322 Reply 『これもひとつの好き嫌い?』 ふぉうりん MAIL URL 2003/10/24 01:58
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「何でこんなことに気がついたのかしら?」
 リビングでルーアンは一人、面白くなさそうな顔で、腕組みをしながらため息を吐いた。
「よう、ルーアン。」
「あら、おねーさま。」 
「考え事か?」
「ええ、まぁ」
「珍しいな、あんたはリビングだと食べてるかテレビ観てるか雑誌読んでるかの印象しかないのかしら?」
 概ね正解だが、酷い言われようだった。『日頃の行いがものをいう』といわれてしまえば、それまでだが。
「酷いわ。…まぁ、殆どその通りだけど。」
「あはは、自分でも自覚あるなら、変えればいいのに…。」
「変えてもたーさま、あんまり構ってくれないんだもの。」
 何気ない一言とはいえ、結構本気の愚痴だった。
「あんたの生活のは太助中心で回ってるんだな?」
「そうよ。たー様中心的だもの。」
「なんじゃそりゃ?」
「言葉通りの意味なんだけど…強いて言うなら『ルーアン的造語』よ。」
「『造語』かそっちの方が分かり易いな。」
 那奈は軽く笑って、頷いた。
「『かまってくれない…』か。まっ、たしかにルーアンの言うことも一理あるよな。あいつ、自分の興味の無いないもには、あまり見向きしないからなぁ。
今日びのオ○クのようなヤツだな。」
「それは、あんまりよ。おねーさま。」
「でも、シャオ以外に対する無関心さは、どうかと思うよ。姉としてはかなり心配だ。」
「そうよねぇ。今のたー様は、シャオリンが居なくなったら、きっと生きていけないよ。」
 顔は笑っていたが、内容は穏便ではなかった。そしてその言葉はかなりの重さと真実味を含んでいた。
「………そう、かもな。」
 那奈は苦々しく頷いた。
「あらあら、暗くなっちゃったわね。ごめんなさい。ところでね、あたしがさっき、ふと気がついたことなんだけどね。」
 暗さを吹き飛ばすかのように、ルーアンは話題を変える。当事者が居ないのに、無理して外野が頭を悩ませることも無いからだ。
「なになに?」
 那奈もルーアンが気を利かせて、話題を切り替えてくれたことが少しありがたかったので、新しいに話題に対する食いつきも良かった。
「あんまり大したことじゃないのわよ。」
「そうなの? でも、少し気になるね。」
「そう? じゃあ、ちょっと見てね。」
 そう言ってルーアンは一枚の紙をテーブルに置いて、近くにあったペンで何やら文字を書いた。
「これもひとつの好き嫌いなのかしらね?」
「ん? ああ。」
 那奈はその字を見てルーアンが何を言いたいのか、なんとなく見当がついた。それでもその答えとおぼしき内容に先回りすることなく、ルーアンの次の言葉を待った。その紙に書かれた文字それは『明』だった。
「だって、この字はあたしのこと言ってるみたいなのに…。」
「そうだな。確かにルーアンに良く似合ってる。でも…。」
「日よりも月の方がおっきいんだもの…。」
「シャオの方が存在感があるみたいで、ルーアンには面白くなんだな?」
 ルーアンは那奈の言葉に渋々頷いた。
「なるほど。納得。それにしてもなんつーか、非常にルーアンらしいな。」
「でしょ?」
「しょうもないことなんだけどね。なんだか気が付いたら、誰かに聞いてもらいたくなっちゃってね。」
 と小さくため息を吐く。
「いやいや、なかなか面白かったよ。」
 と、那奈は愉快そうに笑っていた。結果的に自ら進んで道化となってしまったルーアンも、思わずつられて笑ってしまいそうないい笑顔だった。
「まぁ、笑ってくれる人が居るだけ、一人でため息吐いてるよりは、何倍もマシよね。」
「そうそう。人間(?)前向きが一番。」
「ふふっ。」
 那奈の言葉にルーアンは小さく笑った。
「そんな、前向きなルーアンには、これをあげよう。」
 そういって那奈はルーアンに何かを手渡した。
「何? 飴玉?」
 ルーアンはきょとんとした顔で聞き返した。
「面白い話を聞かせてくれたお礼ってところかな? …って、なんだよ。その顔は…。いらないっていうのか?」
 唐突過ぎて、少し話に乗り損ねたルーアンは、すぐにいつもの調子戻って。
「せっかくもらったんだから返すなんてもったいないことしないわ。喜んでいただくわ。」
 そういいながら、飴玉の包みを開いて、口の中に放り込んだ。
「いい、食べっぷり(?)だな?」
「それはどうも♪」
 飴玉を口にしていたので、返事を返すルーアンの言葉はあまり歯切れのよいものではなかった。
「それじゃあね。あたしは散歩にでも行ってくるよ。」
「いって、らっしゃ〜い。」
 軽く手を振るルーアンに背中を見送られ、那奈はリビングを後にした。
 リビングのドア、そして次に玄関のドアが閉まる音を少し遠くに聞きながら、

 これ、結構おいしいわね。おねーさまが喜ぶようなことすれば、またもらえるかしら?

 口のに甘さを広げながら溶けていく飴玉を転がしながら、そんなことを考えてみるルーアンだった。


おしまい


おまけ

 またまたルーアンはリビングでため息を吐いていた。
「またか…今度はんだ?」
「今度はこの字よ。」

『萌』

「また微妙な字を…」
 那奈は呆れ気味言った。
「なんだかあたし達の上にキリュウが寝そべってるみたいで、腹立たしいのよ。」
「言いがかりだろ、それ。」
「そうとも言うわ。」



あとがき
試験後解禁一発目だよ。
久々にルーアンをまとも(?)書いたよぉ。面白かったよ。ちょっと大人しめかも知れないけど(苦笑)
ちょっと少ないかな? SSは量の問題じゃないと思いたいのであんまり気にしません(おい)

つーか、眠いんだけど書いてしまった。これぞまさしく『書きたい病』(笑)

2003年10月23日 ふぉうりん
325 Reply 面白いですね。 空理空論 MAIL URL 2003/10/27 00:59
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なんかやられた気分でした。
こいつはきえづかんかった・・・って。
個人的には、「明」よりも「萌」の方が(笑)
言われてみれば、ルーアン萌え〜とかシャオ萌え〜というのよりは、
キリュウ萌え〜という言葉をよく耳にするので(爆)
探してみれば他にもありそうですね。
330 Reply 知的ギャグ よしむら 2003/11/12 08:43
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なかなか知的なギャグで楽しめました。
読んで、あぁなるほどなぁと。
オチの「萌」も良いです(笑)
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