100 Reply パラレルワールド日記 雛菊編 その3 ふぉうりん MAIL URL 2002/01/22 22:59
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『パラレルワールド日記 雛菊編 その3』

その日の夕刻、剣の留守中に石川夢幻斎対策課にそれが届いた。



明後日、猪の刻『幸せを呼ぶ銀鐘(ぎんしょう)』を頂きに参上し候



「へぇ、これが石川夢幻際の『予告状』ってやつか。」

 開口一番、翔子はそれを眺めながら興味深々に言った。

「よしっ、こんどこそ夢幻斎を掴まえるわよっ!」

「あらあら、いつになくやる気満々ね雛菊。」

「雛菊殿。」

「なに、紀柳さん?」

「今回の石川夢幻斎捕縛、私も是非手伝わせて貰いたいのだが・・・。」

「え?」

「一宿一飯の礼という訳ではないが、伝説の義賊とやらに挑戦してみたくなってな。」

 紀柳は不敵に笑った。

「で、でも、夢幻斎ってとても凄いのよ。」

「ならば尚の事、手合わせ願いたいものだ。試練の閃きに繋がるやも知れないからな。」

「いいんじゃないの? 折角手伝ってくれるって言うんだから。」

「・・・・えっ。お姉ちゃんまで・・・。」

「心配めさるな。私とて一応体裁きには自信がある。足手まといになるつもりは無い。」

「あら、えらい自信ね。それじゃあ、あなたの自信のある体裁きとやらを私に見せてくれないかしら?」

「別に構わぬが。」

「じゃ、行きましょう。」

 唖然としている雛菊を余所に、椿は紀柳を連れて勝手口から出て行った。

「わっ、私、剣お兄ちゃんを探してくる。」

 いつもとは違った事態の流れに、小梅は慌てるかの如く、この場に居ない剣を探しに飛び出して行った。

「・・・・。」

 翔子はなんとなく、その場にとリのこされてしまった。

 なんだかなぁ・・・・。

「なぁ、雛菊いいのか?」

「なにが?」

「いや、ほらっ。紀柳が手伝うって言ってるけどさ・・・」

「うーん。いいんじゃないかなぁ? お姉ちゃんもああ言ってることだし・・・・。」

「ほんとに? 平気なのか?」

 と、少し押しを強めて翔子は雛菊に問う。雛菊はすこし複雑そうな面持ちで

「そんなこと・・・そんなことない。・・・・・大丈夫。」

「そうかい? なら、あたしの思い過ごしかね」<確信犯

 翔子は肩を竦めて、片目を軽く瞑った。

「そうだ。あたしは小梅ちゃん達を捜しに行くよ。」

 あたしが茶化しちゃ、ゆっくり考えられないだろうからね。と翔子は内心思い、対策課から出て行った。

「はぁ〜。」

 と雛菊は深いため息をついた。

「私、なにしてんだろ?」

 と一人むなしく呟いた。





「へぇ。言うだけの事はあるわねぇ」

 椿は感心気味に言った。

「いや、それほどでもない。」

 すこし、照れ気味に紀柳は軽く頭をかいた。

「まだ、余裕そうね。その余裕の秘密はなにかしら?」

「それはまだ言えないな。切り札はそうそう人に見せびらかすものではないからな。」

「ま、それもそうね。」

 特に追求するそぶりもみせず、納得する椿。

「紀柳さん。あなたが十分手に力になる事は分かったわ。でも・・・」

「でも?」

「あの子はなんていうかしらね?」

「雛菊殿か・・・。」

「私は、彼らの間に入いるのはやはりまずいかな?」

「どうかしら・・・私は知らないわ。」

「無責任だな。」

「そうかもね。」

 悪びれる様子もなく椿は答えた。紀柳はそんな椿にやれやれと肩を竦めた。



 翔子は道に迷うことなく路地を歩いていた。なぜなら小梅に一通りこに近辺は案内されていたのからだ。しかし捜すには手がかりがあまりにも少ない、しょうがないので、適当に直感にたよって捜すことにした。とはいえ探すのha対策課をに抜け出す口実に過ぎなかったのでそれほど一生懸命に探していたわけでは無かったのだが。

 少し入り組んだ路地に入ると、聞き覚えのある声が風のってわずかに聞こえてきたような気がした。

「・・・・んが手伝うって・・・」

「・・・へぇ。・・・また・・・・なりそうだな。」

 翔子はその声のする方へ徐々に近づいていく、翔子はなんとなく直感で近づくにつれ、足音と気配を殺していった。



「ねぇ。剣お兄ちゃん、真面目に聞いてるの?」

 怒気をわずかに孕んだ小梅の声が聞こえてきた。

「いまさら一人や二人増えたって、かわりゃしねぇよ。」

 聞き覚えのある声だが、随分と口調が違う。一体誰だ?

「剣ちゃん。油断しちゃいけないわよ。なんだかあの子ただ者じゃない感じがするわ。」

 翔子の知らない女の声も混じっていた。一体小梅は誰と話しているのだろう? 翔子の疑問はおおきくなるばかりだ。

「長年の感ってやつか? 簓(ささら)」

「ひとを年寄りみたくいわないでちょうだい。」

「実際かなりの年寄りだろ?」

「剣お兄ちゃん。女の人に歳の話はあんまりしちゃいけないんだよ。」

「あら良く分かってるじゃない。」

「へいへい。以後気を付けますよ。」

 翔子は路地の影から、彼らの様子を覗き見る。なんと猫がしゃべっているではないか、これは驚きだ。

「でも、本当に大丈夫なの?」

「そうよ。用心に越したことはないわ。あんたは夢幻斎であると同時に石川家の看板も背負ってるんだからね。」

「剣が夢幻斎!?」

 翔子は声を殺して驚いた。猫がしゃべる事よりも驚きだった。

 さてこれからどうするか・・・・その前にこの場から去ろうと思い、踵(きびす)をかえした。

パキッ

 しまった。

 足元に落ちていた小枝を踏んでしまったのだ。

「誰だ!?」

 観念して路地裏から姿をあらわす。

「翔子おねえちゃん?」

「翔子さん。」

「貴方は、確か・・・・。」

「わりぃな、本当は盗み聞きする気はなかったんだ。でもな、剣。これはあたしが首を突っ込んで良い問題じゃないのは分かってる。」

「なら、今の事は忘れてちょうだい。」

 簓がキツイ声音で翔子を律した。 

「あ〜ん?」

 翔子は柄の悪い返事をした。まるでどこかのちんぴらのようだ。

「五月蝿い。あたしに最後まで喋らせろ!」

「気ぃ強えなぁ、翔子さん。」

「貴方には関係の無いことなのよ!」

 簓も食い下がらない。

「いちいち五月蝿い。関係なからろうがなんだろうが、言いたいことは言わせてもらうよ。」

 と翔子は簓に啖呵(たんか)を切った。

「剣。あんた分かてって、やってるんだろうな?」

「何をだい?」

「あんたのやっている事が雛菊の心を潰していっているって事をだよ。」

「・・・・・。」

 小梅は両者の様子を伺いながらおろおろしている。

「なにか考えがあってやっていることなんだろう?」

「ああ。」

 剣は、はぐらかさずに真剣に答えた。 

「そうか。ならいい。」

 急に翔子の表情が緩んだ。

「翔子さん。」

「なんだよ。」

「このことは雛菊さんには黙っててもらえないか?」

「あたしは理由と目的がキチンとあるやつのやってることの邪魔をするつもりはないよ。たださ、あんまり雛菊を困らせるんじゃないぞ。」

「ああ。わかったよ。翔子さん。」

「悩んでるあいつを見てると、解りたくても解れない悩みを抱えたあたしの友達を思い出すんだよ。そんな辛い想いをする姿なんて、たとえ、誰であっても見たくないだ。」




 やってきました予告の晩

「本当にいいのか?」

「え?」

「私が夢幻斎捕縛に参加することについてだ。」

「べつに・・・なにをいまさら。」

「いや、貴方があまり快く思っていないような気がしたのでな。」

「そんなこと・・・・そんなことないわよ。」

「そうか・・・。なら良いが。」

「私は夢幻斎と手合わせがしたいだけだ。なので私は屋敷の外で待たせてもらうとしよう。」

 言うが早いとばかりに紀柳は、塀に飛び移り屋根から屋根へと渡りあっという間にこの屋敷の一番高い所へと飛び移っていった。

「すっ、凄い。」

 雛菊は絶句していた。

 紀柳は屋根から、夢幻斎の目的の「銀鐘」が警備されている部屋から煙りが上がったの確認した。

「・・・来たか。さて、そろそろ行くとするか。」


 続く


あとがき
以前は去年の夏ですか? これの『その2』を発表したのは。あらすじだけなら、とっくの昔から決まってたんですけどねぇ。ホント駄目野郎ですね。私は
いよいよ佳境に入ってきました、『パラレルワールド日記雛菊編』上手くまとまれば次回で最終回です。続きはいつ書くかは未定なんですけどね(オイ)

では今回はこれにて〜

2002年1月22日 ふぉうりん
102 Reply Re:パラレルワールド日記 雛菊編 その3 グE MAIL 2002/01/27 12:29
cc9999
雛菊、複雑な思いを抱えていますね….
キリュウは次回、夢幻斎を捕らえるのでしょうか。
どうなるか楽しみにさせていただきます。

>あらすじだけなら、とっくの昔から決まってたんですけどねぇ。
>ホント駄目野郎ですね。私は
自分もありまくりです。
というかとりあえずKINONの最終話かけよ…俺(滝汗)
110 Reply どうなるのだろう 空理空論 MAIL URL 2002/02/18 22:55
cc9999
紀柳と夢幻斎の注目の対決も楽しみではありますが、
雛菊の心の辺りとか、どうまとまるのか非常に気になるところです。
それにしても翔子さんのちんぴら場面(爆)
はなんか楽しかったです。
でもって、ささらとええ勝負ってな辺りが(笑)
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