[95] My Place
投稿者名: 西本香哉 (ホームページ)
投稿日時: 2001年3月29日 02時46分
今日は鶴ヶ丘中学校の卒業式の日。今年卒業するのはあたしの最初の教え子達。つまりはたー様とかシャオリンとかってこと。 一応あたしにとっては2回目の卒業式になるわけだけど、どうして校長とかの話は長いのかしら。はっきり言わせてもらうけど眠くなりそうよ。ま、あたしは大人だから眠ることはなかったけどね。 で、生徒たちはどうしているかというと、泣いている人はほとんどいないわね。 結局特に問題もなく卒業式は終わり、生徒達はみんな帰っていった。そしてあたしは職員室に向かう。そんなあたしに、 「ルーアン先生。」 とあたしを呼ぶ声があった。その呼びかけに振り向き、 「あ、百合香先生。」 と答える。その後職員室に着いたあたし達は簡単な会議などをして、あたしが帰りだしたのは夕方だった。 校門ではまだ何人かの生徒が残って写真を撮ったりしている。そんな生徒達を見ながら歩くあたしの目にある人物の姿が映った。 「あれ、おにーさんじゃない。こんなところで何しているの。」 とあたしはその人物に声をかける。 「ルーアンさん。いえ、あなたをちょっと待っていたんですよ。」 「あたしを。」 「いえ、帰りながらちょっと話しでもしようかなと思いまして。」 と言って髪をキザっぽくかきあげる。
「で、何よ、話って。」 と帰り道を歩きながらあたしがおにーさんに聞く。 「貴方、4月からどうされるおつもりですか。」 「どういうこと。」 「太助くん達が卒業した以上、貴方がここにいる理由はない。ですからどうするのかと思いましてね。」 「理由なんて別にいくらでも作ればいいと思うけど。」 「ということは中学校に残るのですか。ルーアンさん。」 「そう受け取るのならそう受け取ってもかまわないわ。ところで、あんたはどうなの。あんたこそシャオリンがいなくなる以上購買部にいる理由もなくなるんじゃなくって。」 「そうですね。それについてはこれから考えますよ。では、私はこの辺で失礼します。」 と答えるとおにーさんは去っていった。 おにーさんと別れて1人帰り道を歩くあたし。 「あれ、ルーアン先生じゃないですか。」 とあたしを呼ぶ声がする。 「遠藤君じゃない。買い物帰りなの。」 と振り返ってあたしは答える。 「はい。ルーアン先生は帰るところですか。」 「そうよ。」 「あの、1つ聞いていいですか。」 「いいけど何。」 「ルーアン先生って最初は太助くんのためにここの教師になったんですよね。」 「そうよ。」 「じゃあ4月になったらやっぱり高校に行くんですか。」 「そういえば遠藤君もたーさまたちと同じ高校行くのよね。」 「そうでけど、それが。」 「遠藤君はどっちがいいと思う。」 と思いつきで聞いてみる。彼はしばらく黙っていたが、 「・・・3年になってから教師やっているときのルーアンってすごく楽しそうに見えて、たとえば授業をしているときとか、他の先生と話しているときとか、だから・・・って答えになっていませんね。」 と答え、 「ボクこっちの方だからもう帰ります、さようなら、先生。」 と言って去っていった。 「楽しそうか・・・」 とさっきの言葉をあたしはつぶやくように言った。
そして新学期、あたしは職員室のドアを開ける。 「おはようございます、ルーアン先生。」 と中にいた3人の教師が挨拶する。 「おはよう、スーツにメガネ、それとジャージ。」 「いい加減に名前で呼んでくださいよね、ルーアン先生。」 と文句を言うスーツに、 「いいじゃないの、別に。その方が呼びやすいんだし。」 と答えるあたし。 結局あたしは中学校で教師を続けている。(ちなみに担当は社会科)遠藤君の言ったとおりあたしは楽しんでいるのかもしれない。ここでの出来事、授業とか他の教師とのやりとりとかを、心の底から。それに最初はさぼっていた会議とかも、いつのまにか自分から出るようになっていた。 本当に教師としての仕事を楽しんでいるのかは正直自分でもよく分からない。でもたった1つだけ言えること、ここは今のあたしにとって大切な居場所の1つだということ。それはだからあたしはここで教師を続けている。 ちなみにおにーさんも購買部の売り子のしごとを続けている。この前、どうしてか聞いてみたところ、 「ここで続けるのも悪くないと思っただけですよ。」 との答えが返ってきた。
My Place 完
<後書き> 最近ミレニアム・ラブストーリーばかり書いているので、気分転換とリハビリを兼ねて、書きたいキャラで書きたいように書きました。 そういうことで卒業式のルーアンストーリー、そして一人称です。 「何かルーアンが変。」とおっしゃる方、これが西本的ルーアン像です。 だからツッコミは受け流します。(笑) それじゃあ、また。 |
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