150 | Reply | 6月中旬の・・・ | ふぉうりん | URL | 2002/06/30 15:37 | |
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その日もキリュウが目覚めに仕掛け作りに興じていると、あるものを見つけた。 「ん? これはなんだ?」 紙である。そこには子供の字とおぼしきものが書かれていた。 「やはり主殿のだろうか。明日聞いてみるとするか。」 彼女は再び朝の仕掛け作りに戻る ・・・翌日。 どがっ!! ベッドがひっくり返り彼女が宙に投げ出される。 すたっ。 彼女は見事に着地したが、寝ぼけ眼(まなこ)で半分目を閉じた状態だった。 「ふ〜〜。・・・・今日も、どうにか起きれたか。」 彼女の後ろには、ひっくり返ったベットが無残な姿をさらしていた。 ・・・・眠い。彼女の頭はいまだ眠気に支配されていた。 「・・・・さて、顔でも洗ってくるとするか。」 素足の彼女には、廊下のひんやりとした感じが足の裏を刺激し、意識の覚醒促す手助けをした。 「ん?」 一階に下りると、そこは妙に静かだった。 おかしいな。とキリュウは不思議に思った。普段ならこの時間は、太助やルーアンが、学校へ行く支度をしているころなのだが・・・・。 「あら、キリュウさん。おはようございます。」 「ああ、おはようシャオ殿。」 「今日は早いんですね。なにかご予定でもあるんですか?」 「早い? 予定? いや、私はいつもどおり主殿に試練を与えるだけだが。」 「そうなんですか? 私はてっきりなにか予定でもあるものかと・・・。今日は日曜日ですから。」 「え? 日曜日?」 キリュウはシャオの言葉に少し驚いた顔をし、シャオはキリュウの表情から、彼女が今日が日曜日ということを忘れていたことを理解した。 「あ〜。キリュウさん。いつもと同じように起きちゃったんですね?」 「ああ。」 キリュウは「やってしまった」いう羞恥に、わずかに頬を赤らめ、短く頷いた。 「うーむ。これは困った。寝直したいところなのだが、顔も洗ってしまったので、すっかり目が覚めてしまった。」 キリュウは少し困ったと、独り言ちた。 「だったら、早起きしちゃった分、楽しく過ごした方が良いですよ。」 「それこそ『今日は、いつもより早く起きて凄く得した!』っていうくらいに・・・ね?」 ・・・・!! 「シャオ殿は良いことを言うなぁ。あなたにそう言われなければ『なんてもったいないことしたんだ!』って後悔するところだったぞ。」 キリュウはしみじみと、シャオの言葉に感銘を覚えて頷いた。 「そうだ。ちょうど良い。昨日見つけたものがあるんだか、それがなんなのか、ちょっと一緒に考えてくれないか?」 「はい? べつに構いませんが。」 キリュウは2階の自室に戻り、目の覚めた頭で冷静に自分の部屋の状況を見やった。いつものこととはいえ、よくよく見ると派手にやったものだ。 『万象大乱!』 ひっくり返ったベットをはじめとして、ミニチュア大の大きさまで縮小された家具などをキリュウは元の位置に配置しなおし、再び万象大乱で元の大きさに戻す。毎日のことなので、既にその一連の動作も手馴れたものだった。そして、彼女は目的のものを探し始めた。 「おお、あったあった。」 早速キリュウはそれを携え、シャオの待つリビングに向かって行った。 再びリビング 「シャオ殿。これなんだが。」 「なにか書いてありますね『かたたたきけん』? なんなんでしょうね?」 「ああ、読んでそのままの意味なら『肩叩き券』なのだが。一体なんでこんな物が私の使っている部屋に落ちていたのかが、さっぱり分からないんだ。」 「太助様か那奈さんに聞けば、なにか分かるかもしれませんね。」 「そうだな。」 「主殿達が起きるまでは、まだ時間がありそうだな。」 「そうですね。お茶でもいれましょうか?」 「ああ、頼む。」 ずずっ 「シャオ殿のいれたお茶は、いつ飲んでも美味いなぁ。」 「ありがとうございます。」 「私も見習いたいものだ。」 「練習すれば誰にでも出来ますよ。」 「そうか? なら今度、私にも教えて欲しいものだな。」 「ええ、喜んで。」 「それにしても、最近、湿気が多くて少々過ごしにくいな。」 「そうなんですよ。お洗濯物が乾きにくくって困ります。」 「そうだな。この家は大所帯だからなぁ。」 「洗濯物も、もう少し減ると助かるんですけど・・・・。」 キリュウはすっかり所帯じみた会話をシャオと弾ませていたが、ふと思い当たることがあった。 「あっ、汚れ物が増えるのは間接的には私のせいか・・・・。すまぬ。」 「いえ。私はそんなつもりで言った訳じゃ・・・。」 キリュウが太助に課す試練は激しいもばかりだ。砂塵が舞えば、土煙も上がり、太助の服も汚れる。服が汚れれば、帰宅後着替える。当然洗濯物が増え、最終的に家事全般を任されてるシャオに負担がかかる。とはいえ、いちいち服なんかに気を使う試練なんて、聞いたこともなければ、考えたこともなかった。 「やはりたまには屋内向けの試練も、もう少し考えてみる必要があるな・・・。」 キリュウは真面目に、シャオの負担をいくらか軽くすることはできないものかと考えを巡らせた。洗濯を太助にさせて「それも試練だ」とか言うことも頭に過ぎったが、それが一体何の試練になるのだか、キリュウ自身も疑問だった。強いて挙げれば、日頃のシャオの苦労をたまには身を持って知るという意味では、よい試練になるかもしれないが・・・。 と、その時、2階から階下へ降りてくる足音が聞こえてきた。 「主殿かな?」 「・・・きっと、那奈さんだと思いますよ。」 キリュウはシャオの自身のあり気な物言いにわずかな疑問を抱きながら、足音の主を待った。 「ふぁ〜ぁ。おはよう。おや? キリュウ、珍しいな、あんたがあたしより早く起きてるなんて。」 「ね?」 「おお!」 キリュウはシャオの予想の的中振りに小さく感嘆の声を上げた。 「ん? キリュウ。一体どうしたんだい? あたしの顔になにかついてるかい?」 「実はだな、那奈殿。つい先ほどシャオ殿が階段から降りてくる足音だけで貴方だと言い当てたんだ。」 「へぇ。そいつは大したもんだねぇ。」 「そんな、そんなに大したことじゃありませんよ。那奈さんはお茶どうしましす?」 「そうだね。あたしはコーヒーをお願いしようかな?」 「はい。ただいま。」 シャオは二つ返事で那奈の要望に答え、キッチンへ姿を消した。 「しかし、不思議なものだな。」 「なにがさ?」 「さきほどのシャオ殿だ。」 「そうかい? いろいろ理由なんていくらでも思いつきそうなもんだろ?」 「まぁ。言われてみれば無くも無いが・・・。どんな理由にしたって、普通は簡単には当てられるものじゃないとは思うぞ。」 「それはそうかもね。『シャオの超能力!』・・・なんてね。」 そう言って那奈はケラケラと愉快そうに笑った。 「・・・キリュウ。」 「なんだ?」 「いまのとこ、突っ込むところ。」 「突っ込む?」 「あたしひとりで笑ってて馬鹿みたいじゃんか。」 「今のは私が悪いのか?」 「まぁ、あんたに突っ込みを期待したあたしが馬鹿だったわ。この手のことは、やっぱ太助かルーアンだな。」 「期待に添えられなくてすまんな。」 「いいって、いいって、きにすんな。」 「おまたせしました。コーヒーはいりましたよ。」 「サンキュ。」 「熱いから気をつけてくださいね。」 那奈はシャオからカップを受け取り、一口すすった。 「いやぁ、相変わらずシャオのいれるコーヒーは絶品だねぇ♪」 「ありがとうございあます。」 「那奈殿。シャオ殿のいれたこーひーを堪能しているところ、申し訳ないが、私の使っている部屋で、こんな物を見つけたのだが。」 キリュウは、昨晩拾った『肩叩き券』を那奈に見せた。 「ん? どれどれ・・・。うわっ、随分と懐かしい物を見つけたもんだねぇ。というか、よくこんなもんが残ってたなぁ。」 「これはなんなのだ?」 「読んでそのまんま『肩叩き券』だよ。」 「これを太助に渡すと、満足の行くまで太助が肩叩き、または肩揉みをしてくれる。」 「ほう。随分と便利な券だな。」 「ただし、親父専用だけどな。」 「それは主殿が、主殿の父上殿に送った券だからか?」 「ま、そんなところだね。しかし、まぁ、今日にその券がひょっこり現れるなんて、なにかの縁かねぇ?」 「?」 「そっか、あんた達は知らなくても仕方が無いよな。」 「今日はね。『父の日』なんだ。」 「そういえば、テレビでそう言ってましたね。」 「母の日があれば、父の日もあって然りか、その日が今日だったとは、知らなかったな。」<母の日はちゃんと知ってたのにそれはないぜ、キリュウさん> 「ほら、よく見てご覧よ。いろいろと愉快なことがかいてあるぜ。」 那奈は愉快そうに、笑いながら『肩叩き券』のそこかしこを指摘した。 ・使用期限、無期限 ・お父さん専用 ・この券は引換券でえす。 ※全て平仮名で書かれてます。 しっかりみると、読み難い字だが(そりゃ子供の書体なんて崩れまくりですから)その他にも、何か書かれてた。 「太助はかなりやる気満々だったんだけど、親父は使うのが勿体無いって、とっておいたんだ。太助は残念がってたけどね。」 「この紙、いや、この券にはそんな思い出がつまっていたのか。」 「なんだか、微笑ましいですね。」 「でも、10年くらい前だからなぁ。あいつ『これ』の存在自体を憶えてるかなぁ?」 「そうだ。いいこと思いついた。賭けをしないか?」 「賭けですか?」 「そう。太助がこの『肩叩き券』のことを憶えてるかどうか。」 「ばかばかしい。私は遠慮する。」 「ノリが悪いな、キリュウは。」 「これも私の性分と言うやつだ。悪く思うな。」 「いや、思うね。なんかこう、もう少しこの場を盛り上げようとかって思わないわけ?」 「これと言って特には・・・。」 「そ。じゃあ、シャオは?」 「そうですね。私は太助様が憶えている方に。」 「おっ、いいねぇ。いいねぇ。キリュウ。少しはシャオを見習えよ。」 「だから、私は・・・。」 「んじゃ、2択だから、あたしは『忘れてる方』な。そうだね。ペナルティは負けた方が勝っ方の言う事を一つだけ聞くってのはどうだ?」 キリュウはふと思った。この賭け。実は一方的に那奈が得をするようになってはいないだろうか? と理由は簡単、仮にシャオが勝ったとしても、無理難題は吹っ掛けることはありえないからだ。それに引き換え那奈は賭けに勝ったら一体どんな事を、シャオにさせるのだろうか? とはいえ、那奈がシャオ相手にそれ程無理なことを言うをはキリュウは思わなかったので、あえてそのことについて口出ししようとは思わなかった。 暫くして目を醒ました太助がリビングに現れた。 「おはよう。シャオ、キリュウ。それに那奈姉。」 「おはようございます。太助様。」 「おはよう主殿。」 「おはよう。太助。顔洗ったらちょっとこっちに来な。」 「うん? わかった。」 言われた通り、太助は洗面所に顔を洗いに行った。 「楽しみだな。」 「なんだか、わくわくします。」 「物好きだな。二人とも。」 洗面所で顔を洗い、しっかりと目を醒ました太助が、リビングに再び現れた。 「太助。これな〜んだ?」 那奈は、高らかに『肩叩き券』を掲げた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・!!! 太助の顔は、驚きという名の絵の具をぶちまけられた顔色になった。 「なっ! 何故それがっ!?」 どうやら、ばっちり憶えていたようである。 「ちっ。あたしの負けか。」 「しかし、よくそんなもん、見つけたな。」 「私が見つけたんだ。」 「そっか。キリュウの使ってる部屋って、もともと親父が使ってた部屋だからな。」 「そうか、それならば合点がいく。」 「しかし、また、随分と懐かしいものを・・・」 太助はそれを掲げしげしげと見つめた。随分経つのに、結構綺麗だな。 「恐らく大事に保管されていたのだろう。」 「そうか。そう思うとなんか、照れくさいけど嬉しいな。」 太助は、苦笑いとも照れ笑いつかない顔をした。 「しかし、親父のヤツいつ使うつもりなんだろう?」 「案外、使うつもりなんて無いんじゃないか?」 「・・・かもね。」 『ふふふふ・・・』 『あはははは・・・』 太助と那奈どちらが先ともなく二人は笑い出した。それにつられてシャオ達も笑いだす。 《家族とは本当に良いものだな。今、自分がこの輪の中にいることが信じられない時がある。本当にここは居心地の良いところだ。》 《役目をおろそかにしてしまいそうなほど、平和で幸せなところ。ずっとこんな時間が続くといいな。》 「あら? みんな何をそんなに楽しそうに笑っているの?」 「ああ、実はね・・・。」 ・・・・・ 「父の日? そういえば、そんなものもあったわね。職員室で誰かが言ってたわ。」 「よくよく考えてみれば、あたし達は、たー様のお父様に感謝しなくちゃいけないものね。」 「たー様のお父様が、あたしの黒天筒。それに、シャオリンの支天輪。キリュウの短天扇を見つけて、たー様のところに送ってくれなきゃ、あたし達はたー様には出会えなかったんですもの。感謝してもしたりないくらいだわ。」 「ほんと、ルーアンさんの言うと通りですわ。」 「ルーアン殿も、たまには良い事をいうものだな。」 「ちょっとキリュウ『たまには』は余計よ。」 「キリュウ。ナイス突っ込み。」 那奈は親指を突き立ててOKサインをキリュウに送った。 「酷いわ。お姉様まで。たー様はルーアンの味方よねぇ?」 「えぇ!? 俺!?」 「なによ。その嫌そうな返事は。」 リビングに再び笑い声がおこる。 「あはははは・・・とこどで、親父は今ごろなにてるんだろ?」 「ほんと、唐突だな。」 「気になる? たー様。」 「まぁね。たまには気にしてやらないと、ね。せっかく今日は父の日なんだしね。」 <っていつ太助に誰が父の日って言ったんだ? ルーアンに事情を説明した時かな? 「そっ、じゃあ、特別出血大サービスよん。」 そして、取り出したりますは、ルーアンの伝家の宝刀コンパクト。なにげに、陽天心召来よりも実用性が高いかもしれない。 「あ〜〜。」 「なるほど。その手があったか。」 「ん? そういえばルーアン、そんな便利なもん持ってたよな。」 賛嘆と納得の声が次々とあがる。 「ふふっ。」 ここぞとばかりにもっと誉めて誉めてな感じで、偉そうにしているルーアン。 「さて、たー様のお父様は、今どこかしら?」 鏡の部分が歪み、太郎助の映像を映しだす。 「あら?」 「どうした。ルーアン? よく見せてくれよ。」 「ルーアンさん。ここって・・・」 太郎助は、物凄く観た事あるようなところを歩いていた。 「まさか・・・いやいや。わざわざこんな日を選ぶのも、あいつらしいかもな。」<父親をあいつって言うな! 「那奈姉、あんまり他人事じゃないだろ? それにしても・・・・マジかよ。」 コンパクトに映る太郎助の歩みが止まる。 ピンポーン 七梨家のチャイムがリビングに鳴り響いた。 終幕 あとがき 恒例の時事ネタです。とっくの昔に父の日なんて過ぎまくってますが・・・ 結局プロットの3分の1くらいしか入ってなかった・・・完全に失敗作ですな。でもオチだけそれなりに、まとまってるだけじゃん。ってこれじゃ駄目駄目だよぉ。 我が父は健在ですので、一応それなりに孝行(?)しておきました。 みなさんの父の日は如何な物ででしたかな? またもキリュウメインっぽいいインチキ話ですなぁ(苦笑) 殴り書きなあとがきですが。では! 2002年6月30日 ふぉうりん |
151 | Reply | その日に彼は何を思う… | 空理空論 | URL | 2002/06/30 23:41 | |
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最初の方のキリュウとシャオのやりとり、 なんか無茶苦茶日常会話、っていうか、日本人古人ってな会話っぽく聞こえますが・・・(笑) まあ彼女らは彼女らでそうやって楽しんでるのでしょうってことで(なんのこっちゃ) ただ、一つ気になったことが・・・。 それは、“ばかばかしい”というキリュウさんの台詞ですね。 非常に違和感を感じてしまいました。いわば、物事に対して かなりの否定の意をとってるわけですから。(あと、下に見ている意もあると思う) それはそれとして、後書きにも書いてらっしゃいますが、私的にも、 最後のオチが非常によかったと思います。コンパクトも絡めてる辺りとか。 |
152 | Reply | 言われて見れば・・・ | ふぉうりん | URL | 2002/07/02 04:22 | |
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なんだか製作秘話(?)がたくさん入ってますが(苦笑) > 最初の方のキリュウとシャオのやりとり、 > なんか無茶苦茶日常会話、っていうか、日本人古人ってな会話っぽく聞こえますが・・・(笑) > まあ彼女らは彼女らでそうやって楽しんでるのでしょうってことで(なんのこっちゃ) 本編よりも雑談が弾むのは何故でしょう?(苦笑) > ただ、一つ気になったことが・・・。 > それは、“ばかばかしい”というキリュウさんの台詞ですね。 > 非常に違和感を感じてしまいました。いわば、物事に対して > かなりの否定の意をとってるわけですから。(あと、下に見ている意もあると思う) 言われてみれば、そうかもしれません。 今回のキリュウさんは、この一言でなんだか感じ悪くなるなぁ・・・ 書いた当初は、それほどきにしてはいませんでしたが。(今は言われて気にするひと) てなわけで、借家版に修正が入ってたりします。 > それはそれとして、後書きにも書いてらっしゃいますが、私的にも、 > 最後のオチが非常によかったと思います。コンパクトも絡めてる辺りとか。 オチは偶然浮かびました。初期プロットだと全然違う終わり方の予定だったんですよ。 コンパクトは、ルーアンがおいしいところを持って行く我が家の恒例行事なもので(笑) |
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