288 | Reply | 紫陽花(あじさい) | ふぉうりん | URL | 2003/06/28 03:15 | |
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七梨先輩とシャオ先輩が仲良く下校している姿を見た。胸がチクリと痛いんだ。 追うことも声を掛けることも出来ずに、あたしは立ちつくす。 雨が降り出してきた。傘を忘れてしまった。 雨は容赦無くあたしを打ち付ける。 いつのまにか俯いてた。地面ばかり見ている訳にもいかなかったので、顔を上げた。 遠目に一本の傘に仲良くふたりで入ってる彼らの姿を見てしまい、酷く惨めな気分になった。 見てられなかったので、視線を逸らす。 逸らした先に咲いていた紫陽花(あじさい)の花が、憎らしいくらい綺麗だった。 突きつけられた現実に 『あたしの想いは届かないの?』 吐き捨てるように問うが、答えなど得られなかった。 『頑張ればきっと届く』 誰かの言葉が頭を過ぎった。 「嘘よ」 頭の過ぎった言葉に反論していた。 悲しみで心が折れそうだった。 「そんな所で、突っ立てると風邪引くぜ」 すこしぶっきらぼうな言葉と共に、傘が差し出され、あたしに打ち付ける雨を遮った。 無言であたしは振り向いた。 「・・・」 そのときあたしはどんな顔をしていたのだろう・・・ 「泣いてるじゃないか。どうしたんだよ」 「これは雨のせいです。泣いてなんかいません」 強がりだった。なのにどうしてあなたが悲しい顔をするの? おかしいじゃないですか。 悲しいのはあたしなのに、どうしてあなたがそんな顔をするの? 「なんで、先輩なんですか?」 「ごめんな。あいつじゃなくて」 会話がそこで一度、途切れる。 「先輩が謝るのって、おかしいじゃないですか?」 些細なことで、つっかかる 自分が変なのはよく分かる でも、どうして変なのかは分からない どうしてこんなに苛立つか…それでも言葉は止まらない たくさんの罵声を浴びせた。 先輩は黙ってその言葉を受け続けた。 ・ ・ ・ 「どう? 少しは、落ち着いた?」 あたしはコクリと頷く 「何があったか知らないけど、くよくよするのは花織ちゃんらしくないよ」 そうか。先輩はあれを見てないんだ。だからそんなのんきにこんなことが言えるんだ。 「あたしらしいって一体何なんですか?」 腹立たしくなったので、きつい語調で反発する。 「そうだな…」 先輩は別段気にした様子もなく、少し真面目な顔で空いた手をあごにやり、考えるような仕草をする。不覚にもその横顔が少し格好良く見えてしまった。 「乙女チック一直線で前向きなのが、君らしい?」 「疑問系? なんですか? それ? よくわかんないじゃないですか?」 「う〜ん。言葉通りの意味だけど…駄目?」 このひとに分かりやすい説明を求める事自体が無理な相談だった。 不器用だけど、先輩なりにあたしを励ましてくれたのはよく分かった。それが今のあたしには、とても嬉しかった。 「ねぇ、先輩。聞いていいですか?」 「ん?」 「どうして、そんな風に励ましてくれたるんですか?」 『だって、放って置けないじゃん?』 あれ? 何かがダブって見えた。 「今の…なんだか野村先輩が七梨先輩みたいな事…」 「なんか言った?」 「い、いえ、何でもありません!」 あたしは手を前に出し、顔と両手をぶんぶんと何度も振った。 「そう? 少し、元気なったじゃないか」 と先輩は目を細めて優しく笑った。 「そ、そうですか?」 うぅぅ、あたしには七梨先輩という心に決めたひとが居ながら、 今、野村先輩の笑顔に少しどきっとしてしまいました。七梨先輩ごめんなさい! 心の懺悔は誰に届くのか そんなことをしてるうちにあたしの家の前まできた。 「送ってくれて、ありがとうございました。助かりました」 「…まっ、元気出せよ」 「………」 なんとなくこのまま別れてしまうのは勿体無いような気がした。 「上がっていきますか? お礼にお茶くらいはご馳走しますよ」 「そうだな。一杯ご馳走になって行こうかな?」 「花織の特製ハーブティをご馳走しますよ♪」 リトマス試験紙が青くなる瞬間を見たような気がした。 「お、俺、急用思い出したわ。か、帰る! その、ごめんな、花織ちゃん。お茶はまた今度な!」 脱兎のごとく逃げていく先輩の背中にあたしは最後の罵声を浴びせた。 「のむらせんぱいのばかー!!」 おしまい あとがき 梅雨にちなんだネタを上げたかったので、書いてみました。 煮え切らない終わり方をしてしまったのは全ては私が未熟だからです 本当は他の原稿書いてないといけないのに…なにやってるんだか 2003年6月26日 ふぉうりん |
289 | Reply | 気分転換はいいものですよ。 | Foolis | 2003/06/28 13:30 | ||
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ということにしておきましょう。(笑) そう考えて書くと楽しいですし。 たかしをお兄ちゃんとしてみている(この時点で結構大胆なんだよなぁ) ということで自分を納得させている花織ですが たかしとの関係がこんなくすぐったい関係で描かれていてなんかいいなぁと思いました。(ちょっと意味不明かも) では |
293 | Reply | ハーブは… | 空理空論 | 2003/07/07 00:00 | ||
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花織ちゃんならハーブがメインでティーがサブのハーブティーを作るのでしょうか(笑) かなり別種の雰囲気というものを感じました。冒頭部分ですね。 ああまで落ち込んでるってのが印象的です。 (いつもならダッシュして強引に割り込む、みたいな) そんな時に出たたかしがやけに輝いて見えました。 ただ、落ち込み状態からアップするまでにはもう少し言葉がほしくもありますが…。 ちなみにこれを読んだ場所ってばお客様の事業所内だったりする(汗) (だって待ち時間なんだもん…<言い訳) |
290 | Reply | リトマス試験紙・・・ | 路崎 高久 | 2003/06/29 00:24 | ||
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「ふぉうりん」さん どうも、楽しく拝見させていただきました。タイトルにも書いた通り、リトマス試験紙ってのが個人的に(何故か)笑えました。どうでもいいけど、赤から青になるのって酸性でしたっけ?アルカリ性でしたっけ? 紫陽花もリトマス試験紙も、あざやかな青色。いや〜いいですね、こういうの(笑)。 愛原の料理(ここではお茶か)はすさまじい出来だということですが、やっぱり「愛のエプロン」とかも裸足で逃げ出すほどなんでしょうか?などとどうでもいいことを言いつつ。 では、また。 |
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