43 さずけて慶幸日天! 第十話 海に行こう!? 中編 ふぉうりん MAIL URL 2001/10/27 23:25
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 青い海 白い砂浜 輝く太陽、頬を優しくなでるし潮風が気持ちが良い。このすがすがしさが、うっそうとした気分を吹き飛ばしてくれる。

 ああ、海に来て本当に良かった。

「たー様、おまたせー(はーと)」

 太助は、自分を呼ぶルーアンの声に振り返るる。

「!! ごはっ!」

 太助は視覚的衝撃を受け、その場でひざを折り、撃沈される。

「??」

 ルーアンのは、太助がこんなになってしまった理由が、一瞬判らなかったが・・・・

(これは相当効いたらしいな)
 その様子を遠目にほくそえみながら翔子は見ていた。そしてこうも思った。今日は七梨で遊べそうだ(ニヤリ)

「たー様、もしかしてルーアンの魅力にノックアウト?」

「いやっ! そ、そんなことは、な、ない・・・よ」

 かなり苦しい返答である。ノックアウトまでいかなくても相当効いてることには違いなかった。そんな見え見えの取り繕いなどは、彼女に2秒で看破され、ルーアンはニヤリ笑い

「あーん、た−様、可愛い!」

 とルーアンは太助に思いっきり抱きついた。

「ぐわー、はなれてくれ〜! 俺が駄目になる〜!」(色んな意味で結構切実)

 結構本音っぽい少年の叫びが、青い空のしたこだました。




 ビーチパラソルの下、体育座りで俯き加減になりながらうな垂れている太助。その焦点が微妙に定まってないうつろな目は、どことなく死んだ魚のようだ。

「あーあ、七梨のやつ色んな意味で、堪えてやがるなぁ・・・、ここは一つ、親切半分、追い討ち半分で、ルーアンに入れ知恵を・・・」(ひでぇな)

 翔子の行動原理は『面白そうだから』である。今回のこの環境は絶好のシュチエーションだ。ここで太助をからかわなければ、どこでからかおうものか。最終的に太助に『・・・これは・・・・ちょっと嬉しいかも』とか思わせてしまえば、幾らでも自己正当化できるというものだ(オイ)ちょっとくらい(?)困らせても、それよりも少しだけ良い目が皆を見られるんなら、それで良いではないだろうか?

 などと勝手極まりない自己解釈により、翔子の頭の中では、もの凄い勢いで作戦練られていった。

「ねぇ、翔子ちゃん。たー様が沈んでるわよ。たー様に喜んで貰おうと、一生懸命頑張ったのに・・・何がいけなかったのかしらね?」
 
 七梨の女性対する免疫の無さと打たれ弱さが・・・と即答しそうになったが、翔子は幾らか言葉を選んで返答した。

「いろいろと少しづつ噛み合わなかったんだろ? 失敗なんて気にするなよな? これから取り返せばいいんだからさ」

 軽くウィンクして、ルーアンを励ます翔子。邪悪さのカケラもない(オイ)

「そうよね」

 『沢山取り返してくれよ。お釣りが来るくらいにな』などと翔子は心の中では悪魔のようなことを呟いていた。

「そうそう。じゃ、ここであたしからアドバイスも兼ねて・・・よしっ、ルーアン、ここは夏のビーチのお約束作戦に移るぞ」

「で? 翔子ちゃん。一体何するの?」

「ふふっ、これだ!」

 そして取り出したりますは、サンオイル! 原作のお約束よろしく、夏のドキドキ オイル作戦!

「わかったわ! これを全身に塗って『たー様、ルーアンがオイルを塗って差し上げますわ(ハート)』ってたー様に密着すればいいのね!?」

 流石の翔子もルーアンのこの発言に、一瞬言葉を失った。

「いやぁ、そういう濃厚なサービスは・・・・・って、一体どこでそれを憶えてきたんだ!? ってちょっとまってくれルーアン。読者のなかには多分中学生も混じってるんだぞ!? ここで説明に困るような発言は控えてくれ!!!」(作者の本音)

「じゃ、意味の判らなかった良い子のみんなは、お兄さんかお姉さん聞いてみようね(はーと)」

 と、ルーアンは、ばっちりウィンクで決めた。

「聞かんでええわい!」

「ここで一つルーアンからの注意よん。間違っても、お父さんやお母さんに聞いちゃ駄目よ。もしかしたら家族の間に溝ができちゃうかもね?」(結構意味深)<オイ

「あたしはそこまでは考えてはいなかったんだけど・・・・」

「ええ!? そうなのぉ?」

「・・・・」

 ルーアンの言葉には翔子も頭を痛めた。なんとなく日頃の太助の苦労が理解出来たような気がした。

「あたしには、それしか浮かばなかったわよぉ」

 こともなげにさらっと言うルーアン

「あんたの思考はどうなってるんだ?」

 翔子は当然のツッコミを入れた。

「え? たー様中心的(はーと)」

 最後にうふっと笑い、両手を組むポーズをとるルーアン。

「はいはい。ごちそうさま」

 翔子呆れ加減で生返事をしつつも、ルーアンが先ほど言っていた『全身オイルで・・・』を頭の中で想像してみる・・・


 想像終了


 結果は七梨太助卒倒とという、ある意味最悪なものだった。

「うーむ、これは止めた方がいいかも知れない・・・」

 これは『ちょっと悪戯』とか『ちょっかいを掛ける』とかいうレベルを完全に超えている・・・・と、翔子が一人考え込んでいると・・・

「うわっ!? ルーアン一体なんだ!?」

 と、遠くから太助の声もとい、悲鳴が聞こえてきた。

『なに!?』

 先走りやがった!? 翔子は舌打ちとともに、声のする方、太助達に駆け寄る

「よせ! ルーアン 多分七梨は!」

 翔子の声は手遅れだった。

「あらあら・・・困ったわね」

 全然困ってるようには聞こえなかった。

「・・・・・」

 おそかったか・・・・翔子の予想した通り太助はちょっと幸せそうな顔して、鼻血をながしながら、憤死していていた・・・もとい気を失っていた。

「いい夢みろよ。七梨」

 翔子には、この言葉をかけてやるくらいしか出来なかった。



 翔子とルーアンは静かな日陰で休んでいた。静かな波の音が耳に気持ちがいい。ルーアンは膝の上に気を失っている太助の頭を抱いていた。

「なあ、ルーアン、七梨ってさ、よくわかんないけど、ルーアンの主なんだろ? 主を気絶させっちまってていいのかよ?」

「あら、なんとなくこうなることは予想ができたわよ。私の頭の中では、私が介抱するまでが、一連の流れだったんだもの」

 翔子は絶句した。まさかそこまで考えての確信犯だったと・・・・慶幸日天あなどり難し・・・・翔子の中でルーアンへの警戒レベルが一段上がった。

「しかし、そこまで考えているとは、ルーアン。お主も悪よのぉ」

「いえいえ、お代官様には敵いませんな」

「「はっはっはっはっは」」

 などと、訳の判らないやりとりを行い二人は無意味に声を合わせて笑っていた。そして、ルーアンは昨日より少し気になっていた事を翔子に聞いてみることにした。

「とまぁ、冗談はこのくらいにしておいて、翔子ちゃん。今日、もとい昨日はどうして海に行こうなんて言ったの?」

 翔子は一瞬『来たか』というような顔をした。

「聞きたいのか?」

「ちょっと興味があってね。」

 実際そこで言葉を切るが『どうして、たー様も誘ったのか、とかね』と心の中で言葉を続けた。

「七梨には絶対しゃべるなよ。」

 翔子はすかさず釘をさす。ルーアンは無言で頷いた。

「あたしさ、同い年のヤツとこうやって外で遊ぶのって、すっごい久しぶりなんだ。前は・・・・どのくらい前だったかなんて忘れちまったけどさ・・・・」

 翔子は少し遠くを眺めながら、そして、心の奥へ仕舞い込んでいた少し色あせた思い出と相対する。もう少しで自分の夢想と記憶の世界へ想い馳せるところだったが、踏みとどまり、言葉の続き紡いだ。

「本当はどこでも良かったんだけどね。あたしには友達って呼んで良いのは、今はルーアンくらいしか居ないからさ・・・だからさ・・・」

 そこから翔子は少し小声になった。

「七梨も、来ることになってちょっと嬉しかったかもって・・・」

「どうして?」

 ルーアンは少々好奇の眼差しで、翔子の言葉を待った。

「だって、どうせ遊ぶなら、一人よりも二人、二人よりも三人の方が絶対楽しいじゃん」

 屈託の無い良い笑顔で翔子は言った。

「七梨には、ちょっと悪い事しちゃったけどね。あはは」

 と翔子は、はにかんだ笑顔を浮べた。

 ルーアンは自分の短絡的な考えを少々恥じてこう言った。

「貴方、やっぱり良い子ねぇ」

 そして。翔子の頭を優しく抱いた。

「なんだよ? 急に、恥かしいじゃないか」

 翔子は驚きながら、赤い顔で不平の声を上げた。

「だれも見てないんだから、いいでしょ?」

 そう言われて仕舞うと、翔子はいまいち反論の糸口を見失ってしまった。

「・・・・う・・・でも、こういうのも、悪くないかも・・・・」
 
「・・・・ん・・・」

 眠っていた太助から口漏れた声で、翔子はびくっと一瞬体を震わせた。

「あら、たー様が起きちゃうわね。」

 ルーアンはその言葉と共に翔子を解放した。

「なぁ、ルーアン」

「なにかしら?」

「いまのは絶対七梨には、ナイショだからな!」

「はいはい」

「絶対だからな!」

 ムキになる翔子とそれをやんわりと受け止めるルーアン。なんだかそれは仲の良い姉妹か母子(おやこ)のやりとりのようにも見えた。



 11話へ続く




あとがき
 私的事情で、執筆が大幅に遅れました。9話のあとがきで『多分すぐ上がる』などとかいてしまって、楽しみに待っている方がいましたら、大変申し訳無いかぎりでございます。ほんとごめんなさい。
 それにしても、最近太助の影が薄くなってきてるなぁ(困った)ほとんど遊ばれ役(苦笑)何処かで改善を施さねば・・・
 さて次回で『海へいこう? 編』は終了予定です。多分奇想天外なオチは待っていないとおもいます(オイ)所詮は、ふぉうりん ということで(爆)

2001年10月25日  ふぉうりん

今回もロクに見直ししてないし・・・・誤字がこわいなぁ(苦笑)
44 とってもいい感じ よしむら MAIL 2001/10/28 10:09
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ルーアンの毒舌ギャグが一番うけた私(笑)
翔子とのコンビもだいぶ自然になってきましたし。
ルーアン主役のこのシリーズもだいぶ板についてきましたな。
次回は出雲登場編でしょうか…?
45 いいお話ですねえ 空理空論 MAIL URL 2001/11/01 00:54
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今回も楽しませていただいております。
笑いのつかみはバッチリ(遊ばれる太助)
そして、このシリーズならではのルーアンさんの情景(翔子さんとの語り)
いつ見ても、いい作品です。
私的衝撃は、やはり全身オイル作戦でしょうか(笑)
いいです、たー様中心的発想(爆)
次回も頑張ってください。
49 最強コンビですね(笑) グE 2001/11/02 15:51
cc9999
ルーアンと翔子のコンビ、
原作の那奈&翔子よりたちわるいですね(笑)
どこまで行くか、この最強コンビ。(爆)

> 「ぐわー、はなれてくれ〜! 俺が駄目になる〜!」(色んな意味で結構切実)
>  結構本音っぽい少年の叫びが、青い空のしたこだました。
・・・ほんとに駄目にならないよう、とりあえず祈っときます(笑)

あと最後のシーンのルーアンに甘える翔子が印象に残りました。
こういうルーアンさんもいいですね

では
74 ルーちゃん暴走(?)・・・good 須坂稔 2001/11/28 01:21
cc9999
ルーアンの過度の暴走(?)の犠牲者となった太助・・・ご愁傷様です。
やっぱりこの2人は最高のコンビです。
太助が影薄い、不幸、それはいつものこと。(笑)
それじゃあ、また。

追伸:感想の方大変遅れまして申し訳ありません。

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