210 | Reply | 毛玉生命体の恐怖 | よしむら | 2002/11/06 11:02 | ||
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「あ…暑い…」 俺はいつものように人形劇をやっていたが誰も見ないどころか人っ子一人通らず、 俺は炎天下の中一人寂しく人形を動かしていた。 「ちくしょう…暑い、暑すぎる…このままじゃマジで溶けるんじゃねぇか…」 「ぴこー」 唯一の観客である毛玉が返事をする。 「…おい毛玉、俺の人形劇を見たければ金を出せ、金を」 「ぴっこり」 俺の言葉が通じたのだろうか、ポテトはゆっくりと動きだし―、 例の放送禁止ダンスを披露した。 「ぶっとべ毛玉ーっ!」 どげしっ! 「ぴぃーこぉー…」 俺のキックによってポテトは青い空の彼方へと消え去っていった。 全く…期待してなかったとはいえアレはないだろう、アレは。 つくづく訳のわからん生命体だ。 「ぴこっ」 ぶっ飛ばしたそばからもう戻ってるし… 「おい、毛玉…」 「「ぴこ?」」 「………」 暑さのあまり俺は幻覚でも見てるのか? 「「ぴこぴこ」」 ポテトが二匹いるように見えるんだが? 「こんなはずはないっ!これはきっと蜃気楼だっ!」 俺は暑さで朦朧とする頭をなんとかはっきりさせてもう一度目の前を見た。 「「「ぴっこり」」」 増えてるーっ!? 俺は思わずその場から逃げ出してしまっていた。 「聖ーっ!俺はとうとうおかしくなってしまったっ!」 「今頃何を言っているんだね君は」 俺は逃げ出したその足で霧島診療所へとやってきた。 何か開口一番に失礼な事言われたが。 「あー、往人くんだぁ、どうしたのぉ?」 「おぉ聞いてくれ佳乃、ポテトが、ポテトが増える幻覚を見たんだよぉっ!」 「それ幻覚じゃないよ」 「「「「「ぴっこり」」」」」 「ぎゃーーーーっ!!」 佳乃の後ろから白い毛玉が次々と現れた。 しかもさりげなくまた増えてるし! 「往人くんたら大袈裟だよぉ、こんなに可愛いのにねぇ」 「「「「「ぴこぴこ」」」」」 たくさんのポテトと戯れる佳乃。 なんだか佳乃が毛玉に埋もれていくみたいだ。 「あはは、ポテトくすぐったいよぉ」 待て、ポテトが佳乃にじゃれつくにつれて白い毛がどんどん体積を増してる。 ポテトが増えてる…いや、違う! 佳乃の全身が白い毛に包まれていく!? 「わっ、いつの間にやらあたしふわふわになってるよぉ」 とうとう佳乃は顔以外の全てが白い毛に覆われてしまった。 見た目ではただの白い着ぐるみだが、これは本当に体の一部だと直感で感じた。 「凄いよ、佳乃りんはポテト人間1号さんだよぉ」 なんで、そうのんきなんだお前は。 「おい聖っ!あんたの妹をなんとかしろ…ってうわぁっ!」 「国崎君、人の顔を見て叫ぶとは失礼だぞ」 違うっ!俺が驚いたのは顔じゃなくて体っ! いつの間にか聖も全身が白い毛にっ! 「お姉ちゃんはポテト人間2号さんだね。 それじゃ往人くんを3号にしてあげるよぉ」 その瞬間、俺は診療所を飛び出した。 さらばだ霧島姉妹。 「な、なんだこりゃっ!?」 外に出た俺は信じられない光景を見た。 町行く人々がみな白い毛に包まれたポテト人間(佳乃命名)になっている。 しかもそれが当然であるかのようにみんな普通に町を歩いている!? 「どうなってるんだ…?」 俺はふと気になる事があって例の無人の駅へと向かった。 「遠野っ!いるかっ!?」 「やかましいぞ国崎往人ーっ!」 出てきたのは遠野の相棒のみちる。 こいつはいつもと同じだ。 よかったまだ無事だったか。 「遠野はどこだっ!あいつは無事なのかっ!」 「うるさいっ!美凪はお前なんかにかまってる暇ないんだぞっ!」 このクソガキ…こっちが真剣に聞いてるのに… 「あら、みちるに国崎さん…」 「あっ、美凪ぃー」 と、呼ぶまでもなく向こうから来てくれたか。 「遠野、一体この街に何が起こってるんだ、教えてくれ…げ!?」 「どうかしましたか?」 遠野、すでに全身真っ白。完璧なポテト人間。 ちくしょう、遅かったのかっ! 「おかしな国崎さん…さすがは芸人さんです」 「いや、おかしいのはお前の状況だ!」 「美凪を馬鹿にするなーっ!」 どぐっ! 「げぶっ、みちるてめぇ…」 「みちる、ナイスキックで賞…」 いつものごとく、差し出されるお米券。 全身白い毛に包まれてるのにどこから出したんだ。 「わーい、美凪にお米券もらったよー」 無邪気に喜ぶみちる。 だから、お前もこの状況に疑問を持て。 「んに?そういえば今日の美凪はすっごく白くてふわふわだね」 おぉっ、やっとそこに触れてくれたか! 頼む!遠野の目を覚ましてやってくれ! 「みちるにも、ふわふわを進呈…」 「にょわ?」 遠野がそっとみちるを抱き寄せて頭をなで始めた。 するとみるみるうちにみちるの全身が白い毛で覆われていく! 「これでみちるもふわふわ…」 「やったー、美凪とお揃いだー」 あぁ、みちるもポテト人間にされてしまった。 つーか本人喜んでるよ… 「では…国崎さんにもふわふわを…」 「けっこうでございますっ!」 俺は二人に背を向け、またも逃げ出した。 もうこうなったら残るはあの一家しかない。 「観鈴っ、晴子っ!」 大慌てで神尾家に行くとちょうど二人が家の前でバイクに乗っていた所だった。 後ろに観鈴を乗せて晴子は今にもバイクで走り出そうとしている。 「あっ、往人さんだ」 「おぉ、居候。あんたはまだ無事やったか。 もう知っとる思うけど今この町えらい事なっとる。 みんな白い毛に包まれておかしゅうなってしもた!」 おぉっ、やっとまともな反応が返ってきた! 「今からうちら二人で逃げる所や。居候、あんたも上手く逃げるんやで」 「待て!俺は!?」 「うちらこれからバイクで逃げるんや。さすがに3人は乗せられんわ」 そう言って晴子はバイクのエンジンをかけ、 「ほな達者でなっ!」 と、アクセルをふかした。 ところが、いくらアクセルをふかしてもバイクはちっとも前に進まない。 「なんや?」 「は…晴子!後ろ!」 俺はバイクの後ろにとんでもない物を見てしまった。 「なんや…うわぁ!?」 バイクの後ろには数十匹のポテトが連なるようにしがみついていた。 それが重くてバイクが動かなかったのだ。 「くそっ!邪魔や!」 晴子はバイクから降りてポテトを蹴り離そうとした。 しかしその時、ポテト達が晴子に群がってきた! 「うっ、うわぁっ!」 瞬く間に晴子はポテトの山に埋もれてしまった。 「お母さん!」 「観鈴!逃げるんや!あんただけでも!」 ポテトの山の中から晴子の悲痛な叫び声が聞こえてくる。 「観鈴、今やから言うけどほんまはあんたの事大好きやったで…」 「お母さん…」 声が震えていた観鈴は不意に真剣な表情でポテトの山を見つめた。 「お母さん今助けるからねっ!」 「やめろ観鈴!?」 俺が止めるのも聞かず、観鈴は無謀にもポテト達に突撃した。 「が、がおっ!?」 当然観鈴もポテトに捕まって白い毛に埋もれていく。 「にはは…お母さん、一人じゃないよ、観鈴ちんも一緒…」 「観鈴…」 弱々しい観鈴の声を聞きながら、俺はどうすることも出来なかった。 「ちくしょう…!」 悔しい思いをしながら俺はその場を退散していった。 「俺だけでも逃げ切ってやる…あの二人のためにも…」 そう決意した俺はその足で町からの脱出を試みた。 しかし、そこで俺の前に障害が立ちはだかった。 「げぇっ!」 とんでもない数のポテトが集まって道を塞いでいる。 100匹くらいいるんじゃねぇか… くそっ、これじゃ逃げられねぇ! 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」「ぴこっ」 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!! お、恐ろしい!ポテト達が一斉に例のダンスを踊りだした! 一匹だけでもアレなのにそれが大量に! これ、マジで人殺せる光景だぞ。 「捕まってたまるかぁぁぁぁ!!」 俺はなんとか脱出経路を探して町を走り回った。 その後を追ってくるポテト達からも必死で逃げ続けた。 しかし町のどこに行ってもポテトが立ちはだかり、 逃げるにつれどんどんポテトの数は増えていった。 そしてとうとう俺は防波堤でポテトに囲まれ、追いつめられてしまった。 「くそぉ…」 ポテトの数はもう信じられない数に膨れ上がっていた。 というか道という道が完全に真っ白になってやがる。 「往人くん、見つけたよぉ」 「随分手間取ったな」 そこでポテト達の中からポテト人間と化した佳乃と聖が現れた。 「国崎さん…見つけました…」 「追いつめたぞ国崎往人ー!」 続いてこちらもポテト人間となった美凪とみちるが登場した。 「居候…こんな所におったんか…」 「にはは、往人さんみっけ」 そして観鈴と晴子も全身白い毛のポテト人間となってしまっていた。 6人のポテト人間がじりじりと俺に迫ってきた。 「さぁ、往人くんをポテト人間に任命するよぉ」 「国崎くん、もう逃がさんぞ」 「国崎さんにもふわふわを進呈…」 「覚悟しろ国崎往人ー」 「なぁに、怖い事あらへんて」 「にはは、往人さんも観鈴ちん達と一緒」 6人の美人と美少女に迫られるのはステキなはずだが 今の俺には恐怖としか映らなかった。 「やめろ…やめてくれ…いやだ……助けてくれぇーーーーーーーーっ!!!!」 「ぎゃああああああああああああああ!!!」 俺は叫び声とともにベッドから飛び起きた。 「はぁ…はぁ…」 ………夢? 畜生…使い古されたオチを… 「目が覚めたかね、国崎くん」 そこへドアを開けて聖が入ってきた。 もちろんおなじみの白衣姿だ。 という事はここは霧島診療所のベッドか… 「無事で何よりだ。もし万一の時はどこに埋めようか悩んでいた所だ」 待て。何か凄く不穏当なセリフだぞ。 「どういうことだ?」 「覚えてないか?君は佳乃の料理を食べて気を失っていたのだぞ?」 「…そういえば…」 自信作だと言う佳乃の笑顔と聖の「食わなきゃ殺す」という脅迫に負けて 俺は佳乃の料理を食べて…それからずっと気絶していたのか… てことはさっきの夢はそれが原因!? 「国崎くん…」 「なんだ?」 「つくづく君は頑丈だなぁ」 「怖い誉め方するなぁーっ!!」 後書き ちゅうわけで初AIR。 ホラーギャグに挑戦してみました。 どこがホラーだとツッコミは無視して(笑) これだけはボツにせずきちんと書きたかったんです。 オチはエクセルサーガパクってるけど(爆) |
216 | Reply | 136匹のダンス… | グE | 2002/11/13 20:40 | ||
cc9999 | ||||||
これはホラーです。ほんとに。(爆) ポテトとはほんとに謎の多い生物ですよね。 このようなことが実際に起こってもおかしくない と思えるくらい(笑) |
226 | Reply | 哀れな | 空理空論 | URL | 2002/11/25 00:07 | |
cc9999 | ||||||
謎な生命体である以上、ポテトには何が起こっても不思議ではなさそうですが、 やっぱり被害に遭うのは往人ちゃんなのね(笑) それにしてもよしむらさんは初AIRでしたっけ。 どうもそういう気がしないのは気のせいかしら(笑) |
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