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「太助様。今、時代はヒーローなのです」
「はい？」
いきなり妙な事言い出すシャオに太助は怪訝な表情を浮かべた。
「先日太助様がたかしさんから借りてきたビデオ…
私も拝見させてもらいました」
「アレか…宇宙刑事とか仮面ライダーとかの全集…」
「守る事を役目とする身の私はアレを見て感激しました。
今後の太助様をお守りする方針として実に参考になりました」
「参考？」
「安心して下さい！これからいかなる危機が迫ろうとも
必ず太助様をお守りしてみせますから！」
「はぁ…」
その数日後。
「荷物重いだろ。一個持つよ」
「え、悪いですよそんな」
「いいって、気にすんなよ」
太助とシャオは夕食の材料を買って二人で自宅へと帰る所であった。
その時っ！
「ほーっほっほっ！二人とも随分仲がよろしい事っ！」
「ルーアン！なんで意味もなく電柱の上にっ！？」
「（無視）だけどこのまま二人をラブラブになんかさせないわっ！
行きなさいっ！陽天心ロボっ！」
ルーアンの呼びかけとともに奇怪な怪人が二人の前に立ちはだかった！
…ロボといっても陽天心かけた粗大ゴミを合体させただけなのだが。
「さぁ！二人のラブラブムードをぶち壊しちゃいなさい！」
「くっ、どうしよう…ってアレ！？シャオ！？」
いつの間にやらシャオの姿が消えていた。
その頃シャオは路地裏に隠れて支天輪を取りだした。
「いよいよ出番ですね…行きます！」
シャオは右手に持った支天輪を左胸の前に掲げた！
「月光転身っ！！」
ナレーション『守護月天シャオリンは支天輪を左胸に掲げて
「月光転身」というキーワードを唱える事により、
支天輪に秘められた月のパワーを具現化させた装甲を纏った、
月光戦士シャリオンへと変身するのだ！』
ちなみにキーワードを略すと「月転（げってん）」だ。どうでもいいが。
「とうっ！」
変身したシャオ――いや、シャリオンは路地裏からジャンプして太助達の前に降り立った。
普通に出てこいという意見は却下だ。
「月光戦士シャリオン、見参！！」
ジャキィィィィィィン！！（効果音）
「……何してるんだ？シャオ？」
太助はすぐにこいつの正体がシャオだと気付いた。
シャリオンは全身を銀色を基調としたメタリックな装甲に包み、
顔すら完全に覆っていて、その姿はシャオの面影は欠片もない。
では何故シャオだとわかったのか？
…声が國府田マリ子のままじゃバレバレです。
「いいえ、私はシャリオンです」
「いや、シャオだろ？」
「シャリオンです」
「でもシャオ…」
「シャリオンです」
「………」
「シャリオンです」
「わかった。シャリオン…何しに来たんだ？」
「私は愛と正義と太助様を守るために参上しました。
私が来たからにはどうか安心して下さい」
「はぁ…」
シャリオンは太助をかばうように前に出ると
いまだに電柱の上のルーアンを指さした。
「悪の手先ルアーン大佐！あなたの思うようにはさせません！」
「あたしいつから大佐になったのよ」
もっともなツッコミだがそれに対する答えはどこからもない。
「えぇいもうなんでもいいわ！改めて行きなさいっ！陽天心ロボっ！」
ルーアンの命令で陽天心ロボが襲いかかってきた！
「シャリオンパーンチ！」
ドゴンッ！
シャリオンの装甲に包まれた拳がロボの胴体に命中した！
ロボは苦しいのか後ろによろめいた。
「シャリオンキーック！」
バゴンッ！
続いてシャリオンは強烈なキックをロボにお見舞いした！
その威力にロボは大きく後ろに吹っ飛ばされた！
それを見たルーアンの顔に冷や汗が流れる。
「くっ！手強いわね！…陽天心ロボっ！こうなったらアレをやるのよっ！」
命令を受けたロボは両腕を水平に伸ばすと高速で回転を始めた！
「なんですかあれはっ！？」
「これぞ攻撃と防御を兼ね備えたスピンアタックよっ！」
「………」
太助は思った。
ロシアのプロレスラーの必殺技と同じじゃん、と。
「こんなものっ…」
シャリオンは高速回転を続けるロボに突撃したが―、
ガァンッ！
「きゃああっ！」
高速回転する腕にはじかれて吹っ飛ばされてしまった。
塀に思いきり叩きつけられ、大きなダメージを負うシャリオン。
「ほーっほっほっ！言ったでしょ？攻撃と防御を兼ね備えたと！
もうあなたにこのロボを倒す事は出来ないわ！」
「くっ…」
ふらつきながら立ち上がったシャリオンは
得意満面に高速回転をしているロボを見つめた。
「確かに直接攻撃は難しいですね…ならばこれを使うしかありませんっ！」
変身後、シャリオンの左胸に装着されていた支天輪が輝きを放つと
支天輪の中から大きな筒型の武器が現れた！
ナレーション『シャリオンは支天輪から武器を取りだして使う事が出来るのだ！』
「ちょ、ちょっと何それ！？そんなのアリ！？」
いきなり武器を出したシャリオンにルーアンは思いきり動揺している。
「これでもくらいなさいっ！」
シャリオンは筒型の武器を構えて、いまだに高速回転をしているロボに照準を合わせた。
「シャリオンバズーカぁーっ！！」
ドッゴォォォォォォン！！
バズーカから放たれた弾丸の直撃を受けたロボは爆発し、木っ端微塵に大破した。
「こ…こんな馬鹿な…お、覚えてなさいよっ！
今度会った時はただじゃおかないわよっ！」
ありがちな捨て台詞を吐きながらルーアンは逃げ去っていった。
今度会った時って、帰る家同じなのに。
「ふぅ…勝ちました。もう大丈夫ですよ太助様、悪は去りました」
「そ、そうかぃ…」
「それでは私もこれで去ります。でも忘れないで下さい。
月はいつでもあなたを見守っている事を。
そして…あなたを大切に思っている者がいる事を…」
そう言ってシャリオンは路地裏へと消えていった。
「太助様、ご無事でしたか？」
その路地裏から入れ替わりにシャオが現れた。
「あぁ…無事だよ。シャリオンのおかげで」
「まぁ、シャリオンさんに会われたんですか？私も是非会ってみたかったですー」
…マジでばれてないと思ってるんだろうか。
太助は深く考えるのをやめ、とりあえず自宅に帰るのであった。
次回予告！
シャリオンへの逆襲を誓うルアーン大佐は
新たな陽天心ロボで戦いを挑んできた！
それに立ち向かっていくシャリオン！
しかしその戦いを見守る怪しい影がいた！
次回、月光戦士シャリオン第２話、
『月と家政婦は見た！』
ご期待下さい！
………嘘ですよ？
後書き
また阿呆なネタを書いてしまった…
やってみたかったんよ特撮ヒーローネタ。
たいして詳しくもないくせに。
だから特撮ファンの皆様、詳しいツッコミとかご勘弁下さい。
…相変わらず無茶やってるな俺。 |
