スレッド No.89


[89] リハビリ作品
投稿者名: ロクト
投稿日時: 2001年3月23日 16時17分
学校なんて、つまらない……


あたしはいつものように授業をサボる事にした。
どうせ、みんなはあたしのこと心配していないんだ。

だって、あたしは不良だから……

授業をサボったあたしは、屋上に行くために教室を離れる事にした。
途中で、話題に花を咲かせているクラスメート達があたしに気づいた途端、距離を置いて通り過ぎたこともあった。
やっぱり、あたしは不良だって、みんなに煙たがれているんだ。
どうしようもなく孤独を感じる。

学年一問題児だと噂されているくらいだし……

こんなあたしなんか友達になりたい奴はいないもんな。
でも…あたしの話を聞いてくれるヒトが欲しいのは我侭なのかな…
そんなことを考えているうちに、何時の間にか屋上に着いてしまった。
あたしは屋上に通じる扉を開いたときは、先客がいたようだった。
けれど、その先客はあたしがいることに気づいていないらしい。

今、授業をやっているはず…

あたしと同じようにサボっているのかな?
そのヒトに近づくたびに、その輪郭がはっきりと分かるようになった。
後ろ髪を紐で縛っている姿は間違い無く……


「七梨!」


思わず、声があがってしまった。
七梨が授業をサボるとは思えなかったから。
あたしの声に気づいたのか、そのヒトが振り返った。
振り返った顔は、やっぱり七梨だった。


「……なんだ?」


無表情というのかな、その声は覇気が感じられない。
まるで機械がしゃべっているような声だった。
あたしは目を逸らして、首を横に振る。


「なんでもない……」


「そうか……」


「………………」


「………………」


「………………………………」


「……どうして、俺がサボっているのかと言いたい表情だな?」


七梨の言葉は図星だった。
サボる事は無く、真面目に授業を受けていたはずの七梨がここにいるのは信じられない。
七梨は“ふっ”と自嘲ともとれるような笑みを浮かべていた。
その瞳は、あたしではなく、雲一つもない蒼い空を見つめているようだった。


「むなしくなってきたからだ」


「それだけ……?」


「……大抵の生徒は両親を含めて家族が待っている」


なんとなく気持ちがわかるような気がする。
七梨もあたしと同じく、家では独りぼっちなんだろうと思う。
七梨は友達がいる、でも……家では独りぼっちという境遇が変わる事はない。


「だけどな…両親も家族もいない家に帰っても、むなしさが実るだけだった。授業を真面目に受けても変わるはずもなかった」


「…………………………」


「それなら、授業をサボったり問題を起こせちゃえばいいと思った」


「……不良になるのか?」


「……そうかもな」


「なんで、あたしなんかに話したんだ?」


「どうしてなのか分からない。1つだけ理由を挙げるとしたら、聞き手が欲しかったかもな…」


「……あたしは不良だと思う?」


「………………」


「そっか………」


「……山野辺は山野辺に決まっている。不良とか優等生とかは関係ない」


不良とか優等生とか関係なく、あたしはあたしか……
あたしも聞き手が欲しいのかな?
聞いてくれるのか分からないけど…


「七梨、あたしの話聞いてくれるか?」


「構わないぞ。俺の話を聞いてくれたお礼だからな…」


七梨は真剣に聞いてくれることが嬉しかった。
だからかもしれない。
あたしは心から吐き出すかのように、全てを話した。


「家での境遇は同じなんだな……親というものは何を考えているのか分かったもんじゃないな」


「やっぱ七梨もそう思うか?」


「息子を放っておいて世界中を旅行する親が他にいるのか!?」


「あたしなんかは、あたしの気持ちを知りもせずに、親から送られてくるものはみんなフリフリものなんだよな〜」


沈んでいた気持ちが、だんだんとハイテンションになっていった。
そういえば…この感じは久しぶりかもしれない。
七梨は親に対して不満があったらしく、愚痴を言ってくる。
あたしも負けずに、言いたい事を言葉に代えてやった。

しばらく語り合っていると、気持ちがすっきりしてきたような気がする。
あたしも聞き手が欲しかったかもしれない。
そんなことを考えていると、七梨はにっこりと微笑んでいた。


「なんだかな…気持ちがすっきりしたな」


「あたしもすっきりしたぜ」


「馬鹿馬鹿しいかもしれないが、太陽に向かって叫んでみるか…」


「それって、いいじゃん」


七梨の意見に、あたしは思わず賛成した。
今までのあたしなら馬鹿馬鹿しいと思っていたかもしれない。

あたしと七梨は太陽に向かって叫んだ。


あれから……あたしは友達ができた。
どこでもいるような友達ではなく、親友という存在に近い友達。
不良だというのに関わらず、共通の話題を見つけて話し合ったりもしていた。

それで、あたしに対する不良というイメージが薄れてきたように感じた。


ちょっとは楽しくなるのだろう…と思う。


(後書き)

久しぶりです。
リハビリとして、月天SSを書きました。
久しぶりに書いただけであって、らしくないです。(特に、七梨太助君)

この世界観はシャオがこの世界にやってこない…つまり、パラレルワールドですね。

男女を越えた友情を書いてみたかったんですが…
文章力不足で、駄目駄目だということを痛感しました。

リハビリ作品ということで、ご了承下さい。

[90] 素晴らしいです
投稿者名: ふぉうりん (ホームページ)
投稿日時: 2001年3月23日 18時24分
面白かったです。
翔子様メインのお話で心踊りました(笑)
彼らの境遇が似ていることには、以前から目をつけてはいましたが・・・
いや〜、上手いっす。
そして、彼らの性別を越えた友情に乾杯。

シャオが居なかったら太助君は今の性格ではなかったかも知れないじゃないですか、だったらそういう太助君もありなのでは?

シャオリンがやって来てない月天の「もしも・・・」の世界って
新たな視野かも知れませんね。

[91] 続編求む
投稿者名: 影山葵
投稿日時: 2001年3月24日 09時33分
 ……翔子殿は私のナンバー2だ。
 太助くんは正確なランク付けはされてないけどかなり好きな部類にはいる(これは最近になってやたらと美形になってきたことと多少関係あるかも知れないが、それはどうでもいい)
 つまり……だから、その……面白いよ、これ。
 クールな太助くんが──やや自虐的だが──好きだ。翔子殿と太助くんの立場が逆かなって気もするけど、これはこれでイイ感じだな。

 ……というわけで、続編マジに求む。
 無責任だけどな(苦笑)

 

[92] いいお話ですね
投稿者名: 空理空論 (ホームページ)
投稿日時: 2001年3月24日 21時26分
寂しげな二人の気持ちがちょっぴりと伝わってくる・・・
そんな切ないような作品ですね。
翔子さんは似たような境遇の誰かに、
太助君はこれまた似たような境遇の誰かに、
自分のことを話し、聞いてもらいたかったんでしょうね。

この屋上でのやりとりによって、
二人はプラス的な方向にだいぶ自分を近づけたことでしょう。
まったく同じではないけど似てる二人。
独りで悩むだけ、にならなくて良かったと思います。

で、ただ一つだけつっこむとすれば・・・
後ろ髪をしばるのってシャオのプレゼントから、ですよね?
(なんてことは気にしちゃあいけないんだろうか<汗)

[93] Re: リハビリ作品
投稿者名: グE
投稿日時: 2001年3月25日 00時54分
太助君がやけにクールな感じがするけど、GOODでした。
この二人、いったいどうなっていくんでしょうか…。
楽しみです。

[94] 多謝!
投稿者名: ロクト
投稿日時: 2001年3月26日 09時26分
感想、どうもありがとうございます。

リハビリ作品なので、キャラが上手く書けなかった感じがありました。
でも、まぁまぁですね……

山野辺翔子を三精霊の主にするために、連載を構想中。
クールな太助君を書くためでもあります。
もちろん、リハビリ作品をもとにした連載ですが……

実は、その作品は物語の序章に過ぎなかったんですよ。
でも、リハビリ作品ですから、読みきりにした訳です。はい…


空理さん>
>後ろ髪をしばるのってシャオのプレゼントから、ですよね?
シャオが来る前でも、太助君はちゃんと紐(輪ゴム?)で後ろ髪を縛っていましたよ。
それに、シャオがプレゼントしたのは、銀色のリボンですから。

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