スレッド No.138


[138] 『授けて 慶幸日天!』第五話 いざ学校(その2)
投稿者名: 汝昴待遇向上委員会 委員長
投稿日時: 2001年5月23日 01時17分
乎一郎「あ、あの、お、お怪我はありませんか?」
 乎一郎の声は少し上ずっていた。
?? 「私なら大丈夫よ。それより貴方の方が派手に転んでいたけど?」
乎一郎「ははははは・・・・」
 痛いところを突かれてしまった。 
?? 「はい。あとこれも。」
 手渡されたそれは勉強道具だった。綺麗なお姉さんを見送り乎一郎は幸せいがっぱいだった。彼にとって夢のような時間過ぎてふと、気づく
乎一郎「あっ、名前聞きそびれた」


 トイレで用足しも済んだ太助が幸せそうな顔そしていた乎一郎に声を掛ける。
太助 「何か良い事でもあったのか、乎一郎?」
乎一郎「今ね。すっごく綺麗なお姉さんが居て廊下の向こうの角を曲がって行ったんだ」
 乎一郎の声も若干熱をもっていた。
太助 「へぇ、この学校にか? 珍しいな」
 と太助は口に出しつつも心のどこかに引っかかった。
太助 「で、どんな人だったんだ?」
 まさかとは思うがそれが杞憂なことを祈りつつ聞いてみる。
乎一郎「うんとね〜」
 と乎一郎が言いかけけたその時

キ−ンコーンカーンコーン

太助 「やばい、チャイムだ」
 二人は慌てて生物室へ走り出した。


 4時限目も終り昼休み
たかし「太助購買部行こうぜ」
太助 「ああ」
たかし「なんでも新しい売り子が来てるんだってよ」
乎一郎「どんな人かなぁ? 美人のお姉さんだといいなぁ」
太助 「乎一郎のお姉さん好きも相変わらずだな」
乎一郎「いいじゃない。好きなものは好きなんだから」
太助 「悪いなんて一言も言ってないよ」
たかし「そうだぞ乎一郎。自分の好きなものを堂々と胸張って言えるってことは素晴らしい事なんだぞ。う〜ん、今日も良い事言ってるなぁ、俺」
 自分で持ち上げなければもっと良いのに。と内心二人は苦笑しつつ、談笑もほどほどに購買部に到着した。
 凄い人だかりだ。何時もこんなに購買部って込み合っていただろうか? 少々大袈裟に言うと人が多すぎて売り場が何処にあるか解らないくらいだ。
乎一郎「あっ!」
たかし「どうした、乎一郎?」
乎一郎「あの人だ!」
 なんの事だかさっぱり解らない。
乎一郎「太助君。太助君。さっき話した僕が会った綺麗なお姉さんだよ。購買部の人だったんだ」
 この時点で乎一郎の後ろはパァーッと明るくなってる感じがする。しかし一体どうやって見てるんだろう? という疑問が太助とたかしに沸いた。何故ならあまりの人の多さに売り子なんてさっぱり見えなかったからだ。しかし、どうやら乎一郎には見えてるらしい。この辺りに達するともはや超人の域かも知れない。

太助 「で? どうする?」
たかし「ここで、パンが買えないと俺達はメシ抜きだ。しかし今日は思いも寄らない激戦区となっている。そこで作戦が必要だ。と言っても時間(とパンの残り)が少ないのでサクサクッと説明する」
 二人は頷く。
たかし「よし、今日は売り子のお姉さんに会いたさで気合の入っている乎一郎! お前が切り込み隊長だ。その後に俺と太助が続き。俺達三人の内無事に売り場まで辿りついた奴が代表で買ってくる。いいな」
乎一郎「うん」
太助 「よし、ってしかしパン買うだけこんなことやって、少し大袈裟じゃないか?」
たかし「太助。お前は本当にわかってないなぁ。戦場のようなこの場所で勝ち取るから意味があるんじゃないか。苦労して得た分だけ俺達にとってのパンのありがたみが増すってもんだ」
 これは駄目だ。最早たかしは熱血モードだ。いつもは止め役に回る乎一郎も今回はやる気満々だ。太助はため息を軽く吐きつつも、たかしや乎一郎の後に続き、人だかりに突撃する。


乎一郎「うわ〜!! 太助君! たかし君!」
 乎一郎が人の波に飲まれて流されていく。
たかし「乎一郎。お前の犠牲は無駄にしないぞ!」
 最早戦場ドラマかなにかのようだ。もう少しで売り場という所で、
たかし「ゴールはもうすぐそこだ。太助、俺はもう駄目だ。後はまかせたぞ・・・・」
 すでにたかしもなりきっていた。というか盛り上がり過ぎだ。
太助 「あ、ああ」
 ここは合わせておくべきだろうか・・・・・太助は羞恥心と友情を天秤に掛ける。
太助 「・・・・お、俺が必ずパンを持ちかえる。だから安心しろ」
 僅かに友情が勝ったようだった。台詞は棒読み完全な大根役者だが、たかしは満足そうに親指を突き立てるサインを送り、自分に世界に浸りつつ人の波に飲まれて行った。太助はろくに振りかえりもせず(ひでぇな)ようやく売り場の窓口に到着する。
?? 「面倒だからお釣りは無いようにしてちょうだいね!」
 聞き憶えのある声が聞こえて来た。滅茶苦茶嫌な予感もとい確信が芽生えた。
太助「ル、ルーアン!?」
 やはりそこにはルーアンが居た。
汝昴 「あら、たー様。やっぱり来たわね。ここに居れば必ず来ると思って・・・」
オバチャン「ちょっとあんた! 喋ってないで手ぇ動かしな! 客は待ってくれないよ!!」
 購買部のオバチャンの怒声が飛ぶ。
汝昴 「わかってるわよ!」
 言い返すルーアン負けてはいない。
汝昴 「たー様ごめんなさいね。屋上とか言う場所にでも居てくれないかしら。後で必ず行くから、ねっ(ハートマーク)」
太助 「あ、ああ」
 太助は曖昧にしか答えることが出来なった。言いたい事も聞きたい事もあったので太助は素直に従うことにした。でも買う物はしっかり買う。知人(といはひとつ屋根の下に住んでるけど)との売買のやりとりは太助にとって少し気恥ずかしかった。注文したパンに幾らかおまけが付いたが。


 屋上

びゅぅ〜

 季節は春だが風が少し冷たい日もある。今日がまさにそれだ。
たかし「なあ、太助。屋上でメシにするには少し時期が早くないか?」
太助 「別に無理に付き合わなくてもいいよ」
乎一郎「とは言っても約束があるんでしょう? あのお姉さんと」
 どうやら乎一郎には見えていたらしい。今日の乎一郎は侮れない。
乎一郎「ところで太助君、あのお姉さんとは一体どう言う関係なのさ」
 今日の乎一郎はえらく強気だ。
太助 「う〜ん。どういうって言われても・・・・」
 事実が突飛な話だけに、正直に喋って良いものかと言葉を濁す太助。
太助 「来たら説明するよ」
 これがこの時太助に言えるぎりぎりの線だった。


 パンも底を突いた頃。

バタン

 屋上の鉄扉が開かれた。
汝昴 「お待たせ〜(ハートマーク)」
 太助が彼女の名前を口にし、乎一郎は黄色い声(?)を上げる。たかしは予想より美人であった彼女に対し、驚きと賛嘆の混じった口笛を吹く。

乎一郎「ねえ。太助君紹介してよ」
 乎一郎が熱い眼差しで詰寄ってくる。多少引きつつもルーアンを紹介する。
太助 「え〜っと、こっちが・・」
 太助はルーアンをどう紹介して良いか迷っている。
汝昴 「あら、君は確かあの時ぶつかった・・・」
乎一郎「そうです。僕は遠藤乎一郎って言います。はじめまして!! え〜っと」
汝昴 「あら、私の名前言ってなかったわね。私の名前は慶・・・」
 その時ルーアンは太助の『本当の事を言わないでくれ』と懇願しているような瞳を目にした。
汝昴 「・・・・私の名前は瑠安 慶子(るあん けいこ)たーさ・・・じゃなかった、太助君の親戚よ。ルーアンとでも呼んで頂戴」
 安堵息を漏らす太助。あとは滞りなくたかしと乎一郎の紹介がされた。


太助 「なんで学校に来たんだ? ってそれよりも疑問なのは購買部に居たことなんだけど」
 太助にしてみれば一番の疑問点だ。
汝昴 「ああ、それね。学校での太助君の勉強っぷりを見に来たかったんだけどね。なかなか見つからないから。何処かで待ち伏せしようと考えてたら、食堂を見つけてね、そこが良いって閃いたのよ。でもあんまりあそこがあんまり忙しそうだから、つい手伝っちゃたのよね」
 その忙しさに拍車を掛けたのは少なからず彼女自身のその容貌であるとはつゆ知らずカラカラと笑いながら語るルーアン。
太助 「でも、どうやって入ってきたんだ?」
 太助にしては当然の疑問その2だ。
汝昴 「ああ、それ? 簡単よ、ちゃんと入り口から入ってきたわよ」
太助 「え?」
汝昴 「校門でほうきを掛けてた人、用務員のおじさん、だったかしら? その人に「親戚の忘れ物を届けに来ました」(嘘八百)って言ったらすんなり入れてくれたわよ。ついでにお茶も戴いて来たわ」
 なんたる世渡り上手。彼女の要領の良さに感嘆のため息を漏らす太助。その後暫く談笑は続き、もうすぐチャイムが鳴るからお開きにいしようという所で、
太助 「ルーアンこれからどうするの?」
汝昴 「うーん、貴方の勉強する姿を見たいだけど・・・」
太助 「え!?」
汝昴 「冗談よ。なんだかそんな事しちゃうと貴方が勉強に集中出来ないような気がするからその辺で時間を潰してるわ」
 誰の視界にも入らなかったが、心底残念そうにしている乎一郎の顔がそこにはあった。
汝昴 「それから野村君、遠藤君」
乎一郎「はい!」(いつもより元気)
たかし「なんだい?」
 ルーアンはフッと優しい微笑を浮かべながら、
汝昴 「これからも、太助君の事よろしくね」
乎一郎「はい!」
たかし「おう! 任せとけ!」
汝昴 「元気があって大変よろしい!」
太助 「ルーアン!!」
 笑顔で頷くルーアン。太助としては照れくさくて恥かしいことこの上ないが、彼女が母親か姉のように自分の事を親身に想ってくれた事は決して嫌ではなく、むしろ嬉しかった。


続く


あとがき
ご無沙汰してます。汝昴待遇向上委員会 委員長です。
おかしいなぁ(苦笑)今回で学校編が片付くはずだったのになぁ。どうしたんだろう?
 ついでに言うとルー姉さんがおとなしすぎるし・・・・当初はもう少し暴れる予定だったのになぁ・・・・どこで間違ったかなぁ?
 さて、今回も適度(?)にパクリました(笑)これで只でさえ現れる可能性が非常に低い出雲お兄さんが、ますます出て来れ無くなりました(笑)
 しかし、今回小さく纏まってしまった感が少々ありますねぇ(困った)
 次回で学校編にカタがつくといいなぁ(希望)

[139] 運命の出会い
投稿者名: 空理空論 (ホームページ)
投稿日時: 2001年5月24日 12時53分
学校の中で偶然にもぶつかった彼女は・・・なんて(笑)
個人的には購買部での戦いの場面が好きですね。
なんだかんだ言いつつもノってる太助。
のどかな風景に乾杯です(謎笑)
続き、頑張って下さい。

[145] おとなしいルーアンもいいですね
投稿者名: グE
投稿日時: 2001年6月8日 10時53分
原作と違い学校で暴れることも泣く、
(そこそこ)無難にいろいろなことをやっているルーアンもいい感じですね。

午後からはいったいどうなるのか…、
(暴れるにしてもどちらにしても)楽しみにしています。
頑張ってください。

それにしても、乎一郎すごい…。(購買部のシーン)

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