384 Reply 第一話 君達は一体? しののめ MAIL 2004/08/01 04:05
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で、結局僕は止む気配の無い雨に帰るわけにもいかず、それ以前にこの子達を放って置く事なんてできないし。結局、御神木の下で、膝をつき合わせて話し合うことに。しかし、ねぇ……。
「いきなり仲間になってとか、力を貸してって言われても……僕は普通の、暇をもてあましてる高校二年生だよ。」
僕にそう言われて、二人は顔を見合わせる。何か頭の上に疑問符が浮かんでそうだ。いや、疑われてもなぁ。
「そんにゃはずはないですよ。飛鳥さんはすごい人のはずです!」
「……はず。」
そう言われてもなぁ。別段喧嘩が強い訳でもないし……というか、喧嘩しないし。運動って言っても、僕文科系専攻で運動しないからわからないなぁ……。
「本当に、僕はたいした人間じゃないって。」
自分自身では本気でそう思っている。まぁ、じゃあその頭の回転の速さはどう説明するんだって言われるかもしれないけど(実際に友人に言われてるけど)まぁ、それは別の話で。
「でもでもです。私が調べに調べた結果、三年前に現れたすっごい人と彼方の共通項が27通りもあるんですよ〜。」
「三年前?」
子猫の言葉に、僕はちょっと引っかかる。実は僕、三年前の中学三年生の時期の記憶が曖昧なんだ。というか、高校入ってからの記憶は鮮明なのに、それ以前の記憶が今ひとつだし……。
「……うん、三年前。たしか、首都とーきょーで、大規模連続殺人が、起こったんだけど、その事件を拳銃一つで、かいけつしたっていうすっごいのがいるって話。」
秋ちゃんがゆっくりと確りとした口調で説明してくれる。
「でね、その連続殺人犯が当時ようやく裏市場に出回り始めた軍事用パワードフレーム、和名では強化外骨格だにゃ。を装着してすっごい重武装をしてたの。警察隊や機動隊じゃその相手の機動力と攻撃力の前に手も足も出なかったの。それを沈めたのが、例のすっごいガンマンさんです。」
パワードフレームと聞いても分かる筈も無いので、ここで強化外骨格/パワードフレームについて説明しておくよ。

『強化外骨格/パワードフレーム』
 元来軍用で、歩兵の強化を目的に製作された、装着型の筋力増強装置。「着込む」のではなく、「履く」「背負う」といった、文字通り第二の骨をつけるといった物である。装甲板を排除し、装着者の筋力を増幅させる事を目的とする。装甲板を排除する事により軽量化、低コスト化に成功し、さらに増幅のみを目的とする為モーター等の動力の削減、減量に成功している。更に、フレームのみで構成されているため着用者を選ばず、同じ型での大量生産が可能で、メンテナンス、改造や換装も比較的簡単に行う事ができる。脚力や腕力も増幅するので、一般的なフレームで平均男性で縦に5m、横に10mの跳躍が可能であり、常人では持てない様な大型火器を手に持って使用可能である。更に、その反動や重量は全て外骨格が負担する為に、装着者に対する負担は最小限である。なお、一切着用者の動きを妨げる事は無い。歩兵の強化や、市街戦、更には山岳戦等での使用に関しては他の追随を許さない性能を誇り、そのコストパフォーマンスもトップクラスである。余談だが、最初は軍用で作られたが、医療用に転用され、再度軍用として再設計された。ちなみに、医療用の奴の名前は『補助外骨格/サポートフレーム』である。

「まぁ、通常の兵器じゃ機動力に優れるパワードフレームの動きについて行ける訳もないしね。」
ふと気づく。何で僕は、パワードフレームの動きなんて知ってるんだろ? まぁ、多分テレビでみたんだろう。最近、ようやくテレビに映るようになったからなぁ。
「そうにゃんですよ。あれは、人間を超人に変えるようなものですから。例え兵器じゃなくても、通常火器でも相手ににゃらないですよ。」
「……あれ、すっごいはやくなる、から。使ったことあるけど、慣れるまで振り回される……。」
「へぇ、そうなんだ……」
……ん? 何か、気になる一言があったんだけどな……。
「えっと……。」
……気になる一言以前に、よく考えると名前すら知らない事に気づく。まぁ、女の子は『秋ちゃん』って暫定的に分かってるけど、ニックネームって可能性もあるしね。
「……ところで、君達の名前教えてくれないかな?」
お、二人ともきょとんとしてる。これはこれで可愛いかな。んで、少し経つと秋ちゃんが、ぽんっと手を叩く。
「……よく考えると、まだ、自己紹介してない……。」
「ですね、失念してましたね。」
言うが早いか、子猫が秋ちゃんの頭の上ですっと立ち上がる。(もちろん四足で)
「私の名前は、るーしぇって言います。色々と事情があって、真っ白子猫のデバイスで行動してるのです。これでも、優秀なハッカーにゃんですよ。」
何か、子猫……るーしぇがど〜んと胸を張ってる(気がするだけだけど)
「……でも、るーしぇって呼びにくかったら、るるでいいらしいけど。」
秋ちゃんが補足してくれる。なるほど、るるちゃんね。……っていうか、ハッカーって……。まぁ、だったら色々と納得できるけどね。
次に、秋ちゃんが自己紹介をしようとすっくと立ち上がる。まぁ、立ち上がる必要はないんだけどね。
「……わたしの名前は……」
秋ちゃんが言い終わる前に……。秋ちゃんがいきなり僕を突き飛ばし……樹皮の爆ぜる音が、小さいながらも確りと聞こえた。

「……はい!?」
思わず、御神木の木の影に隠れたりしながら、後ろを見やった。
そこには、いかにもといった黒服に、黒い顔全部を覆うタイプの防毒マスクのスタイルの(多分)男達がいた。手にはサイレンサー付(だと思う。だって銃声殆どしなかったし)拳銃を構えているのが一人、他は電磁警棒とか、ナイフとかが九人。
ちなみに、またも余談だが、僕は五感がすごい発達してるようで、目も耳もいいし鼻もいい。よって、土砂降り程度で数を数え間違える事は(隠れてない限り)まずない。以上、余談終了。
「何、このいかにも何かに巻き込まれましたって展開!?」
取りあえず突っ込んでみる僕。ちなみに、るるちゃんは僕の突っ込みに共感してくれたのか、頷いてる。
「とりあえず定番で……お前達は一体何者だ!!」
気が動転してるのか、それとも落ち着いてるのか分からないけど、僕は取りあえず月並みな台詞を叫んでみた。もちろん、返答がある分けがない。と、思ったんだけど……。
「我々は、正義の味方だ(くぐもった声)」
「んなわけあるかぁあああああ!!! 明らかに悪だろ悪、悪の戦闘員! それか、軍隊とか特殊部隊とか特殊警察とか、そこら辺だろ!!」
取りあえず全身全霊をもってして突っ込みを入れる。ちなみに、るるちゃんと秋ちゃんだけじゃなくて、残り九人の人も頷いてくれてる。あ、納得してるんだ。
「っく、頭ごなしに否定するなんて……。ええい、やってしまえ!(くぐもった声)」
思いっきり悪役の台詞を叫ぶ男が、全員に号令をかける。そして、一気に、だがゆっくりと近づいてくる。
「う〜ん、どうしようか……。何かすっごいやばそうな雰囲気なんだけど……って、二人とも何やってんの?」
本気でどうしようかと僕が考えていると、るるちゃんが何かしてるみたいで、ぶつぶつと何か言ってる。
「……ファザーコンピューターより、一対多数近接戦闘用プログラムダウンロード……。残り30、25、20……」
何やらカウントに入り始め、るるちゃんの両耳の後ろから、一本ずつプラグが出てくる。
それを秋ちゃんは自分のジャックに差込、全身の力を抜く。
「10、5、0……ダウンロード完了、これより転送に入ります。転送率、20、40……」
「60、80……。」
るるちゃんと同じタイミングで、秋ちゃんもカウントを開始する。
「「90、100。受信完了!!」」
完了の声と同時に、ジャックからプラグが外れる。すかさず秋ちゃんが駆け出し、同時にるるちゃんが転落する。そのるるちゃんを僕がすかさずダイビングキャッチ! ……もちろん、制服は汚れたけどね。
僕は慌てて秋ちゃんを探す。そして、本当に驚いた。
「……ていっ!」
軽い掛け声でのとび蹴り。だが、それでナイフを持った男が何メートルも空を舞う。すかさず着地して、そのまま後ろ回し蹴りを繰り出す。後ろから近づいていたトンファーの男が、気持ちがいいぐらいにすっ飛んでいく。今度は左右から電磁警棒を持った二人組みが、警棒を横薙ぎに繰り出してくる。片方が地面すれすれ、もう片方は首の高さだ。これを避けるのは至難の業で、かすりでもすれば下手をすると行動不能に追いやられるのが電磁警棒だ。だが、秋ちゃんは気にする様子も無く、身体を横にし、足で上の警棒を蹴り上げ、下の警棒は手を使って巧みにかわす。そう、身体を横にしてその隙間を潜り抜けたのだ。もちろん、攻撃も忘れていない。手を使って逆立ち状態になり、そのまま足を開いて回転蹴りを双方に同時に叩き込む!! 当然二人は吹き飛んでいく。だけど、更にその秋ちゃんの上から棍を持った奴が振り下ろしてくる。それを、何と逆立ち状態のまま両足を合わせて、その靴の裏で受け止め、そのまま相手を蹴り飛ばした!! 吹き飛んだ相手はそのまま地面に満足に受身も取れず叩きつけられた。秋ちゃんはそのままバク転の要領で後ろに跳び、正常な体勢に戻る。
「……これで、半分。」
相変わらず、ゆっくりとした口調の秋ちゃん。まだ余裕って感じ。……滅茶苦茶すごいよ、今の……。
この圧倒的差を見せ付けられて、相手のリーダー各さん、何か考え込んでる。
「……全員、撤退だ!! この、覚えてろよ!!(くぐもった声)」
……もしかして、わざと悪役口調してるんじゃないのかな、あの人?
とりあえず吹き飛んだ人とかを、無事な人が抱えてどっかに逃げていくみたい。……あ、トラックあるんだ。まぁ、定番だしね。
「……終わりましたね。まぁ、秋ちゃんの敵じゃにゃいって事ですよ。」
えっへんと、胸を張っている(ように見える)るるちゃん。あ、秋ちゃんが帰ってきた。
「……むぅ、びしょびしょ……。ずぶぬれ……。」
確かに、土砂降りの中で戦ったるるちゃんは雨に見事に濡れてる。取りあえず、適当に鞄をあさると……お、あったあった。
「はい、秋ちゃん。タオル。」
鞄から取り出したタオル(ちなみに未使用ね)を渡してあげる。
「……ありがと。……むぅ、下着までびしょびしょ……。」
服は諦めて頭と顔を拭く秋ちゃん。黒いタンクトップだからいいけど、白かったら透けてそうなぐらいに濡れて……って、そういう想像はだめだぞ、僕。……でも、殆ど胸はなささそう。
「しっかし、さっきの連中は何? というか、秋ちゃんも何者?」
取りあえず現在僕の頭の上にいるるるちゃんに聞いてみる。
「さっきの人達はですね、特務対策課の人達です。警察の。」
「ふんふん、警察の特務対策課ね……って警察!?」
思わず上を向き、るるちゃんが爪を立てて来たので慌てて前を向く。目線の先にはできるだけ乾かそうと悪戦苦闘してる秋ちゃんの姿が。
「……えっと、そうすると君達って悪役? というか悪人?」
「違います! というか、あの人達はちょっと強引にゃ人達なんです。最近出現し始めてる、ある『ウィルス』に関してちょっと過敏すぎるだけですにゃ。」
う〜ん、言い分は色々あるけど、この子達は悪人には見えないしな……。って、ウィルス?
「ある『ウィルス』って何?」
僕の当然の疑問に、るるちゃんはちょっと悩んでから、言葉を紡いだ。
「そうですね、ある『ウィルス』ってのは、平たく言えば常人を超人に変えちゃう物です。流石にスーパーマンにはにゃれませんし、炎を吐くとかも無理です。超能力も使えるわけがにゃいです。ただ、人間の既存の能力を極限まで強化する事ができるのです。」
……何か滅茶苦茶すごいような、すごくない様な、でもすごいウィルスなんだ。
「でも、何がどう強くにゃるかはランダムですし、もちろん副作用だって出てきます。まともに戦える人にゃんてのも少ないですし。まぁ、骨が強化されずに筋肉だけ強化されたら、すぐに骨が曲がっちゃうわけですし。」
「……なるほど。その副作用って何なの?」
僕の問いに、るるちゃんはちょっと間を置き(多分データを整理したんだろうな)言葉を続ける。
「まぁ、身体的なのは色々ですが……全てに共通して言える副作用があるんです。それが、一部の『感情』の欠落ですにゃ。」
それを聞いて、何か引っ掛かった気がした。何かは分からないんだけど……。
「……実は秋ちゃんもその感染者にゃんですよ。それで、『喜怒哀楽』の『怒』が欠落してるんです。だからマイペースにゃんですよ、秋ちゃん。」
「……なる程、何か納得。」
とりあえず、引っ掛かった事は捨て置いて、置こう。
「……とりあえず、拭けるところは、拭いたけど……。むぅ、服がびちょびちょ……。」
話に一段落がついた辺りで秋ちゃんが戻ってきた。そして、ふと思い出したかのように、手をぽんっと叩く。
「……自己紹介、まだ言ってない……。」
……本当にマイペースな子なんだなぁ。
「……名前は、秋(あき)……えと、女の子で……」
「「それは見ればわかる。」」
僕とるるちゃんの同時つっこみに、「むぅ……。」と鳴く?秋ちゃん。
「……あと、結構つよいよ。うん。……とりあえずは……こんだけ。」
自己紹介になってんのかなってないのかよくわかんないけど、とりあえず色々と分かった気がする。
「まぁ、自己紹介ありがと。一様僕も言っておくけど、僕は千流寺飛鳥。17歳の高校二年生ってところかな。」
「……すくない。」
「秋ちゃんよりは多いと思うけど。」
「……むぅ。」
さて、頭の上のるるちゃんに向けて、再度質問をかけようかな。
「んで、結局君達は何者なの?」
僕の問いに、るるちゃんはしばし考えて。
「それはまた次回って事で!」
「……ことで。」
……へ?
「そんなんありかぁああああ!!!!!」
「……ありなんじゃない?」
取りあえず、僕の声が辺りに響き渡った。……だけだった。




〜〜あとがき/しののめ〜〜
と、言う訳で無駄に長いものをお読み下さりとても感謝感謝です!
えぇ、無駄に説明が多かったりとかしますがそこはご容赦くださいw
サイバーパンク一歩手前物ではあるけれど、所々にギャグがほしい!
という私の手前勝手で何か気楽なムードですがお気になさらず。
今頃ながら、何故こんな話を、ここ空理空論のHPで書いてるかというのが謎では在りますが……まぁ、気まぐれと言う事でw
ちなみに、この話の中にでてくる『強化外骨格/パワードフレーム』は……。
何? 名前と説明した出てきてない? それは気にしない気にしないw
とりあえず、『パワードフレーム』は真面目に自分オリジナルで考えた兵装なのです。
よって、恐らくここ以外ではこの兵装は存在しないはずなので、そこら辺よろです。
まぁ、順を追って書いてくかと思いますが、暇な方はお付き合い下さいw
それでは!
386 Reply 一体全体この先は? 空理空論 MAIL URL 2004/08/07 00:00
ff6666
そんなこんなで、第一話読ませていただきました。
設定のなせる技なのか、登場するものやら人やら、
そして展開やらが、なんとも小気味よいテンポで出てきてますね。
受信とかハッカーとかウイルスとか、そんな言葉が出てくるたびに、
ああこれはコンピュータ系の話なんだよなあ、などと思ったりするのですが、
やっぱりどこかそういうサイバー的なものとは別のナチュラルな空気とでもいいましょうか、
そういうのがあるのがやpっぱり好きです(所々にギャグ、というのの効果でしょうか)
どういう展開を今後見せてくれるのか、楽しみです。
続き頑張ってください。
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