105 | Reply | 苦悩の刹那主義者 | のーちん | URL | 2002/01/30 09:02 | |
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1.バイシクル 成人男子・林陸美の両目は、一点に集中していた。視点をそらしてはいるものの、意識はその座標をロックして、以後離れることはなかった。 林が何に集中しているか。それを筆者が口に出していいものだろうか。筆が私に問いかける。 「昨日オナニーしたでしょ?」 しかし書かねばならぬ。書かぬ作家が作家たることは許されぬ。書こう。いざ書こう。ああ、それでも神様、一つだけお願いがあります。私は以前不幸でした。でも不幸であることが幸せだったのです。まずいジュースをおいしいと感じていたのです。矛盾です。この言葉の矛盾を解決して下さいお願いしますお願いしますお願いします神様。それならば、私は書きます。書かせていただきます。書くって言ってんだろ! 「昨日オナニーしたでしょ?」 ああ、したさ。したとも。だが藤田まことを観ながらしたところだけは譲らない。誇りに思うよ。私はそれが誇りなんだ。何が悪い? 林陸美の眼窩に飛び込んでくるもの。------それは10円ハゲである。 2.メリー・ゴー・ラウンド いつしか日も暮れて、大学院生・林陸美の属する研究室には、林本人と、同級生の蒲生芳乃を残すのみとなった。二人とも締め切りの迫る中、論文がまとまらずやむなくの残業であった。西日が差し込んできてまぶしかった。 蒲生芳乃の席は林の目の前。林サイドからは、蒲生の後頭部がいつも定位置にあることが確認できる。それを確認してはじめて、林の一日が始まるのだ。後頭部確認イコール、スタートラインに立つことと認識していただいて結構だ。 林は今日も朝早く登校して、さらに早く来ていた蒲生の後頭部を確認した。後頭部はそこにある。後頭部がいつもの位置にあることを確認し、 「後頭部よーし」 と心の中で呟く。実際に呟いてはならない。人並みの幸せを得るためには、そんな意外なことはしてはならない。林くらいの人間ともなれば、そんなことは重々承知している。ただ爽やかに、 「昨日オナニーしたでしょ?」 と挨拶するくらいの余裕は持ち合わせていた。ただし、なぜ無視されるのかは未解決であった。そこがこの男の惜しいところだ。ハーゴンを倒したところでクリアしたと思い込み、エンディングも見ずにリセットし、2周目にとりかかって満足しているのだ。何ということか。シドーの存在を教えてあげるのもかえって気の毒だ。彼は今のままで十分幸せなのだ。でもそれでいいじゃないか。 林が席に着く。直後ほとばしる違和感。すわ、何か違う、何かが違う、それは何か、いやいや待て待て、落ち着け林。落ち着いてこそ林。落ち着かぬ林など林ではない。我がアイデンティティーを保つためにも林、落ち着くのだ。よし、それでいい。 林陸美が蒲生芳乃の後頭部に10円ハゲを見つけたのは、それから半日後のことであった。その間彼の頭部は、東から南経由で西に移動した太陽の照射を満面に浴びていた。それはあたかも月の満ち欠けの早送りに見えた。他の同級生が語ったところである。林はひまわりのように太陽を追従することはなかったが、その代わり身じろぎすることもなかったという。 3.ハンググライダ― ------なぜ10円ハゲがあるのか。そんな低俗なことは、もはやどうでもよかった。それよりも林を苦悩に導いたのは、「どうやって蒲生にそのことを知らせるか?」ということだった。 難しい。まず、成人女子を傷付けてはならない。それが非常に難しい。伝え方によって以心伝心できるときとできないときがある。慎重に慎重を重ねて悪いことはない。 それに、なにが理由なのか分からない。10円ハゲというと、ストレスからくるものだと推測される。男に捨てられたのか? いや、それはない。それならば、何も言わず僕の胸に飛び込んでくるはずだからだ。僕が全てを包み込んであげれば解決するのだ。こんな簡単なことはない。だが彼女はそれをしない。つまりふられたわけではないのだ。では真の理由は何か? 林の結論はこうだ。 「後頭部の一部の皮膚組織が、自己を顔面細胞だと誤認した」 林は満足した。満足したら、以後同じ問題に取り組むことはない。だってその問題は解決したのだから。問題は次の段階に移行した。ではどうやって彼女に10円ハゲの存在を伝えるか、である。 林陸美は苦悩した。それは宇宙の歴史から考えると、とてつもなく刹那的な時間だったかもしれない。だがその逡巡の世界で彼の脳はフル回転した。シナプスが次々と結合していく音が聞こえた。脳細胞が直列に並び、眼球が一回転して戻ったそのとき、彼は閃いた。閃いてしまった。それを以下に書こう。とてもイヤだが記述しよう。それが作家の宿命だと受け止め、林陸美の言い分を書こう。 「10円ハゲに、そっと10円の絵を書く」 さすれば、誰かが指摘するだろう、と。林はこの10円ハゲ問題を、上記のように解決した。 そして今後、彼がこの問題に苦悩することは絶対にない。断じて、ない。 そして以後、私が筆を持つことも、ない。 |
111 | Reply | なにはともあれ疲れ様 | 空理空論 | URL | 2002/02/18 22:56 | |
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何気なく“お”を抜いてみたり(謎) 修論お疲れ様〜様〜様〜…。 さて、さすが作詞などをやってるだけのことはあるっていうか、 表現的にナイスなもんがあるっていうか…。 (思えば、何故にこれを書こうと思ったのかちと気になる分野ではあるぞよ) >「後頭部よーし」 私的にこれが一番好き。 何がよしなのだ。そうそう、よしって言えば大学の近くにそんな名前の食堂が…。 で、以前も言った事ではあるが、 10円ハゲはミステリーサークルの一つだという定説が既に挙げられている。 したがって、更なる侵略を防ぐ為に… そう、ここで語られてる10円の絵を描くという行為が…(以下略) 関係無い事だけど、以前歌詞をとってもらった、 「市役所前のテーマ」 実は、あれは本当に市役所の役員の話かと思っちゃってて、 それで頭の中で色々物語を張り巡らせていたのですわ。 いずれ送らせていただこう。(出来上がる日は当然ながら未定<爆) |
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