302 | Reply | こればっかりは… | ふぉうりん | URL | 2003/09/07 02:39 | |
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「なぁ、これってヤバくないないか?」 と、口火を切ったの翔子。 「何かの冗談じゃないのか?」 とたかし。 「そうだよな、常識では考えられないよね?」 乎一郎も彼らに続く。 「でもこれが本当だと。哀れというか、気の毒というか…」 渋い顔をして太助も頷いた。 「でもこれって、生まれる前から決まってることだから、あいつ自身には変えられないんだよな?」 結局どうあがいても無駄だ。という形で翔子が締めくくった。 「そんなことないですよ。可愛いじゃないですか?」 花織だけが唯一反発意見をだした。 「確かに可愛いかも知れないけど…」 「うさぎだよ? う・さ・ぎ。」 「うさぎさん可愛くて良いじゃないですか?」 「可愛いというより、これはむしろ恥かしい…。」 「うん。太助のいうとおりだな。」 「でも、偶然なのかな? 意図的なのかな?」 「偶然だろ?」 「そうだよな。大昔の人間に意図的にこれをデザインできるとは考えがたいもんな。」 と放課後の2年1組で、いつもの面々が机の上に置いた一枚の紙片を囲んで、なにやら討論のようなものをしていた。因みに精霊3人組は、この場にいない。彼女達はそれぞれ用事(夕飯の買い物、職員会議、新試練の考案)があって席を外していた。 ことの発端は翔子が持ってきた一枚の紙片からはじまった。今日は珍しく翔子がサボらずに参加した掃除の時間。担当区域の社会化準備室で偶然それを見つけた。はじめにそれを見たときには、ひとめでそれが何か翔子にはよく分からなかったが、よくよく見てみると知った単語が紙片のあちこちに書かれてあった。そしてその中に、今現在論点となっているそれを見つけた。まるで何かの悪い冗談のようだった。こんなものが本気で存在するなどと、それこそ人知を超えた精霊達の存在の方が幾らかまともにすら思えてくるような代物だった。あまりに面白おかし過ぎるので、思わず無断で拝借してきてしまったのである。あとで社会科教師のルーアンのつてでこっそり返しておけば、多分問題にはならないだろう。 「おや? 皆さんおそろいで。いや、シャオさん達が居ませんね。」 と、そこに平日は購買へ、放課後と休日は実家で家業に勤しむ勤勉な好青年が現れた。 「シャオ達は用事があってここにはいないよ。それよりも…。」 「噂をすればなんとやらってヤツだな。」 「ときの人現るって感じだね。」 「ふっ…哀れだな。」 「可愛いから良いじゃないですか?」 一言に言いあらわせない、色々な感情の入り混じった。言葉と視線を受け、彼は少し不快そうな顔で言う。 「勝手に人を哀れんだりして。失礼な人たちですね。一体、私が何したって言うんですか。」 「いや、お前は何もしてない。」 「何もしてないのに、こうなってるから、哀れんでるんだ。」 「出雲さんは多分、被害者(?)なんですよ」 「確かにあれはちょっと可哀相だよな。」 「だからなんで、可哀相なんですか? 可愛くてあたし好きですよ。」 口々に慰めの言葉のようなもの言っているが、唯一、花織だけはなにやら弁護のようなもの言っていた。しかし、当の宮内出雲には、彼らが一体なにについて自分を、哀れんだり、可哀相だと言ったりしているか皆目見当がつかなかった。 「一体、皆さん何の話をしているんですか? 来ていきなり、同情されたりしても、私には何がなんだかさっぱりわかりませんよ。」 その言葉を聞いて、全員が今回の話の要点を当事者本人に聞かせていないことにようやく気が付いた。 翔子が一同を一度見回してから頷く、示し合わせたかのように、見回された面々もそれにあわせて同意を持って頷く。ただならぬ雰囲気に少し気圧されたが、出雲の疑問は膨らむばかりだった。 「じゃ、聞くけどさ。これってマジなの?」 全員を代表して翔子が、問題の個所を指差しつつ、紙片を出雲に見せた。 「こ、これは…。」 出雲が言葉に詰まって息を呑み、食い入るように紙片のじっと見る。注目を集めるには、かなり絶妙な溜めだった。 「これは…その…」 目を落としていた紙片から顔を上げると、そこにいた全員が出雲を注目していたことに出雲は少々驚いた。 「………。」 出雲は彼らしからぬ渋い顔をした。どうやら明確な回答を目の前の中学生達は求めているらしい。好奇心旺盛の瞳が、自分の答えを今か今かを待ち望んでいるのが、手にとるように分かった。鎮痛な面持ちで出雲は口を開く。 「………えっと、ほ、本当です。」 「「「………!!」」」 どっ! と2年1組の教室は爆笑の渦に巻き込まれた。こうなることが分かっていたから彼は答えることを渋ったのだ。まさかこの歳になって、子供の頃の悪夢を繰り返すことになるとは思わなかった。笑うような失礼な輩は放っておくとして、真面目に興味を示した子達には、きちんと答える気構えくらいは見せた。いくら慣れたこととはいえ、こんなことでいちいち腹を立てても仕方が無い。これも宿業と思って諦めることにしたのは一体何年前からだろうか? それにしてもその中で一際腹立たしいのは七梨太助の爆笑振りである。笑いすぎて足に力が入らず、床に膝をついて腹を抱えて笑う姿など、姉の七梨那奈に憎らしいくらいそっくりだった。やはり彼らは姉弟だ。それに輪を掛けて失礼極まるのが野村たかしだ。彼はあまりにおかしすぎて、座るどころか床を転げまわって爆笑している。良い床掃除になりそうだ。彼のきっと見事に全身ほこりだらけになるだろう。そして次に来る質問は、最早お決まりだった。 「これって、昔からなんですか?」 と花織。 「ええ。先祖代々伝わる由緒正しいものです。」 「このデザインって意図的なんですか? 偶然なんですか?」 もっともらしい質問をする、乎一郎。 「多分、偶然でしょう。さすがに私もその話については何も聞いてませんので、はっきりとしたことは申し上げられませんが…。」 「なぁ、このことで爆笑されるのこれで何度目?」 一番癇に障る質問を翔子が投げた。 「その質問にはお答えしかねます。」 そのやりとりで、笑いの火種に再び引火したのか、太助、たかし、翔子は再び爆笑し始めた。 「私はこれで失礼します。」 出雲は極めて平静な表情を保ちつつ、紙片を置いて教室を去っていった。 たかし達の爆笑する声を背中に聞きながら。 出雲によって再び机の上に戻された紙片。それは鶴ヶ丘の古い地図だった。地図の表題は『鶴ヶ丘郷土史に残る名家と家紋』と書かれていた。 おしまい あとがきもどき どうも、ふぉうりん です。前々から思っていた疑問を、自分的に面白おかしく書いてみました。 この話を見てピンとこない方は、『エニックス版、まもって守護月天! 第4巻』の人物紹介を参照してください『宮内神社家紋』なる正気の沙汰では絶対ありえないデザインの家紋がページの右下に描かれてます。つーか、あんな家紋の家に生まれたら、正直へこみます(笑) でも彼って絶対由緒正しい名家の生まれのはずなんですよね? でも、あの家紋はちょっと不幸かも…いや、あの家紋を誇りに思えてこそ、真の宮内家の後継ぎたるべきなのでしょうか? 願わくば、このネタが既ネタではないことを祈りつつ 2003年9月7日 ふぉうりん |
303 | Reply | どのような意図が… | 空理空論 | URL | 2003/09/09 02:14 | |
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こういう話を見ると、実はあの家紋には意図的なものが… と思いたくなる私です(笑) とりあえず教室の床掃除が偶然にもできたという面白い効果をもたらしたのでよしということで(爆) …しっかしやっぱり意図的なんでしょうかねぇ(違う意味の<笑) 二度目やった時(やるなよ)出雲にーさんが果たしてどういう反応をするのか… (って、多分無視するかてきとーに流して終わりだろうな…) |
307 | Reply | ちょっぴり笑えました | ロクト | 2003/09/12 02:02 | ||
cc9999 | ||||||
その家紋は、実際存在したらまずいでしょうね。 でも、笑わしてもらいました。 もっとも、宮内出雲にとっては屈辱的でしょうが。 その家紋を引き継ぐ人たちに訊いてみたいような、みたくないような。 ……水戸黄門のお爺様に失礼なのでは? 何気なく思ったりします。 |
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