153 | Reply | パラレルワールド日記 扇と煙は使いよう編 | 車掌 | 2002/07/02 10:19 | ||
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「ここは・・・東京みたいだな。」 「うむ」 二人は高層ビルの屋上にいた。ちょうど夜、幻想的なネオンの明かりが眩しい。しばし、紀柳と翔子は景色を眺めていた。が、その時、 「おい!!そこで何をしている!!」 「怪しい人物二人発見!!至急応援頼む!」 若い男たちの大声に驚いて二人は振り返った。見ると制服を着た方々がいらっしゃる。ガードマン?いやいやお巡りさんだ。この状況は間違いなく不法侵入者と思われている。 「紀柳、逃げ・・・」 ようとした時にはもう遅い。二人はあっという間に捕まってしまった。 「何ィ、侵入者だと?」 二人が連れてこられたのは、ビルの一室。入り口に「世界の秘宝展」と書いてあり、数多くの宝石や装飾品が飾ってある。 「翔子殿、あれは・・・」 「何、紀柳・・・ええ!?」 中央のガラスケースには見覚えのある八角形の輪っか置いてある。間違いない、支天輪だ。 「この世界にも支天輪があるのか・・・。」 しかし、この物々しい警備体制はなんだろう。見ただけで警官が20人はいる。紀柳たちを捕まえた警官が、トレンチコートに帽子を被った50代くらいの男に報告をしている。 「はっ、奴の一味ではないかと・・・」 トレンチコートは紀柳たちを見ると、警官を怒鳴りつけた。 「バッカモン!!いくらなんでもこんな中学生位の子供を奴が仲間にすると思うか。」 そう言うとトレンチコートは紀柳たちに話しかけた。 「部下が勘違いをした事は謝る。だが、君たちゃ屋上で何をやっていたのかね。」 「ええっと、あたしたちはその、うん、あの、夜景が見たくなってね、それで・・・」 「それで?夜景がみたくてこの警備を突破してきたというのかね?」 「ええっと・・・」 「警部!!」 別の警官が走ってきた。 「来ました、奴が来ました!!現在三階まで突破しています!」 「何ぃ!今回は正面から来たのか!半分はそっちに向かわせろ!」 トレンチコート=警部とやらは大声で指示を出した。 好奇心の固まり、翔子はすぐに尋ねた。 「ネエネエ警部さん、奴って誰?何でこんなにお巡りさんが居るの?」 警部は少しキョトンとして聞き返した。 「本当に何も知らんのか。今朝の全新聞に予告状が載っていただろう。」 「予告状?」 「そうだ、近頃の子供は新聞も読まんのか。」 警部はどこから出したか一枚の新聞を見せた。全面広告の欄に簡素な文章が大きく書いてある。 『予告状 今夜11時、中国の幻の秘宝、支天輪を頂く。 てな訳で首を洗って待ってなよ、とっつぁん。 Lupin the 3rd』 「ルピン・ザ・サード・・・?」 「ルパン三世だ!名前くらいは知っているだろう。かの大怪盗アルセーヌルパンの孫だ。」 アルセーヌルパンって本当にいたのか。しかも孫までいるとは・・・。翔子は本で見たアルセーヌルパンの外見を思い浮かべた。スラリとした長身、端整な顔にタキシード、マントを羽織り、帽子とモノクローム、そして紳士の代表とでも言うべき態度、こんな感じだった気がする。三世とやらもそうなのだろうか。 「奴は狙った獲物は必ず奪う。警官が100人でも足りん。」 「いやいやとっつぁん、そんな誉められると照れるじゃん。」 「だれも誉めとら・・・」 警部は後ろを振り向いた。後ろに立っていたのは赤いジャケットを着た短髪の男・・・。 「ルパン!!」 警部が叫ぶ。 「え、これが・・・?」 翔子は以外な顔で男を見る。・・・どう見ても軽そ〜な普通のおっさんだ。 「フ〜ン、今日はカワイイ子二人も連れちゃってえ、いつっからロリコンに走ったんだよ。」 「やかましい!お前ぇこそ今日は随分地味な登場の仕方じゃねえか。そろそろネタがつきてきたんじゃねえのか。」 「だあってえ、こんなのにワザワザ頭使う必要無ェんだもん。」 ルパンは手を上げて見せた。その手には、中央にあった筈の支天輪があった。 「なっ、貴様いつの間に・・・」 「とっつぁんがその子らと楽しくお喋りしている間に。のっほっほ。」 そう言うとルパンは出口に向かって走り出した。 「まっ、まてえ〜い、ルパ〜ン!!」 警部が追いかける。つられて翔子たちも後を追いかけた。その時、紀柳が口を開けた。 「とっつぁん殿。」 「俺の名前は銭形だ!!」 「銭形殿、要するにあのルパン殿とやらは盗人で、あなたは彼を追っている訳だな。」 「紀柳・・・今更何いってんの。みりゃわかるだろ。」 翔子が走りながらツッコミをいれる。 「うむ、それなら協力を・・・。」 「ヤル気か?」 「うむ」 銭形は二人が何を言っているのか良くわからなかった。 「協力?何をする気だ?」 紀柳は短天扇を開き、ルパンの後ろ姿に向けた。 「万象大乱!!」 銭形は自らの目を疑った。目の前のを走ってるルパンが小さくなってきたのである。小さく?いやいや、そんな筈は無い。きっと小さく見えるくらい遠くを走っているという事だ。うん。 しかし、誰よりも驚いているのはルパン本人だった。 「あら、ら、ら、ら、ら?何か周りがでかく見える気が・・・。」 「銭形殿、今だ捕まえろ!」 紀柳の声にハッとした銭形は、やっと目の前の出来事を認めた。とにかく捕まえよう。ビルを出た所で銭形はルパンに飛びかかった。 「ルパ〜ン、逮捕だぁ〜!!」 が、ルパンは寸前、横のマンホールの穴に飛び込んだ。普通の人間のサイズではついていけない。 「くそう、また逃がしたか。」 「でも支天輪は無事だったじゃん。」 翔子が声をかけた。7cm位に縮んだルパンは、当然支天輪を支えきれなくなり、落としていったのだ。 「うむ、それにあのサイズになれば、もう悪さはしまい。」 「そうそう。」 「甘い!!!!」 銭形は怒鳴った。 「ヤツァあの程度で諦めるような奴じゃない!!必ずまた支天輪を盗みに来る!!」 「つったって・・・ああなっちゃえばもう・・・」 「奴はあの程度の危機は何度も直面してきたんだ!絶対に安心はできん!」 「・・・で、命からがら逃げてきたって訳か。」 「大変だったんだぜ。ネズミに食われそうになったりして。」 ここはルパンのアジトの一つ。ルパンは相棒の次元大介に一部始終を聞かせていた。 「しかしまた妙な術にかかったもんだな。何者なんだ、そのお嬢ちゃんたち。」 「わっかんねえ。五右ェ門みたいな喋り方してた娘がこう、羽根扇子みたいの構えてよ、『バンショウナントカ〜』って叫んだ瞬間このザマよ。とっつぁんの相棒にゃもったいねえな。」 「しかしお前ェ、なんだってあの支天輪とやらを盗もうと思ったんだ。その娘っ子の事は予想外だが、あの程度の簡単な仕事、いつものお前だったら見向きだってしねえだろ。『俺は不可能に挑戦する事にロマンを感じる』っていつも言ってたじゃねえか。」 「そりゃあモチロン不二子ちゃんが・・・アゥ。」 ルパンは慌てて口を押さえた。次元が溜め息をつく。 「また不二子か・・・。」 「ま、まあまあ・・・、とにかくこのルパン様をここまでコケにしてくれたんだ。こうなりゃ何としてでもあの支天輪、頂く!」 次の日の夜私達は、またあのビルに来ていた。銭形殿の言った通り、ルパン殿から予告状が来たのだ。改めて支天輪を盗むと。主催者側は展示期間中支天輪を動かすことはできないと言っている。 ちなみに昨夜は銭形殿の家に泊めて貰った。なぜ私達が屋上にいたか、なぜルパン殿が縮んだかなどは、もう頭に入っていないようだ。なにしろ寝言でまで、「ルパンは必ず又来る!」と叫んでいたのだから。お陰で私は眠い。 「ルパンは必ず来る!警戒を怠るな!」 銭形殿は部下に何度も注意を呼びかけていた。 しかし、しつこいようだがああなればルパン殿も・・・。 「警部!来ました。昨日と同じく正面からです!」 なんと。本当に来るとは。しかも今度も正面から。大した根性だ。 「ただし、今度は仲間の次元大介です!」 「仲間?仲間もいるのか?」 翔子殿が聞き返す。ふん、仲間に代理を頼んだのか。情けない。 銭形殿が指示を出す。 「迎え撃て!」 「もう来てたりして」 突如聞こえたハスキーボイスに後ろを向く。何だか昨日と同じパターンではないか。 黒いスーツに帽子を被った髭の男が立っていた。彼が次元殿か。 「ふん、貴様だけか?ルパンはどうした。」 「ここにいるよ、とっつぁん。」 次元殿の帽子の下からルパン殿が出てきた。 「よう、やっぱ昨日の嬢ちゃんたちも一緒か。」 「家でおとなしくしていれば良いものを。では、こんどは貴方の御仲間も小さくして差し上げよう。」 私は短天扇を開いた。 「できるかな?次元!」 ルパン殿の合図で、次元殿が何かを床に叩きつける。瞬間、煙が室内に広がった。煙玉とは古風な手を・・・しかし・・・。私は目を凝らした。凄まじい、白い煙の間に浮かぶ影・・・。 「万象大乱!!」 手応え有り。どんどん小さくなる影。やはり私の敵ではなかったな・・・。 「紀柳・・・紀柳!!」 聞き慣れた声にハッとする。煙がだんだんうすくなってきて、足元の小さい御仁が姿を現す・・・。 「翔子殿!?」 何たる不覚。翔子殿に万象大乱をかけてしまった。 「のっほっほ、こんな煙んなかで無理すっからだよ。」 何処からかルパン殿の声が聞こえる。くそう、確かに・・・なんてお約束な・・・。 「き〜りゅ〜う〜。」 「す、済まない翔子殿。今、元に戻す。万象大乱!!」 「いか〜〜ん!」 後ろから銭形殿が叫ぶ。「いかん」って、もうかけてしまったけど。 翔子殿が元の大きさに戻る。別に何とも無いではないか。・・・あれ?翔子殿ってあんなに背が高かっただろうか・・・いっ!?翔子殿にヒビが!?脱皮か!? 「ルパン殿!?」 翔子殿の中からルパン殿が出てきた・・・。 「悪いなぁ、紀柳ちゃん。わっざわざ元に戻してくれてありがと〜。」 「だからいかんと言ったんだ!変装はルパンの十八番なんだよ!」 銭形殿が叫ぶ。 「しかし声が、別の所から・・・」 「腹話術だよ!別の所から聞こえた気がしただけだ!」 なるほど、はっきり方向が掴めなかったのはその為か・・・しかし、 「しかし、ならばまた小さくするのみ!万・・・」 「何度も同じ手に引っ掛かっかよっ。」 また煙が舞う。そっちこそ何度も同じ手を・・・。 「アイタッ。」 誰かが私にぶつかった。イタイではないか。ムッ、また煙が薄くなってきたぞ。 「よし、今度こそ・・・。」 しかし、ルパン殿達はすでに出口に立っていた。手には支天輪を持って。 「今度こそこいつは頂いていくぜ。」 「まてっ。万象大乱!!」 今度こそ私は万象大乱を放った。白地に赤の短天扇で・・・!? 「のっほっほ、さっきはぶつかって悪かったなぁ。どう?その日の丸扇子。」 ・・・ルパン殿が笑っている。さっきぶつかった時にすりかえたというのか!?何という早業・・・。 「じゃ、そーろそろ眠くなってきたんで帰るとするわっ。」 「待てえい、ルパン!支天輪を置いていけ!」 「うっるせえなぁとっつぁん。そんなに返してほしけりゃ・・・ほれっ。」 ルパン殿が支天輪をこちらに投げる。盗みに来たのになぜ・・・なっ、支天輪が急に部屋一杯に膨らみ始めた!? 「のっほほ、紀柳ちゃんは物の大きさ変えんのが好きみたいだからね。んじゃっ、あ〜ばよ。」 ルパン殿達が去って行く。 「まっまて・・・。」 私達も追おうとするが、支天輪風船が邪魔だ・・・。 バンッッ!!!! 大音量と共に風船が割れた。その後に残っていたのは短天扇とさるぐつわをはめられた7cmの翔子殿だった。なるほど、こちらが私が小さくした本物の翔子殿か・・・。 次の日、あたしたちが起きると、銭さんはもういなかった。テーブルの上の置き手紙によると、今度は万里の長城を盗むという予告状が来たらしい。早速ルパン逮捕の為、中国に向かうとの事。忙しい人達だ。しかし、万里の長城・・・どうやって盗む気だ? あたしたちは鍵を郵便受けに入れて銭さんのアパートを出た。・・・出たら、そこはいつもの空間だった。 「結局あの世界は何だったんだ?そういや、結局銭さんにちゃんと自己紹介しなかったし、銭さんもよく素性の知れない奴を泊めてくれたな。」 「銭形殿はルパン殿を捕まえる事しか頭に無いのだろう。しかし、私は色々学んだぞ。主殿の新しい試練を思いついた。」 「まさか煙玉か・・・?」 「いいや、シャオ殿に変装して主殿をおびき寄せ、不意打ちを放つ。」 「・・・・・・」 「どうした翔子殿?」 「シャオに変装って・・・誰が?」 「もちろん私だ。」 「・・・・・・」 エピローグ 「ルパ〜ン、居る〜?」 「不〜二子〜、ど〜したんだ〜い。」 「はんっ、また不二子か。いい加減にしろよ。」 「じげ〜ん、そう言うなって。」 「何しに来たんだ、全く。」 「随分ね、次元。ねえ〜んルパ〜ン、今度の計画、私もい・れ・て。」 「いいとも〜、歓迎するぜ。ところで、この前のプレゼントは気に入ってくれたか?」 「ああ、支天輪?落としちゃったわ、あれ。」 「お、お、落とした〜?」 「だって〜、伝説によると、心の清い者が覗けば守護精霊が出てくる、って話だったのに、そんなもの出てこないんだもの。」 「ルパン・・・だから俺は言ったんだ。散々手間かけてその結果がこれかよ。」 「ま、まあまあ次元、落ち着け。」 「はっ、大体伝説が本物でも、不二子が覗いて出てくる訳ねえだろ。」 「ちょっと!それどういう意味よ。」 「一体何処で落としたんだ。」 「中国に行ったとき。あ〜あ、せめて誰かに高く売れば良かった。」 「ルパン!俺は今度の計画降りるぞ!じゃあな!」 「お、おーい、じげ〜ん。まてったらー」 中国 「おお、これは何と言うのかね。」 「さすがは七梨さん、お目が高い。画家をやってるだけは有るね。これは支天輪といって、幻の精霊器ですよ。この前拾った・・・いや特別に仕入れて来た究極の一品ね。」 完 |
154 | Reply | 楽しませてもらいました | 空理空論 | URL | 2002/07/04 23:40 | |
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翔子やキリュウ達と、ルパン達、そしてとっつあん殿(笑)とのやりとり。 とってもテンポよく♪非常に面白かったです。 上手いです、すっごく。こいつあやられたってな感じで。 しかも最後につながっている具合がなんとも。 ナイスな部分は、やっぱり対決シーンですかねえ。 お約束どおりの、風船がふくらんでバーン!とか、 変装とか腹話術とか、色んな部分で楽しみました、本当に。 うーん、よいねえ〜。 |
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