」 絵美子が呆れたように言う。 「じゃあ、このお家は大家族なんですね」 とシャオ。しかし、絵美子は首を横にふった。 「あいつらは夏休みで遊びに来てる親戚の子たちよ。この家の子供は義浩と私だけ。ま、後で紹介するから、早いとこあがりなよ」 そういうと、絵美子は奥に向かって歩き出したので、太助とシャオはあわてて後を追った。 家の中は、外から見たとき以上に広かった。長い廊下、大きな木の柱、部屋の大半は畳敷きで、裏庭には池まであり、大きな鯉が悠々と泳いでいた。 絵美子に二人が案内された先は、食堂に隣接した居間だった。食堂のほうに目を向けると、テーブルには皿が並べられ、夕飯の支度の真っ最中であった。隣の台所から、さっき出会った子供たちや、その母親らしき女性たちが忙しそうに動き回っている。一方の居間では、ひろしのほか、数名のオヤジたちがビールを飲みながら談笑していた。 「もおー、飲んでばっかいないで、少しは手伝いなさいよ!」 と絵美子。 「まーそういいなさんな。それより、そこの二人か、鶴ヶ丘から来たってのは」 そう言うのは五十過ぎぐらいの中年の男性である。 「ほおー、小僧、いい面(つら)しとるのぉ」 と、今度は初老の男性。 「なんと、ベッピンさんじゃのう。ばーさんの若い頃にそっくりじゃわい」 シャオを見てそう言い豪快に笑うのは七十をこえていると思われる老人である。 「(ったく、酔っぱらいオヤジどもが・・・)那奈から話は聞いているわね?那奈の弟さんの七梨太助君、それに妹のシャオリンさん」 絵美子が言うと、オヤジたちが拍手した。すっかり出来あがっているようである。そのあと、今まで黙っていたひろしが口を開いた。 「絵美子、太助君たちの部屋を案内してやれ。お互いの自己紹介は飯の時でいいだろ。・・・じゃあ太助君にシャオリンさん、部屋に荷物を置いてくるといい。そろそろ晩飯だからな」 居間を出た太助たちは絵美子について二階へと上がった。二階は寝室が大半を占めるようで、ドアに『絵美子の部屋』とか、『YOSIHIRO』とか書かれたプレートが下がっている。 「シャオリンさんは私の部屋、太助君は義浩の部屋に寝て。布団は用意してるから。個室を用意してあげたいとこだけど、なんせ子供たちだけで私も入れて七人もいるからね、悪いけど我慢してくれるかな?」 「俺たちは大丈夫ですけど・・・絵美子さん、いいんですか?」 「へ?なにが?」 「こんな忙しい時に俺たちを泊めたりなんかして・・・ご迷惑じゃないかな、って・・・」 太助はすまなそうな顔で言ったが、すぐに絵美子が笑ってこたえた。 「いいって、いいって。私ら賑やかなのが好きだし、やっぱ楽しいじゃない、大勢で一緒に寝たりご飯食べたりするのってさ。この家に来るやつらはみんな家族みたいなもんだしね。あ、もちろん君たちも、ね」 「家族・・・ですか?」 太助が聞きかえす。 「そ。だから迷惑だなんてぜんぜん思ってないから安心して」 『家族・・・か・・・』 太助は心の中で家族という言葉を繰り返した。 『家族・・・もちろん俺にも家族はいる。けど・・・みんな俺をおいて旅に出てしまって・・・シャオたちがくるまでどんなものだかよくわからなかった・・・でも、ここの人たちは、初めて会った俺たちを家族といってくれる・・・・・ん?まてよ、だから那奈姉は俺をここにこさせようと・・・?いや・・・まさか、ね』 「・・・助君?太助君?」 はっと気がつくと、絵美子とシャオが不思議そうな目で太助を見ていた。 「あ・・・ごめんなさい、絵美子さん。ちょっと考え事をしてて・・・」 あわてて太助はこたえる。 「ま、いいけど。それと太助君、私はさん付けで呼ばれるの苦手なのよ。だから絵美姉って呼んでちょうだい。敬語もいらないからタメ口でいいよ。家族だからね。その代わり私もタメ口でしゃべるから。いいわね、太助?」 太助はちょっととまどったが、すぐに微笑んでうなずくと、 「わかった・・・じゃあ、よろしく、絵美姉」 とこたえた。 「もちろん、シャオリンもね」 と絵美子。 「はい・・・よろしくお願いします、絵美・・・お姉さん。あ、それと、私のことはシャオって呼んで下さい」 とシャオが言った。 「うん、わかった。じゃあ太助にシャオ、部屋に荷物を入れましょうか。シャオは私の部屋、太助はそこの部屋ね」 そう言うと、シャオと絵美子は部屋に入ってしまったので、太助も『YOSIHIRO』と書かれた部屋に入った。 「おっ、来たか」 「ちわーっす」 部屋の中には二人の男がいた。一人は義浩、もう一人は太助と同年代の快活そうな少年であった。 「こいつは初対面だったな。ひろし叔父貴の息子で、隆(りゅう)っていうんだ」 と、義浩が言う。 「あんたが那奈姉の弟さんか、俺ぁ隆ってんだ。よろしくな!あ、ちなみに十五歳の中学2年生!青春真っ盛りっすわ!!」 と手を差し出してきた。 「あ・・・よろしく、俺は七梨太助。中学2年・・・でも、十四歳だから、太助って呼んでくれよ」 「お、おめえも中2かい。じゃ、俺のことも隆って呼んでくれよな。なーに、たかが1歳違いだ、遠慮はいらねえ。な!」 たかし並に威勢のいい声におされつつ、太助は隆と握手を交わした。 やっぱたかし並、いや、たかしよりも豪放だな・・・と思いつつも太助はただうなづくしかなかった。 「さてと・・・いい加減飯にするか、あんま客を待たせるのも何だしな」 そう言うと、義浩と隆は部屋を出たので、太助も連れ立って一階に向かった。 「「「「「かんぱーい!!!」」」」」 あちこちでグラスが交わされる。食堂の隣の居間で、楽しい夕食が始まった。人数が多いので、大人たちは食堂のテーブルで酒を飲みながら食事をしているが、子供たちは子供たちで、居間にテーブルを出して思い思いに楽しく飲み食いしている。太助やシャオは、日頃大人数の食事(と言うかパーティ)に慣れてはいたが、自分たちよりも年下の子供たちに囲まれながらの食事は初めてである。ふと太助がシャオの方をみると、シャオは子供たちともすっかり打ち解け、みんなで笑っていた。 「(ぱんぱんと手をたたきつつ)はいはい、みんな注目ー!えーと、もうみんな知ってる通り、今年はお客様がいます。鶴が丘の七梨那奈さんの弟と妹で、太助君とシャオリンさん。今回この町に来たってことで、この家に泊まることになったの。じゃ、太助にシャオ、ちょっと立って」 絵美子に言われたので、太助とシャオは簡単に自己紹介をすることにした。とたんに拍手がまきおこる。 「えーと、鶴が丘から来ました、七梨太助です。十四歳、中学2年生です。皆さん、どうぞよろしく・・・こんなとこかな?じゃあ、次はシャオ頼むよ」 「あ、はい。鶴が丘から来た守護・・・七梨シャオリンです。太助さ・・・お兄ちゃんと同じ中学校2年です。皆さん、どうぞよろしくお願いします(ペコリ)」 太助とシャオの自己紹介が終わると、またも大きな拍手がおこった。 「じゃあ、今度はこっちのやつらか。知ってるやつもいると思うけど、一応ね。じゃ、義浩から」 そう言うと義浩が立ち上がった。 「えー飯村義浩、十七歳の高校2年です。ガキどもはヨシ兄ぃって呼びます。・・・こんなとこかな。次、隆やれ」 「ほいほい、飯村隆です!十五歳で中学2年・・・ってさっき言ったな。ヨシ兄ぃの従兄弟で、この家のすぐ近くに住んでるんだけど、今日はここに泊まっていきます。よろしく!じゃ、次は拓やれや」 隆がそう言うと、さっきの小学校高学年とおぼしき男の子が立ち上がった。歳のわりに落ち着いた雰囲気をかもし出している。 「・・・城野塚拓也です。小学校6年、そこの城野塚沙希の兄で、絵美姉やヨシ兄ぃの親戚にあたります。どうぞよろしく(ペコリ)。・・・次は沙希、お前やれ」 拓也がひっこむと、食事のあいだ、ずっとシャオと話をしていた女の子が立ち上がった。 「えーと、城野塚沙希、小学2年生でーす!シャオお姉ちゃん、太助お兄ちゃん、よろしくね!んじゃ次は奈緒姉と充兄ぃおねがいね」 沙希がそう言うと、玄関で沙希と一緒に太助たちを出迎えた二人の子供が立ち上がった。 「おいーす(長介風に)!本郷充です!奈緒姉の双子の弟で、小学4年のスポーツ大好き少年です!趣味はサッカー。好きなものはカレー、嫌いなものは無しっ!好きな言葉はズバリ「魂」!!あ、そうそう、カラオケの得意曲は(ゴンッ!)・・・(パタリ)」 充の、どっかのだれかさんのような自己紹介に驚いた太助だったが、その強烈な(?)自己紹介は彼の姉である奈緒の痛恨の一撃によって、唐突に終わりを告げた。 「あーもう!うるさいなぁ・・・そんな早口じゃ聞き取れないでしょ。・・・あ、失礼しました。充の双子の姉で、本郷奈緒です。充と同じ小学4年生です。充はサッカー部の所属ですが、私は空手を習ってます。シャオお姉さん、太助お兄さん、よろしくね」 背後からの一撃でピクリとも動かない充をしりめに、事も無げに奈緒は太助たちに笑いかけた。 奈緒の自己紹介が終わると、義浩と絵美子が隣の食堂で(また)酒を飲んでいた父親たちや母親たちを紹介し、これも一通り終わると、食事もおひらきということになった。簡単な片付けの後、絵美子は子供たちに先に風呂にはいるようにうながした。 「(沙希)シャオおねーちゃーん!一緒にはいろ!ね!」 「(奈緒)あ、沙希ちゃんずるい。私もはいる!」 「(充)お、シャオねーちゃん風呂にはいるの?じゃ、俺も一緒に(ドゴッ!)ひでぶっ!!」 シャオは子供たちに囲まれてしどろもどろであった。シャオ自身は、いつもの習慣か、後片付けを最後まで手伝おうとしていたのだが、母親たちは今日は疲れているだろうから、とシャオに早く休むように言った。 「(シャオ)そうですか・・・。じゃあ、お言葉に甘えて。沙希さん、奈緒さん、一緒にはいりましょうか」 「(沙希+奈緒)はーい!」 女の子たちが連れ立って風呂場に向かったので、太助たちはとりあえず義浩の部屋で風呂の順番を待つことにした。男たちは奈緒の愚地○歩も舌を巻くほどの見事な正拳突きをくらって気絶している充を引きずりながら部屋へと向かった。 「ふぅー、なんか疲れちゃったな」 夕飯の時に残ったジュースやコーラを飲みながら、太助は改めて今日はいろいろあったと感じた。 「そりゃそうだ。なんせ鶴が丘からここまで、普通列車だけで来たんだもんなぁ。疲れないほうがおかしいよ」 気絶し、そのまま眠りについた(永眠したという意味でありません)充を布団に寝かせながら、義浩が言った。ちなみに拓也は夕飯の前に入浴を済ませていたので、早々と別室で眠りについている。 「そうそう。しっかし、太助も那奈姉に似て旅人だねえ。聞けば、父さんも母さんもあちこち飛び回ってるそうじゃねえか、やっぱ血は争えねえな」 「隆もそう思う?やっぱ、俺もいつかああやってあちこち飛び回るようになるのかなぁ・・・」 いままで自分をほったらかしにしてきた家族に対し、太助の心には『俺はああはならないぞ!』と反発する気持ちがないわけではない。だが、家族がそうやって世界中を飛び回っているおかげで、太助はシャオたちと出会うことが出来た。それには素直に(?)感謝している。それに、いくら反発しても太助はやはり七梨家の人間だ。いつか、なにかの目的のために、世界に向かって飛び出すときがあるかもしれない。そう考えると、隆の言っていることも間違ってはいないのかもしれない。 「でも・・・・・俺は・・・俺が世界を飛び回るようになっても・・・・・」 「・・・シャオちゃんと一緒にいたい、か?」 いきなり考えていることを義浩に言われ、太助は驚くしかなかった。義浩は太助のそんな顔をみてにやりと笑った。 「那奈姉からは太助の妹だって聞いてたがな、太助にも那奈姉にもあんまり似てないから、もしやと思ってカマかけてみたんだが・・・どうやら図星みてえだな」 そういって義浩はからかいがちに笑った。 「それに太助、お前飯の最中ずっとシャオちゃんのほう見てたじゃねえか、シスコンを通り越してあぶない関係だぞ、それ」 隆も薄々気付いていたらしい。にやにや笑いながら太助をからかう。当の太助は顔を真っ赤にしてしばらくうつむいていたが、やがて観念したのか覚悟が決まったのか、「あんたらなら、言ってもいいかもな・・・」と言って、話し始めた。シャオが妹ではないこと(精霊であるということは言っていない)、シャオのことが気になって仕方がないこと、この先もずっと一緒にいたいと考えてること、そして・・・シャオに告白した時のこと。いつの間にか、太助はシャオに対する気持ちを洗いざらいぶちまけていた。まだ知り合って半日もたっていない人たちなのに、なぜか彼らには話してもいいような気がしたからだ。義浩と隆はそんな太助の話を笑いもせず、冷やかしもせず、まじめな顔で聞いてくれた。 「・・・でも、俺はシャオが俺をどう思ってくれてるのかわからないし、それに・・・シャオは・・・」 『精霊だから』という言葉を太助はぐっと飲み込んだ。それを言っても信じてはもらえないだろうし、何より太助自身、もはやシャオを精霊として扱いたくはなかった。精霊として扱ってしまったら、シャオや南極寿星、そして自分自身に嘘をついているような気がするからだ。そんなことを考えていると、ふいに義浩が口を開いた。 「・・・なるほどな。詳しくはきかねえが、とにかくわけありなんだな、シャオちゃんは」 「・・・うん」 太助はうなずくしかなかった。 「ま、大丈夫なんじゃないの?それは」 いきなり背後で女性の声がきこえたので、3人とも振り向くと、ドアの前に絵美子が立っていた。 「「「え、絵美姉!!」」」 驚いてほぼ同時に声をあげた3人に、絵美子は指を口にあてるポーズをとった。 「(小声で)静かに!充やシャオたちが起きちゃうでしょ!」 「あ、ごめん・・・って、シャオがいるの?」 驚く太助に、絵美子は「いるわよ、私の部屋に」と素っ気なく答えた。なんでも、シャオは沙希や奈緒と一緒に風呂にはいったが、2人の相手をしているうちにのぼせてしまい、なんとか湯からあがったはいいがフラフラの状態だったので、絵美子が冷たい物を飲ませて部屋へ運んだのだという。今は疲れが出たのか、ぐっすりと眠っている。そうして絵美子がシャオに布団をかけてあげていたら、義浩の部屋から太助の声がきこえてきた、というわけだ。 「なんか部屋に運ぶ間、うわごとのように『あうう〜太助お兄ちゃん、ごめんなさい〜』って言ってたわよ?うわごとでも名前が出てくるなんて、ずいぶんと想われてるわね〜」 絵美子の言葉に、太助は赤面した。つーか、うわごとでも「太助様」ではなく、「太助お兄ちゃん」とよぶシャオ、その言い方が気に入ったのだろうか(笑)。 「まあ、こうして一緒に旅行できるぐらいなんだから、そんなにシャオのことがどうこうとか心配することないわよ。それに太助もシャオもまだ十四歳でしょ?焦ることないって!ゆっくりやんなさい。そんな早くから女の子のこと気にしてちゃ、ハゲるわよ?」 絵美子の言葉に、太助は何と答えていいかわからなかった。しかし、同時になぜか心が軽くなった気がした。 「そうだね・・・ゆっくりでも・・・大丈夫だよな、きっと」 太助が穏やかにそういうと、隆がジュースの入ったコップを太助に渡した。 「太助の恋の成就を願って・・・乾杯!!」 隆はそう言うと、一気にジュースを飲み干した。義浩と絵美子も後に続く。 「ま、私たち今は家族なんだから、なにができるか分からないけど相談ぐらいにはのるから、心配しなさんな。ね?」 「そうそう!絵美姉の恋愛相談はすげーぞ!なんてったって絵美姉自身、男に1回ふられて3回ふった経験が(バキッ!)あべしっ!!」 そんな絵美子と隆のやりとりを見て、太助も苦笑しながらコップを空けるのだった。 (元の場面) ・・・チュン、チュン・・・ 太助は大きく伸びをすると、時計を見た。朝の6時23分である。あの後、風呂にはいり、義浩の部屋に戻ったら、疲れからかすぐに寝てしまったようだ。 「あれ?ヨシ兄ぃ、隆、充くん・・・みんなどこいったんだ?」 改めて部屋を見回すと、太助以外誰もいないことに気がついた。どうしたんだろうと大急ぎで服を着替えて下へ行こうとしたら、ドアが開いてシャオと沙希が顔をだした。 「おはようございます、太助お兄ちゃん」 「おはよー太助お兄ちゃん。今起きたんでしょ、ねぼすけだねー。ま、シャオお姉ちゃんも昨日はのぼせてすぐに寝ちゃったけどねえ・・・。昨日はもっと手品を見せてほしかったのにー」 「あ・・・おはよ、ところでみんなは・・・」 二人にあいさつしつつ、太助はみんながどこに行ったのかを聞いた。 「みなさんはもうでかけましたよ。なんでも、『らじおたいそう』というものをやるそうです。でも・・・『らじおたいそう』って・・・どんな体操かしら?」 「さ、お兄ちゃんももう行こ。早くしないと始まっちゃうよ!」 沙希にひっぱられるようにして、太助とシャオは家を出た。 『あーたーらしーいあーさがきた きーぼーうのーあーさーがー(←ラジオ体操に参加したことのある人はわかるよね?)・・・」 なんだかなつかしい歌が聞こえてくる。沙希に案内され、家から5分ほど歩いた線路沿いの公園に太助たちは来ていた。公園には義浩ほか子供たちが集まっており、他の家の子供たちも何人もいた。義浩と隆がラジオをセットしているところをみると、二人は町内の子供たちのまとめ役のようだ。まあ、たしかに高校生にもなってラジオ体操に参加してるやつはあまりいない。おそらく町内会などから頼まれたのだろう。まもなく体操が開始され、太助たちも後ろでやることにした。 「えーと、いち、に、さん、し、ごお、ろく・・・あれ?違った、えーと・・・」 シャオはこういうものは初めてなのだろう、なかなかうまくできないようである。もっとも、太助も中学生になってからやらなくなったため、多少のブランク(?)があったが。 「いち、に、さん、し、ごお、ろく、しち、はち、きゅう・・・あ、ひとつ多かった・・・」 「シャオお姉ちゃん・・・なんだかサル回しみたいだよ・・・」 となりで見ていた奈緒の冷静なツッコミに、太助はおもわずふきだしてしまった。 「いち、に、さん・・・ふえ〜ん、らじおたいそうって大変ですう〜」 そんなこんなでラジオ体操も終わり、太助はシャオに歩み寄った。心なしかシャオは息が荒いような気がする。 「シャ、シャオ、大丈夫か?」 「(ハアハア)ら、らじおたいそうは、難しいです〜」 「シャオにも、苦手なものってあるんだな」 そう、シャオだって万能じゃない。失敗もすれば、苦手なものだって当然ある。太助はそれにいまさらながら気付いた。 「大丈夫、ゆっくりおぼえればいいさ。焦ることなんかないよ」 そう・・・焦ることはない。ゆっくり、でも確実に目的に向かっていけばいいんだ。太助は、この言葉を自分自身に言い聞かせた。 「おおーい!帰るぞお!」 向こうで隆がさけんでいる。 「さてと・・・行こっか、シャオ」 「おし、みんなそろったな・・・そんじゃ家まで競争だ!さっさと帰って朝飯にしようぜ!」 言うなり、充が駆け出した。その後に奈緒や沙希、拓也が続く。 「シャオ・・・俺たちも走ろっか」 「はい!」 「ようし、じゃあ・・・」 太助はそういうと、シャオの手をとって走り出した。シャオも驚いたようだったが、すぐに笑顔になって走りはじめた。そんな二人を子供たちが冷やかす。 「(奈緒)ひゅーひゅー!太助お兄ちゃん、やるう!」 「(沙希)あー!手つないでるー!」 「(充)おー!朝っぱらからお熱いこって!」 「(隆)くおらぁ!なに朝から見せつけとんのじゃあ!待てーぃ!!」 「(拓也)・・・今日も平和だな・・・・・」 「(義浩)やれやれだぜ・・・」 心地よい夏の朝の風をうけ、太助とシャオの新たな一日がはじまる・・・・・ 終わり(←続く?) (あとがき) ども、路崎です。性懲りもなくこんなものを書いてしまいました・・・。とうとう太助とシャオ以外の主要メンバーが完全に出てこなくなってしまいました。こらいかん!と思ってはいるのですが、今さら登場させるのもちょっとなあ・・・。どうにかしないとやばい・・・かも。ちなみに、星神もぜんぜん出てきませんが、シャオは一応支天輪をもっている設定になっています。 今回のお話は、前作「旅と列車とシャオリンと」の続きということで書いてみました。「旅と列車と〜」や「藪の中」が一般市民とのふれあい(?)を書いたものとすると、今回は家族や兄弟といったものに重点をおいたものです。また、「まもって〜」本編には愛原より年下の子供たちがあまり出てこないので(シャオが駄菓子屋の手伝いをしていたときぐらいか?)、太助たちよりも年下の生意気盛りのガキどもを書いてみたいな〜って思って書いてみたものでもあります。男の子、とくに隆や充には「古き良き昭和クソガキテイスト(なんじゃそりゃ)」をいれてみようと考えたのですが、どうでしょうか?書いていてふと思ったのですが、今はこういう子供たちは見たくても見られなくなってしまったな・・・としみじみ感じました(少し寂しいですね)。 本来、「旅と列車と〜」は一話完結のお話のつもりだったんですが、空理空論さんのページに投稿した後、ノート(中学時代にエンピツで守護月天などの2次小説を書きなぐっていたときのもの)をよく見たらその後のことらしいお話が載っていましたので、手直しした後、こうして投稿させていただきました。相も変わらずの駄文っぷりですが、読んでいただければこの上ない幸せです。 (キャラクターの補足) なんか、やたらとオリジナルキャラが出てきて、わかりづらくなってきたのでプロフィールでものっけてみましょうか(これまた長いなぁ・・・)。 ・飯村絵美子(いいむら えみこ)・・・ある地方都市の有力者である飯村家の長女で、21歳。面倒見がよく、さっぱりした性格。普段は大学に通っており(今は夏休み中)成績は優秀で、ひそかにファンも多い。さらに家事もそつなくこなし、特に料理、ことお惣菜などの味はシャオを凌ぐほど。那奈とは長い付き合いで、よく電話したり手紙を出したりしている。基本的にさん付けで呼ばれることが苦手で、呼び捨てか、「絵美姉」のあだ名で呼ばれることを好む(そのかわり自分も相手を呼び捨てにし、タメ口で話す。那奈も例外ではない)。家族と友達を大切にし、まさに「才色兼備」という言葉のふさわしい女性である。ちなみに、過去に男性に1回ふられて3回ふった経験がある(笑)。また、柔道の有段者でもある。 ・飯村義浩(いいむら よしひろ)・・・飯村家の長男で、絵美子の弟。ちょっとぶっきらぼうだが、姉と同じく面倒見がよく、気のいい17歳(高校2年)。隆とは従兄弟同士であり、また親友でもある。成績は良いほうだが、特に体育と国語は校内でもトップクラスである。姉に似たのかタメ口を好み、子供たちからは「ヨシ兄ぃ」のあだ名で親しまれている。行動力があり、お祭りや町内の行事に進んでひと役かうことも。姉と同じく柔道の有段者であり、こちらもかなりの実力。「質実剛健」という言葉のよく似合う男である。同じ高校に、「友達以上 恋人未満」の1つ下のカノジョがいる。高校生ならだれもが興味を持つであろう、「酒」と「煙草」、それに「コーラ」と「コーヒー」が全く飲めないというなんとも変わった体質。ちなみに前作「旅と列車とシャオリンと」に登場した『・・浩』はこの男である。 ・飯村隆(いいむら りゅう)・・・絵美子と義浩の父親の弟、絵美子たちにとっては叔父にあたる、飯村ひろしの息子。本編におけるたかし的人物(笑)。豪放かつ無鉄砲な性格だが、正義感は人一倍強い(ドラマなどの性格の悪いキャラに対し、本気で怒る)。十五歳で、中学2年生。太助より1つ上だが、あんまり気にしておらず、対等に付き合うことをよしとする。友達想いで、義浩と並んで頼れる男。たかしに似た部分もたくさんあるが、隆はあまりカラオケは好まない(ちなみに洋楽好きであり、ことビート○ズとオフスプリ○グを崇拝している)。成績は体育以外はあまり良くない。「単純明快」という言葉がよく似合う男である。家は義浩たちの家と同じ町内にあり、しょっちゅう遊びに来ては、ご飯を食べたり、泊まっていったりしている。部活はバスケ部に所属し、なかなかの腕前。ガンマニアでもあり、モデルガンを大量に所持している。現在彼女募集中。なぜか、自分の名を「たかし」と読まれることを昔から嫌っている。 ・城野塚拓也(きのづか たくや)・・・義浩たちの親戚の子供で、隣町に住んでいる小学6年生。礼儀正しく、小学生とは思えないほどの落ち着きをもち、なにごとも慎重に事を運ぼうとする。学校での成績もよく、体育も意外に得意。パソコンに詳しく、腕前は確か。また、学校では珠算部に所属しており、全国大会出場経験もあるほどのウデ。こういったタイプは乎一郎のようにメガネをかけているのが常だが、彼は目もよく、背もわりとたかい。口数は少ないが人当たりはよく、男女問わず人気がある。「全知全能」という言葉があてはまりそうな男の子。ひそかに絵美子に憧れており、毎年の夏休みを飯村家ですごすのは彼にとっては絵美子に会いたいからだったりする。でも、憧れているだけであって、べつに年上好みではない(と思う)。隆や義浩からは「拓」のあだ名で呼ばれている。弱点(?)は、満腹になるとすぐに眠ってしまうこと。なんだかんだいいながら、こういうところはお子ちゃまである(笑)。 ・城野塚沙希(きのづか さき)・・・拓也の妹で、小学2年生。隣町から兄に連れられて飯村家で夏休みをすごしている。これは彼女らにとって毎年の恒例で、沙希自身も楽しみにしていることなのだが、今回はシャオと出会ってかなりご機嫌である。歳相応にくるくるとよく動く可愛らしい女の子で、みんなから好かれている。シャオに一番なついている子で、お風呂も一緒にはいるあたり、ある意味太助よりも長時間シャオと一緒にいるのではないだろうか。幼稚園の頃から書道をたしなみ、賞をとったことも数多い。また、オリジナルキャラのなかでは星神に出会った今のところ唯一の人間である。シャオが離珠と長沙を出したとき、偶然それを目撃したのが沙希であった。当然、かなり驚いたが、すぐに「シャオお姉ちゃんは手品師なんだね!」と早合点し、現在もそう信じている(太助をシャオと沙希が起こしにくる場面で、「もっと手品を見せてほしかった」と言ったのはこういう意味です。どっちかって言うと手品より人形劇じゃないか、というツッコミはしないでください(笑)。ちなみに離珠たちも沙希のことを気に入っているようです)。まさしく「天真爛漫」という言葉がピッタリの女の子である。 ・本郷充(ほんごう みつる)・・・奈緒の双子の弟で、小学4年生。絵美子や義浩の親戚にあたり、本編におけるたかし的人物その2(笑)。よく笑いよく叫びよくしゃべりよくつっこまれる男の子。おそろしく早口で、機関銃のようにまくしたてるしゃべり方が特徴だが、しゃべりすぎるあまり姉である奈緒から手痛いツッコミが入ることもしばしば。好きな言葉がよりにもよって「魂」と、ある意味隆よりもさらにたかしに近い人物。おしゃべりのみならず、何事も一度始めたら疲れるか気が済むまで続ける性格で、その時の集中力は奈緒も一目置いている。また、「嫌な事は先に済ます」を信条としており、夏休みの宿題を夏休み開始どころか配布された当日から始め、その集中力も手伝ってたった3日で仕上げたという、すごいのかバカなのか判断に苦しむ偉業を達成している。「全力疾走」という言葉そのまんまの生き方をつらぬく男の子である。その他のプロフィールは本編で聞いてもいないのに勝手に紹介していたので省略。ちなみに彼のカラオケの得意曲は・・・秘密である。 ・本郷奈緒(ほんごう なお)・・・充の双子の姉で、充と同じく小学4年生。充の保護者兼ツッコミ役のような子で、両親に連れられて隣県より飯村家にやってきた(城野塚兄妹と同じく、飯村家で夏休みをすごすのが恒例となっている)。沙希に次いでシャオになついている女の子で、「パッと見は三姉妹のようだね」とは太助の言葉。本編中でも言っている通り、空手を習っており、その強さは本物。学校の校訓である「雨洗風磨(雨に心身を洗い、風に技を磨こう、という意味)」を信条としているが、普段はごく普通のおませな女の子である。充とはいつもどつき漫才のようなケンカを繰り広げているが、基本的に仲は良く、お互いを誇りに思っている。やや強気な性格だが、実は幽霊などの怖い話が苦手で、去年の夏に肝試しをやったところ、幽霊にばけて奈緒を驚かそうとした充を恐怖のあまり「キレ」てボコボコにしてしまい、あわや病院送りにするところだった、という逸話がある。ちなみに、子供たちのなかで一番早起きであり、毎日ほかの子供たちをたたき起こす役目を担っている。 ・飯村ひろし(いいむら ひろし)・・・絵美子と義浩の父親の弟であり、隆の父親。「冷静沈着」な中年男で、やや無口だが頼りになる人。子供たちのよき理解者であり、特に義浩は「ひろし叔父貴」と呼び、実の父のように慕っている。車が趣味で、愛車フェアレディZのほか、数人ででかける時のためにレガシィも所有している。昔は名の知れた走り屋だったそうで、横浜などでブイブイ言わしていたらしい。煙草を嗜むが、人のいる場所では吸わない(吸うとしてもかならず断りをいれてから吸う)良識ある愛煙家。仕事は地元のスーパーマーケットの専務をしており、有能な社員である。ちなみに前作「旅と列車とシャオリンと」に登場した『・・し叔父貴』はこの人である。 ・・・とまあ、こんな感じでしょうか。なんか超人ぞろいですねぇ(汗)。こんな家族いねえ!というツッコミはご勘弁を。 最初は、「旅と列車と・・・」のように・・子という風に書くつもりだったのですが、伏字だらけになってしまうので、ちゃんと名前をつけることにしました。ですがこれがおもった以上に大変で、生まれてくる子供の命名に悩むお父さんの気持ちがわかったような気がします(ちなみにオリキャラの名前は友人知人の名前をもじったりしてつけました)。 次にこの町についてなんですが、薄々感づいている方も多いと思いますが、これは自分の生まれ故郷であるA県の某市を(ある程度)モデルとしています。ちなみに飯村家は完全に架空のものです。探さないように(笑)。 最後に、タイトルの「少年時代」は、ご存知井上○水の名曲からとっています。最初は「少年倶楽部」にしようかと考えたのですが、元ネタが古すぎてだれもわからないだろうと思い、こちらのタイトルにしました。まあ、てきとーなのに変わりはありませんが(汗)。 では今回はこの辺で。 |
297 | Reply | にぎやかですね | 空理空論 | URL | 2003/08/04 02:05 | |
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第一の感想はこれです。 登場人物の多さも手伝ってますが、何より自己紹介や食事時間など、 それがとっても伝わってきました。 一番に感じたのは、太助とシャオが家に足を踏み入れた時、ですね。 たくさんの靴、子供たちの騒がしい声、朗らかさがいっぱいに出てていいなと思いました。 ラジオ体操が非常に懐かしいです、歌とか。 …とはいえ、実はつい4年前に結構やってました。 サークルの合宿にて、毎朝あったんですよ、ラジオ体操が。 眠い中やってました…いやはやまったく、よくやれたなあ(笑) 最後の人物紹介。自分的に、見習うところがたくさん…(苦笑) まあそれはおいといて、しっかり個性が揃っていていいですね。 皆が揃っている場面が主となるのでしょうが、個々の話がたくさん描けそうです。 続きとしてどのような風景が描かれてゆくのか、とても楽しみですね。 |
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