[115] パラレルワールド日記 雛菊編 その1
投稿者名: ふぉうりん (ホームページ)
投稿日時: 2001年4月3日 00時16分
紀柳「翔子殿、ここはどこかなぁ?」 翔子「こう、暗くっちゃ何処だかわかんないな。でも時代は江戸時代っぽいぞ」 翔子は自分の着てる物の袖を掴みながら言った。しかし、紀柳の服装はいつものツナギ型(?)の服とそう大差が無かった。
ピー
遠くから、笛の音が聞こえて来た。 翔子「あの笛の音・・・捕り物か? 今回の事件っぽい臭いがするな。面白そうだから、行ってみようぜ紀柳」 言うが早い駆け出す翔子。 紀柳「翔子殿、そんなに急ぐな。」 慌てて紀柳もその後を追い駆ける。
ここは、一本桜花町、浮世を騒がす伝説の大泥棒、石川夢幻斎が姿を現す町。今夜も大捕り物で大騒ぎ。屋根の上、駈ける人影二つあり
雛菊「待ちなさい! 夢幻斎!!」 追うは如月家の十三代目、名を如月雛菊、齢16歳の鉄火娘。 夢幻斎「待てと言われて、待つ馬鹿居ない。それ 鬼さんこちら手の鳴る方へ♪」 追われるこちらは、伝説の大泥棒 石川夢幻斎の十三代目。余裕しゃくしゃくである。 雛菊「むか〜、馬鹿にしてぇ〜(怒)今日こそ捕まえてやる! じっちゃんの名にかけて・・・じゃなくって、如月家の名にかけて」 夢幻斎は屋根から塀へ、塀から路地へ降り立った。その脚力、その運動神経たるや最早、常人のものではない。 雛菊「う、嘘でしょう?」 夢幻斎「どうした。如月の十三代目、今日はもう追ってこないのか?」 余裕に満ちた、夢幻斎の声が雛菊の闘志に火をつける。 雛菊「このくらい、あたしだって」
同刻
翔子「オイ、紀柳あっちに何か行ったぞ、追いつきそうだな」 紀柳「うむ、そうだな。今回はわりと簡単に試練のヒントが見つかるやも知れん」 二人は、闇夜を舞う二つの影を追って、路地裏に姿を消した。
雛菊も負けじと改造十手の鎖を軒に引っ掛けて、振り子の原理で飛び降りる。こちらも十分人間離れしていた。
パチパチパチ
飛び降りた雛菊に拍手が送られた。拍手の主は勿論石川夢幻斎である 夢幻斎「あんた、なかなかやるねぇ」 月明かりを背にし、顔は見る事は出来なかったが、不敵そうに笑っているのは容易想像できた。雛菊は心底腹が立った。 雛菊「ちょっとアンタ!」 ぴしぃっと夢幻斎を指差す雛菊。丁度その時路地に入った翔子と紀柳が、
ドカッ!
翔子・紀柳「どわー!!」 雛菊「きゃー!」 三つの影が狭い路地で重なり合う。 夢幻斎「今日は、どうたやら邪魔が入ったみたいだな、じゃあな十三代目」 夢幻斎は桜吹雪を残し、一陣の風の如く去っていった。 雛菊「きぃ〜、悔しい!」 翔子と紀柳の下敷きになりながら、バンバンと地面と叩く雛菊だった。
翔子「オイ、大丈夫か? 紀柳」 紀柳「ああ、私なら平気だが・・・大変だ。翔子殿、我々の下に人が」 翔子「オイ、あんた、大丈夫か?」 雛菊「あなた達、人の心配するなら、早く退いてちょうだい」 翔子「あ、わりぃな」 紀柳「す、すまん」 雛菊の上から、退く二人に対して、雛菊は。 雛菊「もう少しで、夢幻斎を捕まえられることが出来たかも知れなかったのに・・・」 紀柳「事情は知らぬが、それはすまない事をした」 翔子「本当にそうだったのか? 一瞬チラッとしか見てなかったけど、とてもそういう風には見えなかったぜ」 ギクッ、雛菊は痛い所を突かれた。 雛菊「それはきっと気のせいよ」 雛菊の声は少しうわずっていが、翔子はそれを聞き逃さなかったさなった。そして、翔子の天性の「なんか面白そうセンサー」が反応を示していた。
雛菊「あなた達、何者なの?」 翔子「あたし達は旅の者だよ。ついさっきこの町に来たんだ。あたしは山野辺翔子で、こっちが」 翔子は紀柳に紹介を促した。急に振られた紀柳は 紀柳「・・・紀柳だ」 少し俯き加減でボソボソと言うのが限界だった。 雛菊「私は捕り方、如月雛菊。石川夢幻斎を追いかけているの」 翔子「石川夢幻斎ってさっきの奴かい?」 雛菊「そうよ。伝説の大泥棒、石川夢幻斎。富める者よりその財せしめては、貧しき者に分け与えた伝説の義賊。時代を越えて現れる、酔狂な盗人。子から子へと何代にも渡って受け継がれる、その二つ名」 石川夢幻斎について語る雛菊は何処か熱っぽく、意気盛んだった。 翔子「伝説か・・・よっぽど凄いんだな、その夢幻斎って奴は」 雛菊「そうよ。凄いのよ。さっきだってあっという間に・・・・あっ」 そう、雛菊は今まで自分は何をしていたのか思い出した。今回も取り逃がしたのだ。呑気に夢幻斎の事を語っている場合ではなかった。
ここは、石川夢幻斎対策課 雛菊は帰り道の道すがら、翔子は今夜の宿を探していると告げた。それならお姉ちゃんに頼んでみようか? と雛菊に連れられて対策課へ来たのである。 椿 「いいわよ。今日はもう遅いしこの時間に宿なんて、そうそう見つからないでしょうし。雛菊と知り合ったのも何かの縁だろうし」 そう言ったのは、この石川夢幻斎対策課の課長こと雛菊の姉、如月 椿(きさらぎ つばき 23歳「大人」という言葉が似つかわしい美人である)であった。 翔子「本当か? そいつは助かる。な? 紀柳」 紀柳「ああ、そうだな。椿殿恩に着る」 小梅「じゃあ今日は、お姉ちゃん達ウチにお泊りするんだね」 急な来客に嬉しそうな声を上げたのは、如月小梅(きさらぎ こうめ)如月姉妹の末っ子だ。 紀柳「小梅殿、今日は世話になるぞ」 そう言って、小梅の頭を撫でる紀柳。と、そこへ。 剣 「ただいま。戻りました〜」 と場に似つかわしくない緊張感のかけらもない声で、年のころは雛菊とそう変わらない一人の青年が入ってきた。 雛菊「剣・・・今日も現場に来なかったわね。今日は何があったのかしら?」 口元を微妙に引きつらせながら、何処か険のある雛菊の声。それでもにこやかに答える剣。 剣 「今日はですね。二丁目の・・・」 剣の言葉半分で反応する雛菊 雛菊「二丁目!? 今日の現場と正反対じゃないの!?・・・・もういいわよ」 なにか他に言いだげな雛菊だったが、これはいつもの事らしく、なんだか諦めたように、ため息を一つ吐く。 剣 「あれ? こちらの方は?」 小梅「うんとね。翔子お姉ちゃんに紀柳お姉ちゃん。旅をしてるんだって」 翔子「あたしの名前は 山野辺翔子 よろしくな。で、こっちが」 紀柳「・・・・紀柳だ。よろしく」 剣 「僕は、石川夢幻斎対策課の掃除係兼雑用の石川 剣(いしかわ つるぎ)と言います。どうぞよろしく」 椿達4人は、剣と雛菊を置いて如月家に向かった。それはなぜかと言うと・・・ 剣 「お客さんが居るんでしょう? だったら早く帰るべきですよ。小梅ちゃんも居る事だしあんまり遅くなるのは良くないでしょう? 今回の報告書は僕が書いておきますから」 雛菊「現場に居なかったあんた一人に書けるわけないでしょう!」 剣 「あはははー。言われてみればそうですね。じゃあ、状況を教えてください」 雛菊「しょうがないわね。一回しか言わないからよく聞きなさいよ・・・・」 というような、感じである。
小梅は歩きながら舟をこいでいたので椿に背負われ、今は気持ちよさそうに寝息を立てている。 紀柳「随分と気持ちが良さそうだな。小梅殿は」 翔子「このくらいの歳の子にこの時間はやっぱり辛いんじゃないか?」 時刻は子(ね)の刻(午前1時頃)に差し掛かろうとしている。 椿 「そうね。いつもならもっと早く家に帰ってるから」 紀柳「・・・そうか。ところで椿殿、尋ねても良いかな?」 椿「なにかしら?」 紀柳「夢幻斎とは何者だ? 先ほど(対策課へ行くまで)雛菊殿聞いたら妙に怒っていたからな、少々気になってな」 翔子「そうそう、それあたしも少し気になってたんだ。夢幻斎って何代も続いたる大泥棒なんだろ?」 椿 「そうよ。石川夢幻斎を追いかけるのが我が如月家の使命。でもね、雛菊が今の夢幻斎を意識しているのは別の所にあるのよ」 翔子「別の所?」 椿 「夢幻斎が再び現れたのは、わりと最近でね。それまでは暇だったんだけど・・・亡くなった私達の母さんが、夜な夜な雛菊に昔話の様に語ったのよ、伝説の大泥棒 石川夢幻斎・・・・再び夢幻斎が現れるのを待ちわびる雛菊・・・・まるで想い人を待ちわびる少女の様にってね」 翔子「まるで、王子様とお姫様だな」 やや呆れ気味に呟く、翔子。 椿 「案外そうかもよ。うふふ」 面白がっているとしか思えない椿は、雛菊がその場に居ない事を良い事に好き放題言っている。なんだか雛菊も大変なんだな。と同情の念にかられる翔子。話を切り出したはずの紀柳だけが今一つ話題に乗り遅れていた。 その外、他愛もない話をしているうちに彼女達四人は如月家に到着した。
続く
ども、ふぉうりんです。 遥か昔に「書きます」とかほざいておいて 今更、中途半端に出来あがった「雛菊編」です。 ちゃんと続きますから(多分)←オイ では |
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