スレッド No.143


[143] Looking For(短編その10)
投稿者名: 空理空論 (ホームページ)
投稿日時: 2001年6月6日 22時51分
『知恵』
※旅にでかけるのに
すぐれた分別にまさる友はいない
見知らぬ土地では金よりも役に立つ
それは弱者の盾だ


久しぶりに町内を歩いてみた。
町角に立って話をする婦人達。元気に走り回っている子供たち。
人はいつも元気、沈んでることがない。いつも私はそう思える。
「こんにちは。」
見知らぬ人から不意に挨拶される。慌ててお辞儀をした。
笑顔でその人は去って行った。ふう、無礼にならずにすんだだろうか。
・・・いや、私は今の人を知っていたな。
誰だろう、思い出せない・・・。
考える、考える。うつむいて考える。
ドン
ドン?
何かに当たったみたいだ。前を見ると何もなかった。
下を見ると・・・小さな子供が泣いていた。
辺りを見回してみると、誰も居ない。もしかして迷子だろうか?
再び考える、考える・・・。考えていると誰かが駆けてきた。若い女性だ。
「まあ、こんな所に居たのね。心配したんだから!」
しゃがむと、ひしとその子を抱きしめた。
やっぱり迷子だったようだ。
道に迷った場合は下手に動かない。これが役に立ったみたいだ。
「ありがとうございます、ありがとうございます。」
私に向かって懸命にお辞儀する。
「・・・いや。」
としか私は答えられなかった。
というより、私は何もしていない。ただ子供にぶつかっただけ。
それで立ち止まっていただけ。泣く子に私が話し掛けても恐いだけ。
するとますます泣かせてしまう。それがわかっていたから、私は話し掛けなかったのだ。
十分すぎるくらいのお礼の言葉をもらい、その母子と別れる。
私は再び歩き出した。
さて、さっきまで止まっていた考察を再開するとしよう。
私に挨拶してくれた人物、それは一体誰だったのか・・・。
・・・ぽん
不意に立ち止まる。そして手を打ってみた。
「思い出した。」
私のお得意さん・・・ではない。取り引きは一回だけだ。
以前宴会をするというのことで、今までに無いくらい大量の注文を受けた。
だから私は覚えていた。印象深い人として。
いや、忘れていたんだっけな・・・。
それでもお辞儀はしっかりした。相手次第ではまた注文をしてくれることだろう。
などということはどちらでもいいことだが。
しばらくまた歩いていくと、見知った顔が向こうに確認できた。
慌てて私は踵を返す。
「あ〜っ、長月さ〜ん!」
みつかった。
後ろ姿で判断できるとはさすがだ。
くるりと振り返ると、目の前にまで迫ってきた。
「・・・びっくりした。」
「こんにちわ〜。珍しいですね、長月さんがお散歩なんて。
いっつも店の奥の方で仁王様みたいな・・・じゃなくって、仏様?キリスト様?
あっ、そういえばこのかいわいじゃあ仏教が主だったわねえ。真言宗だったかしら?
博識でしょう?智子ちゃんからこの前教えてもらったんですよ〜。
もっともご町内の皆さんが仏教だってのは色んなお話をして聞いたんですけどね。」
「・・・・・・。」
既に私は話についていけなかった。
おしゃべりな如月さん。ここまで喋る理由は一体何だろう?
「お返事がないですね〜。やっぱり長月さんって無口ですよね。
ちゃんとお喋りしましょうよ。相手がツーと言ったらカーと返す。
それが礼儀ってもんですよ。カラスさんはちゃんと返してくれます。
でも私が喋ってる途中で返事をしてくるんですよ。だからちょっと失礼ですよね。」
「・・・・・・。」
それは返事では無いと私は思うんだが。
「でもまったく返事が無いのも私は嫌です〜。
だって無視されちゃったみたいじゃないですか〜。
やっぱり相手の応答が無いと。だから長月さん、少しはお返事してくださいね。
あっ、でも話の内容がわからないと返事ができないかもしれないのよね〜。
なーんだ、そういうことだったのね。だったら説明してあげるわ〜。
さ、どこがわからなかったのか言って。もう一度私が説明してあげます。」
「・・・いや。」
「もう、遠慮なんかしてる場合じゃないでしょ〜。これはコミニケーションですよ。
グッドラックですよ。運が良くないと動けるものも動けないわ〜。
でも珍しく長月さんは散歩なんてしてたのよね。まあ、立派に動けてるじゃない!
おめでとう長月さん。明日はきっと大吉ね。」
「・・・・・・。」
わけがわからないまま如月さんは握手してきた。
何が嬉しいのか凄い笑顔だ。
この後延々1時間・・・私はひたすら話を聞くだけであった。

すっかり日が暮れた頃、私は帰路についた。
散歩は疲れる。いや、今まで疲れたことはなかったはずなのだが・・・。
まったくおかしな日であった、まる。

<おしまい>


○後書き:既に箴言が意味を成してません(爆)
無理矢理に取れないことも無いですが、知恵じゃないしなあ・・・。
ま、箴言はいいこと言ってると思うんで、それはしっかり覚えておいていいと思います。
それにしても、どうして如月さんが出ると話のテーマが無くなってしまうのだろう。
知らないうちにこれが10個目だったのね。(出来上がるペース遅・・・)

[144] Re: Looking For(短編その10)
投稿者名: グE
投稿日時: 2001年6月8日 10時47分
>しばらくまた歩いていくと、見知った顔が向こうに確認できた。
>慌てて私は踵を返す。

やっぱり長月さんは
如月さんが苦手なのか…。
(というか、あの人と付き合える人って、
神無月さんぐらいのような…。)(笑)

>おしゃべりな如月さん。ここまで喋る理由は一体何だろう?

これは私も気になる…。
しかも話している内容わけわかんないし。
(というかここまで来ると尊敬の念すら浮かんでくる)(笑)

では!

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