スレッド No.136


[136] 大暴走短編第二弾!
投稿者名: ふぉうりん (ホームページ)
投稿日時: 2001年5月9日 16時17分
一発ネタ大暴走短編その2
『魔女ッ子 しゃおりん』

 私の名前は、天野 小夜(あまの さよ)鶴ヶ丘中学校2年1組、昨日までは普通の中学生だったのに・・・まさかあんなことにになるなんて・・・・


 いつも通りの朝でした。
「いってきまーす」
「ああ、気をつけて行くといい」
 私は母に見送られて家を出ると、そこには
「おはよう 小夜」
「あっ 翔子さん。おはようございます」
 私の親友(心友とも言いますが)山野辺翔子さんが待っていました。
「今日も元気か?」
「はい」
 彼女はいつも元気で溌剌としていてとても魅力的です。私の憧れでもあります。彼女のおかげで私は日常生活を普通の人の3倍は楽しんでいると思います。ある日その事を彼女に言ったら
「はっはっは。何寝ぼけた事いってんだ? 小夜には小夜の魅力があるじゃないか。あたしはそっちの方が羨ましいよ。一回くらい交換出来ないもんかなぁ?」
と笑っていました。
「よう。二人とも朝から元気そうだな」
「おうよ、七梨」
「あっ七梨君。おはよう」
 彼の名前は七梨太助。お向かいの家に住んでる私の幼なじみです。
「なあ七梨。昨日のドラマ見たか? 太田七希の出てる・・・」
「ああ、見た見た! やっぱり、あいつってさぁやっぱり俺に似てるよなぁ」
「逆だろ? 世間一般だと、お前が、太田七希 似なんだよ?」
「あ、そうか。ってことは俺ニセモノ?」
「ハッハッハ、世間的にはそういう事になるな。よっニセ七希(笑)」
「ガーン」
 私はあまり口数が多いほうでは無いので、いつも聞き役に回ります。
「そういえばさぁ。昨日の晩な空を見てたらなんか降ってきたんだよ」
「へぇ〜」
「しかもこの辺に落ちたっぽい」
「マジかよぉ」
「小夜んちの裏庭辺りに案外落ちてるかもよ」
「ホントですか?」
「おい、小夜いつもの事だ、真に受けるなよ」
「ひでぇな、七梨。人の話をちゃんと聞く、そこが小夜の良い所なんだぞ」
「いつか、詐欺師か何かに騙されるぞ」
「あたしがそんな事させないよ。小夜を騙して良いのはあたしだけだ」
「騙してたんですか?」
「違う違う。でも、さっき言ったことは『もしも話』程度だよ。騙すなんて人聞きが悪い」
 翔子さんはそう言って七梨君を睨みました。
「おっかねぇなぁ、俺にも文句を言う正当な権利はあるんだぞ!『山野辺が吹き込む→小夜が信じる→俺のところに話が来る→振り回される俺』どうだ。俺の主張は間違ってるか? 何か言って見ろ山野辺」
 その時翔子さんの瞳が妖しく輝きました。
「そこまでわかっていて、何故いつも振り回されるかなぁ? ん〜七梨ぃ」
「う゛っ」
「くっくっくっ」
 どうやら勝負がついたようです。今日も翔子さんの勝ちでした。
「これで、今年は48戦48勝ですね。もうすぐ50連勝ですよ。翔子さん」
「そんなもん数えてたのか?」
「え? つい・・・」
 毎日こんな感じでとっても楽しいです。


 その頃の天野家の裏庭
「オイ 爺さんどうするんだよ? これマジでやべぇぞ!」
「そうでし。このままじゃ帰れないでし」
「安心せい。ただのエネルギー切れじゃ」
「そのエネルギー切れを引き起こした原因は誰だっつぅの」
「あれは、止むに止まれず仕方無しにだな・・・」
「一体どうやったら、『仕方無く』で航路範囲外に侵入できるんだ? そっちの方がよっぽど難しいぞ。この方向音痴爺!」
「なんじゃと!」
「二人とも喧嘩は止めるでし!」
「・・・・」
「・・・・」
「まぁいい。エネルギーはこっちで調達すれば済むわい」
「爺さん簡単に言うけどよう。どうやって集めるんだよ? さっき簡単に調べたけど、ここの文明レベルだと『くださいな』『はいそうですか』って話にはならないぞ? へたすりゃ俺達捕って見世物か実験動物にされちまうぞ?」
「そんなの嫌でし!」

「誰かそこに居るのか?」

「「!!」」
 三者の間に緊張が走り、声のした方に注目する。


「ただいまぁ」
「おう、おかえり。着替えたらちょっとこっち来てくれ、話がある」
「はーい」
 今のは、私のお母さん天野美弥乃(あまの みやの)我が家の家長。私が言うのもなんだけど、結構濃い人。
 私は、お母さんに言われた通り着替えてリビングへ足を運んだ。


「それは、災難だったなぁ」
「一時はどうなるかと思いましたぞ。いやぁ、奥さんが話の判る方でホント助かりましたぞ」
 なんだか、お客さんとすごく盛り上がってるみたい。ちょっと入り難いなぁ。仕方が無いのでノックをする。
「おお小夜か、入っておいで」
「はい」
 私がリビングに入ると、そこにはお客さんらしき姿は見えなかった。まるで今まで一人で喋っていたみたい。
「あれ? お客さんが居たんじゃないの?」
「ん? そこに居るではないか。何処を見てる?」
 応接セットには、見慣れないぬいぐるみ(結構可愛い)が3つ置かれていただけでしたが。
「そなたが小夜殿か?」
 突然、ソファの上にあった(居た?)白髭を生やしたお爺さんのぬいぐるみが口を聞きました。
「わっ、びっくり」
「ほれみろ 爺さん。滅茶苦茶驚いてるじゃねぇか。やっぱりここのおばさんが普通じゃないんだよ」
 こんどは。猫耳?と尻尾のついた男のこのぬいぐるみが喋った。
「そんなこと言っちゃだめでしよ。虎賁しゃん」
 こんどはお団子頭をした女のこのぬいぐるみまで・・・一体どうなってるの?
「そうだぞ。虎賁君。私は人よりちょっと理解があるだけだ」
「お、おあ母さん・・・これ・・・一体」
「いいから、とりあえず座りなさい」
「は、はい」
 私は母に言われるままにソファに腰をかける。
「紹介しよう。こちらが先ほど言った私の娘、小夜だ」
「はじめまして。天野小夜です」
「小夜。こちらが今朝我が家の裏庭にで発見された。方達だ」
「南極寿星と申す、そなたの母君には大変世話になった」
「おいらの名前は虎賁、よろしくな」
「離珠でし。小夜しゃん。よろしくでし」
「ねえ、お母さん。この人(?)たち・・・・」
「見ての通りの方々だ。手品でもなんでもない。こういう方々も世の中には居ると言う事だ」
「・・・・そうなんだ」
「でな、小夜、お前に一つ頼みがあるのだが・・・」
「なに?」
「彼らが故郷に帰る手助けをして欲しい、私が手伝っても良いのだが、何分私も忙しい身でな」
 お母さんが忙しいのは私も知っている。今日はお休みで珍しく家に居るのだもの。
「で、なにをすれば良いの?」
「それは、彼らから詳しく聞いてくれ。その方が愉快だからな」
「愉快?」
「いや、なんでもないこっちの話だ。南極寿星、貴方から説明してくれないか」
「うむ、実はわしらは旅行者でな。乗り物のエネルギーが切れてしまって帰れなくなてしまったのじゃ」
「そこで、エネルギーを集める手伝いをして欲しいってことなんだ」
「そうでし。でもこの世界では、ちょっと集めにくいでし」
「え? むずかしいことなの?」
「うーん。気の持ちようじゃねぇか?」
「まっ やってみんことには判らんじゃろう」
 そう言って南極寿星さんは懐から、八角形の輪を取りだし。
「この支天輪を使って、人々から『感謝の気持ち』を集めるのじゃ」
「はい?」
 おもわず聞き返してしまいました。お母さんは後ろで爆笑している。どうやら、知ってて私に話を振ったみたい。
「つまり、人助けして、その人から『ありがとう』の気持ち貰ってくれば良いってこと、わかったかい? 姉ちゃん」
「そうでし、支天輪から星神しゃんを呼んで困ってる人達を助けるでし」
「え? え?」
 私の意思に関係なく話がどんどん進む。
「よろこべ小夜。お前が小さい頃望んで止まなかった。魔法少女になれるぞ」
「お、お母さん!」
 私は顔を真赤にして叫ぶ。
「百聞一見にしかずじゃ、試しにこれを持ってわしらに言われた通りにしてみるのじゃ」
 私は支天輪を受け取り、一応頷いてみる。
「天明らかにして 星来れり」
「天明らかにして 星来れり」
「来来 女御」
「来来 女御」
 すると、支天輪から着物を着た二人の小人さん(?)が現れました。そして、私の周りをくるくる回って・・・服が・・・ちょっ、ちょっと待ってよ! 私が声を上げる前にみるみる服装が変わっていきます。
 気が付くと私は見知らぬ中国風の衣装に身を包んでました。
「ほう、なかなかのもんじゃな」
「流石、我が娘。よく似合っているではないか、母は鼻が高いぞ」
「決まってるぜ、姉ちゃん」
「格好良いでし」
「え? え? え?」
 私は自分自身がどんな格好をしているかイマイチ解らないのに、誉められました。すると戸惑う私に、女御という小人さん(星神さん)鏡を準備してくれました。
「これが私? 本当に私なの?」
 少し押し上げられた前髪、髪飾りにイヤリング、少しお化粧もされてるみたい。少し足元がいつもより涼しいような・・・あっ、このスカート横に隙間が・・・・その辺りを間引いてもこの衣装結構可愛いし。なんだか良いかも
「まんざらでも無い顔だな、小夜」
 お母さんがニヤリと笑って言いました。
「もう、お母さんったら」
 とその時
 
 ピンポーン
 
 とチャイムが鳴りました。
「はーい」
 と私が玄関に行こうとすると母が、
「小夜。その格好で玄関に出る訳にはいかんだろ? 私が出よう」
 言われて見ればその通りだった。流石にこの格好で人を出迎えるのちょっと恥ずかしい。


 天野家玄関
「どなたかな?」
「七梨ですけど」
「ああ、太助君か入りたまえ」
「あっ、こんにちわ。おばさんお久しぶりですね」
「そうだな、ん? 小夜か? 今呼んで来るからそこで少し待っていてくれ」
「はい」

 
 リビングにお母さんが戻って来た。
「小夜、太助君だ。元の格好戻って、行ってあげなさい」
 母が玄関へ出た時に、南極寿星達から女御について聞きました。
「はーい。女御、御願い」
 再び女御は私の周りをくるくる回り、もとの服装に戻ります。
服はいつもの普段着に、髪飾りもイヤリングも無くなり、前髪はいつも通り目の前に掛かります。いつも通りの格好に戻った私は七梨君の待つ玄関へと向かいます。
「いらっしゃい。七梨君」
「やあ、小夜。これから少し時間いいか?」
「? 別に構わないけど」
「そうか、じゃあ俺について着てくれ。見せたい物があるんだ」
「見せたい物? ここじゃ駄目なの?」
「ああ、ここじゃちょっと無理だ。だからついてきて欲しい」
「うん。わかった。すこし待っててね」


「ねえ。お母さん。これから七梨君と出かけるけど良い?」
「ん? デートか? 良いんじゃないか? ただ、早まったことだけはするなよ?」
「もう、お母さん! デートじゃないってば、それに早まったことってなによ?」
 顔を赤くして叫ぶ私。
「聞きたいのか?」
 なにが言いたいのかなんとなく想像できたので、余計顔が熱くなるの自分でもわかった。
「いい」 
「・・・そうか」
 少し母残念そうでしたが、
「出かけられるか? ならこれを持っていったらどうじゃ?」
 と私に南極寿星は私に支天輪を手渡しました。
「支天輪の使い方は離珠と虎賁に聞くのがいいじゃろう」
 ちょっと、まってよ離珠ちゃんと虎賁君もついてくるの?
「私からも一つ頼んで良いかな? 離珠ちゃんに虎賁君。小夜をよろしく頼むぞ。私が言うのもナンだが、小夜はしっかりしているようで案外抜けているからな」
「おお、任せとけ!」
「まかせるでし!」
 三人して親指立ててポーズとってるし・・・え? もう決定事項? 私ってそんなに信用無いの? 
「小夜殿。貴方の母君はああ言っておられるが、本当は離珠と虎賁により安全にこの世界を見せてやりたいだけなんじゃよ」
 と南極寿星が小声でフォローを入れてくれた。
「そうそう、小夜」
「なあに? お母さん」
「基本的に支天輪や彼ら(南極寿星達)のことは黙っておけよ」
「なんで?」
「秘密は魔法少女の宿命だからな」(断言)
「・・・・」
 私は言葉を失いました。
「と、いうのは冗談だが『世の中全てが私や小夜のような人間ばかりでは無い』と言った方が良いかな? こういう言い方は好きじゃないが」
「わしからも頼みますじゃ。出来る事ならこれ以上誰にも知られること無く居たいのですじゃ、頼みますぞ」
 南極寿星まで、真顔で私に頭を下げて来た。
「わかったわ。誰にも言わないし。なるべく秘密は守るわ」
「ありがとうですじゃ」
「そうか。そんな小夜に一つご褒美をやろう」
「?」
「なに、物理的なものじゃないさ、精神的なものさ、むしろおまじないにちかいかな? 女は秘密の一つや二つ必ずあるものなのさ。『秘密が女を美しく飾る』なんて言葉もあったかな?」
「それ、ほんと?」
「なんだ、信用ないなぁ、母は悲しいぞ。・・・・私なんか秘密だらけだぞ」
 そういって、フッと笑う。言われてみると何処と無くミステリアスな感じが漂って・・・こなかった。むしろそんなことを自信満々でいう母の底の知れなさに少し背中が寒くなった。
「・・・・なんとなく、お母さんの本質の一端を見か気がするわ・・・・」
「そんなに誉めるな」
「誉めてない」
 もはや会話内容が我が家独特の領域に達し、南極寿星達は話に介入することすら出来なった。これがこっちの常識だと思われたらとっても困るんだけど・・・


「お待たせ。七梨君」
 私は帽子に離珠と虎賁を、鞄に支天輪を忍ばせた。
「おう」
「で、何処に行くの?」
「ついて来ればわかるって」
(へぇ〜、あれが小夜姉ちゃんの、彼氏って訳かい)
(なかなか格好良いでし〜)
 頭上からなにか聞こえてきましてが、あえて無視しました。いちいち彼らの言葉に振り回されていたらキリがありません。それに七梨君に彼らの存在がばれるとなんだか後が大変そうだし・・・とりあえず、報復として帽子を目深に被り直してみました。

 グイッ

(ぐぇっ)
(苦しいでし)

 再び帽子をゆるめに被りなおします。これでこの場で誰に発言権があるか彼らもわかった事でしょう・・・・ってこんなの私じゃない・・・・いつからこんな風になってりしまったんでろう?
「どうしたの、小夜? 顔色悪いぞ」
 私が七梨君の知らないところで新たな悩みを発掘していると、どうやら表情に出たらしく、七梨君に心配されました。
「大丈夫。心配しないで」
 私は口元だけで笑って答えます。こういうのを冷笑というのでしょうか
「・・・・そう」
 なんだか七梨君のリアクションがいつもと違う気がしました。
(今の小夜。なんだかちょっと美弥乃おばさんみたいだった・・・・)
 などと彼が思っているとは、私はつま先程にも気がつきませんでした。
「どこまで行くの?」
「ん? 小学校の裏山」
「裏山? それにその鞄なんだか大きいけどなにが入っているの?」
「秘密道具」
「なにそれ?」
「じゃ、企業秘密」
「教えてくれないのね」
「まっ、もう少しまってくれ」


 小学校の裏山
「ついたよ。ここさ」
 そこは、裏山で一番大きな樹が鎮座しているところだった。
「この樹がどうかしたの?」
「この上から眺める景色は絶品なんだ」
「私、木登り出来ないわよ」
「その為の秘密道具さ」
 そういって七梨君はリュックから頑丈そうな縄はしごを取り出しました。
「これで上れと?」
「そう。嫌?」
「うーん」
 私が少渋っていると、
「来週、小夜の誕生日だろ? 俺、小夜に気の利いたプレゼントが出来そうにないからさ。だから俺なりに考えた。そしたら俺の秘密の場所を見せてやりたくなった」
「七梨君・・・・」
 私は、なんだかそれだけで胸がいっぱいになった。
「それにさ今日をのがすと、来週いっぱいまで天気が崩れるみたいなんだよな」
「ずるいぞぉ、七梨君」
 私に拒否権はないみたい。私は少し上ずった声でああ言いましたが、私の顔はうれし泣きを堪えて、笑っていました。
「そう言う顔は、上まで上がった時まで取って置いて欲しいなぁ」
「ごめんね」

「じゃ、行ってくるから、そんではしごを垂らすから、上がってこいよ」
「うん」
 そういって七梨君は木登りを始めた。樹を登っていく七梨君の姿はだんだん小さくなって行きます。七梨君は時々こっちを向いて手を振ってくれます。余裕あるみたい。もうすぐ頂上付近と言うとき、突如突風がが吹き荒れ樹を大きく揺らします。

ごぉひゅぅぅぅ


「きゃぁあ」
 私は帽子と離珠達が飛ばされないよう抑えるのが精一杯でした。
「大丈夫? 二人とも」
「おいら達の心配より、上見ろ上!」
「え?」
 私は上を仰ぎ見ると、そこには・・・・

 片手で枝にぶら下がり、今にも落ちそうな七梨君の姿が・・・
「きゃ・・・」

 ギリッ

 私は悲鳴をかみ殺し離珠と虎賁に聞きました。
「星神で空を飛べる子は?」
「!!」
「け、軒轅しゃんでし」
「ありがとう」

『天明らかにして 星来れり 来来 軒轅!』

 私は軒轅と呼ばれる飛龍を呼び出した。が何故か一緒に女御も出て来た。私の服装が変わる。そんな事は今はどうでも良い。一刻も早く七梨君を助けなければ。
「軒轅。御願い」
 軒轅は一声上げるとみるみるうちに高度を上げる。でも七梨君は今にも落ちそう。
「軒轅、急いで!」
 七梨君指先が力無く離れる。


 ドスン

 
 私と軒轅は落下する七梨君を受けとめることになんとか成功した。
「あれ? 俺は落ちたんじゃ・・・ここは? 空? 君は? 天使? じゃあ俺は・・・・・・」
 みるみるうちに七梨君の顔が暗くなっていきます。
「ここは軒轅の背中の上、私は天使じゃありませんよ。大丈夫、貴方は生きてますよ」
「小夜は? 下に女の子はいなかったか?」
 私は複雑な気分でした。どうやら七梨君には目の前に居る私が小夜であることがわからないようです。
「・・・・ああ、その子なら、樹の根元で倒れてましたので、安全そうな木陰で休ませておきましたよ」
 割りとすらすら嘘が出て来る自分自身が嫌になりました。
「そうか、ありがとう」
 私は沸き上がるさまざまな感情の為、まともに七梨君の顔を見ることは出来ません。
「少し広い所に降りますけど良いですか?」
「あ、ああ」 
 七梨君のその声は少し落ち込んでました。
「よう、坊主。なに落ち込んでるんだい?」
「うわっ」
 今まで髪中に隠れていた虎賁が七梨君の前に姿を現しました。
「いまさら何驚いてるんだよ? おいらが喋ってることより、空飛んでる方がよっぽど驚きじゃねぇか。いちいち驚くなよ」
「・・・それもそうだな」
「おいらは、たまたま一部始終みてたけどよ。下に居た子に坊主の気持ちが伝わりゃあ、いいんじゃねぇかと思うんだけどよ。違うか?」
「・・・伝わったのかな?」
「信じることも大事なことだと思うぜ。なぁ」
 と急に私の方に虎賁は話を振りました。
「え、ええ。きっと貴方の気持ちはその子に伝わっていると思いますよ。だからあまり自分を責めないでくださいね。その子は貴方の無事な姿だけで安心するはずですから」
 とても滑稽だった。これではまるで道化芝居だ。私はいったい何をしているんだろう? 私は虎賁の入れてくれたフォローに感謝するよりも、自分自身のやるせなさに身を切る想いでした。
 

「この辺りでいいでしょう」
「ああ、ありがとう」
「いえ」
「ところで、君の名前は?」
「・・・・」
 私が返答に詰っていると
「あっ、聞く前に先に名乗らないとな、俺の名前は七梨太助。君は?」
「・・・・・・」
「命の恩人の名前くらいは聞いておかないとね。『恩を受けた相手はきっちり憶えて、しっかり返せ』ってね。うちの親父の受け売りだけど」
「名前・・・」
 どうしよう・・・・偽名なんて一切考えてなった。
(小夜しゃん・・・・)
「しゃお?」
 離珠の囁く声が七梨君に少し違って聞こえたみたい・・・その瞬間閃きました。
「そうですね。私の名前はしゃおりん、しゃおとでも呼んで下さい。では、私はこれで」
 私は脱兎の如くその場を後にしました。
「しゃおりんか・・・不思議な子だな。あっ、ちゃんとお礼言ってないや・・・」
 などと七梨君は呟いた事など私は知る余地もなく、なんとか誤魔化しきたことに胸を撫で下ろしました。後はあの樹の側に大急ぎで戻って、気を失った振りをしなくてはいけません。幾ら自分が撒いた種とは言え、刈り取りまでの時間があまりにも短すぎます。
「オイ、小夜姉ちゃん」
「なに? 今急いでるのよ」
「支天輪を見るでし」
「え?」
 私は懐から支天輪を取り出しました。
「光ってる・・・」
「その輝きが、あの坊主の「感謝の気持ち」ってやつだよ。」
「これが七梨君の・・・・」
「こいつを沢山人から貰えれば、俺達は故郷に帰れるって訳」
「なんだか綺麗な光だね、それでいて暖かい・・・・」
 私は支天輪を包み込むように両手で抱きました。


 結局はあのあと七梨君と帰りましたが、どこか七梨君がよそよそしかった。勿論理由はしゃおりんのことだと思う。私だけが一方的全てを知っているのは、なんだか騙しているみたいで良い気分はしなかったが・・・


 翌日

「おはよう 小夜」
「おはようございます。翔子さん」
「よう。二人とも元気か?」
「おうよ。七梨」
「おはよう 七梨君」
「世の中って不思議な事も有るもんだなぁ」
 と、いきなり遠い目で語りはじめました。
「なんだ? いきなり気色悪りぃな」
「・・・・」
 私はなんのことだか解ったのであえて口を挟みません。
「世の中には漫画みたいな出会いもあるってことさ」
(なかなか可愛かったしなぁ)(ぼそっと)
 私は七梨君の呟きを聞き逃しませんでした。そうきましたか、私があれからろくに寝ないで悩んでいたというのに・・・・そう思うとなにやらふつふつと煮えたぎる感情が沸き上がってきました。
「あっ」

 ごすっ 

 よろけたふりをして前に倒れそうになり、七梨君のにやけた顔面に一発いれてやりました。
 しゃおりん になって感謝されるのも良いけど、私、小夜としてはとても複雑な気分でした。


一発ネタ大暴走短編、魔女ッ子 しゃおりん

おしまい


あとがき
どうも、頭のネジがぶっ飛んで壊れた ふぉうりん です。
いやね。魔法少女ものをここ2、3ヶ月みてしまった影響がこれです(爆)
「なんだ、月天って、一応魔法少女もののジャンルじゃん、じゃ、いっちょやって見るか」と軽い気持ちでかいてみました(笑)
 石やかみそりやウィルスは投げないで下さい(切実)

じゃ、おまけその1

一瞬太助視点
「大丈夫。心配しないで」
 その時の小夜は口元しか笑っておらず、下ろした前髪から覗くその双眸は少し冷たく、そして妖しく輝いて見えた。俺は一瞬、初めて見た小夜の表情に戸惑いながらもその魅惑的な危うさに見とれてしまった。


おまけその2
突風のシーンで悲鳴を気丈にかみ殺す辺りは、
天野美弥乃の娘たる所以です。
美弥乃さんの元ネタは、カタカナにして「み」と「や」を入れ替えて見てください。私のHPに縁のある方はお解りでしょう(笑)
その辺りを実証する為に設定後悔(違)設定公開をば

http://fourin.tripod.co.jp/entlance/komako/parareru/settei1.htm

[137] 魔女っ子魔女っ子〜(笑)
投稿者名: 空理空論 (ホームページ)
投稿日時: 2001年5月11日 00時22分
ぶっ飛んだネタではありますが、実に面白いですね。
こんな風にも楽しくアレンジできるものかと。
シャオがもし普通の女の子であったのなら、
おそらくはこんな感じなんでしょうね。
太助とのやりとりなんか実にほのぼの。
(やきもちやいてる部分とかは、原作3巻あたりの、
バスの中で空き缶を投げつける場面を思い出させます<笑)

それにしても・・・母のモデルがヤミノってのは、
最後に言われるまで気付きませんでした(爆)

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